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19.何時か痛い目見る

「ソルイール帝国は、帝都にある地下の実験施設で人体実験を行っていたんだ。おぞましい事をして、そして世界の平和を脅かす様な事をしでかしていたんだ」

「人体実験……」

 第二次世界大戦中のナチスドイツじゃあるまいしと思いたかったが、ここは地球とは違う世界だし文明も重火器が実用化されている以外は、今までのアルジェントの目で見た限りで言えば中世レベルだと認識している。

 もしかしたら武器とか移動手段が中世レベルなだけで医療テクノロジーが物凄い進化しているのかも知れないし、一概に全てが中世レベルだと言う事は出来ないのが何だかもどかしい様な気がしている。

(だったら人体実験が普通に行われていたって別に驚く事でも無いのかな)


 しかし、そこでアルジェントは自分の考え方が違う事に気が付いた。

「あーいや違う違う、そうじゃねえよ!」

「……何がだ?」

「え、あ、いや何でもねぇ。それよりも早く話の続きを頼むぜ」

「……分かった」

 思わず心の中の声が漏れてしまったので迂闊だったと反省する一方、思いがけない事をしてしまった事に気恥ずかしさを感じてしまう。

(人体実験の話題になった時、こいつはその人体実験に対して何だか憎しみを持っている感じだったな。だったらやっぱ、この世界でも人体実験はイレギュラーって事になるだろーな)


 気恥ずかしさと一緒にもどかしい気持ちも抱え込んでいるアルジェントに、ラニサヴは気を取り直して話の続きを始めた。

「その人体実験を行っている事を、どうやったかまでは知らないがその魔力を持たない人間が暴いたらしい。そんな人体実験の事はなるべく国外に持ち出したくないソルイール帝国の面々は、当然その事を知ってしまった魔力を持たない人間を抹殺しようとする。ここまでは良いな?」

「ああ、OKだ。俺だってもし帝国側だったらそう考えるさ。で、それからどうなったんだよ? と言うか、個人レベルでそんなに簡単に一国の秘密なんて暴けるもんなのかなー?」

「だから噂程度でしか知らんと言ってるだろう。まぁ良い、続けるぞ。その人体実験の秘密を知られてしまったソルイール帝国は、騎士団長とその帝国の英雄……2人は英雄と騎士団長と言うだけあってお互いに仲が良かったらしいが、その2人をリーダーとして腕の立つ人員を大勢選抜して魔力が無い人間の抹殺に向かったらしい。だが……」

「え、まさか……」


 言葉を濁してその先を言いづらくなってしまった様なラニサヴを急かすかの様に、アルジェントは自分が今の話を聞いていて思った事の確認と言う意味でリアクションをし、ラニサヴに話の続きをして貰う様に仕向けてみる。

 そう仕向けた事により、アルジェントの予想が当たってしまう事になった。

「貴様も多分既に分かっているんだろうとは思うし、俺が最初に話したから予想を付けるのは難しい事では無かったな。その騎士団長とソルイール帝国の英雄は、その男の手にかかって殺された可能性が非常に高いんだ」

「……って事は、それって確定した訳じゃ無いのか?」


 可能性が高いと言う事だけでは、その魔力を持たない人間が2人を殺害したと言う証拠にはならない訳である。

「そうだ。分かるのはその2人が殺されたってだけでどうやって殺されたかまでは俺も知らないし、その騎士団長とソルイール帝国の英雄が何らかの理由で仲違いをして殺し合った可能性も考えられるからな。その辺りの情報が表になかなか出て来ない以上、俺としても言えるのはこれ位としか」

「いいや、かなりタメになる情報だったぜ。しかし人体実験か……そう言うのは何処の世界にもあるもんなのかねぇ?」


 そのアルジェントのボヤキにラニサヴが反応する。

「そっちの世界にも人体実験があるのか?」

「あー、それなんだけど昔の話だな。俺の国からそう遠く離れていない国で人体実験してて、世界中でそりゃー非難を浴びたもんさ。奴等のやってた事は人間を人間とも思わねー様な残酷なものばっかで、いわゆる人種差別から来てた様なもんでな。人体実験を行ってた奴等の中にはその実験のおかげで昇進したって奴も居たって話だぜ」


 ラニサヴは真剣な目つきで、アルジェントの話すナチスドイツの話に聞き入ってから質問する。

「そうか。そちらの世界でも……か。世界中からそう思われていたとなれば、その人体実験をしていた者達はどうなったのだ?」

「そりゃあ勿論壊滅だよ。人として許されて良いもんじゃねーからな。ってか、そのソルイール帝国の話と似た様なもんだよ。やってたのは当時その国を支配していたって言う軍人連中だったからな」

「そうか。なら確かに似ているな」

 ナチスドイツもソルイール帝国の騎士団も、生きている世界が違うだけでそれぞれやっている事は同じなのだと、この時アルジェントもラニサヴも認識した。

「関わった軍の関係者は真っ先に処刑されたし、もうその軍隊は無くなったけど今でも恨んでる子孫は大勢居るだろうからよ。やっぱり悪い事してると、そうやって何時か痛い目見るってこった」

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