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17.招かれざる客?

 が、ラニサヴにはラニサヴでしっかり考えがあるらしい。

「いいや、それは出来ん。貴様も一緒に発掘作業を手伝って貰うぞ」

「はあ!?」

 何で俺が発掘作業を手伝わなければならないんだよ、と反発するアルジェントに対して、ラニサヴは真顔でこんな事を言い出した。

「世界は違えど貴様も軍人だと聞いている。見た所体力も有り余っていそうだからな。それにタダでこちらも衣食住を提供出来る程に財政に余裕がある訳でも無いのでな。それに俺が見張っていなければ何時逃げ出されるか分からないし、貴様の護送責任者は騎士団長の俺が全て大公から連絡を受けた上で任されている。だから尚更の事、貴様にもしもの事があれば私が責任を負う形になるのだぞ」


 だけどアルジェントはいまいち納得出来ない。

「何か、途中で矛盾してる様な……」

「何が矛盾なのだ?」

「えーだってさ、俺にもしもの事があるといけないから一緒に行くんだよな。だけど発掘作業を手伝って貰うって事は洞窟の中に入ったりする訳だろうから、もし洞窟で崩落とか起きたらそれこそ「もしもの事」じゃねえのか?」

 そのアルジェントの質問にラニサヴは真顔のままで答える。

「誰が貴様を洞窟に入れると言った。少しは考えてみろ。俺だってそんな危険な事はさせない。雑用係として色々と手伝って貰うぞと言う意味だ」


 相変わらずの傲慢そうな口調だが、ここもスルーしておかなければこじれるだけだと思ってアルジェントは我慢する。

 いや、この騎士団長の性格はもうこんなものなのだろうと諦めたと言う方が正しいかも知れない。

「ああそう言う意味か。じゃあ俺は洞窟には入らないって事だな」

「だからそう言ってるだろう。分かったならさっさと出発したいから、部屋に戻って忘れ物が無いかどうか確認して来い。俺は外の正門前で待っているぞ。早くしろよ」

 それだけ言い残してスタスタと会議室を出て行ってしまったラニサヴに、アルジェントは無意識の内にため息を吐いていた。

「何だい、俺は招かれざる客かよ?」

 2人以外に誰も居なかった会議室で、1人ぼっちになってしまったアルジェントのその呟きは当然ラニサヴには聞こえる筈も無かった。

 あんな性格だけど騎士団長になれるだけの実力はあるんだよな……とますますアルジェントはその理不尽さにまたため息をついてしまう。

「あーダメだダメだ、何か俺ネガティブになって来てんな。今は準備しよっと……」


 実際、軍の中でもみんなが和気あいあいと言う訳にはいかない。アルジェントにだって合わない人間は世の中に絶対に居る。だけどそんな人間とも折り合いをつけて一緒に行動しなければならない時がある。

 だけど個人的な感情をぶちまけても良いのであれば、アルジェントにとってのラニサヴは「人間的に敬遠したい」相手である事に間違い無かった。

(幾らまだ知り合って全然時間が経っていない相手だとは言え、露骨にああして偉そうな態度を取られると言うのは何だか間違ってる気がするぜ)

 軍の上下関係でも無いのによ……と不信感をラニサヴにアルジェントは抱きつつも、今はそれでも頼れる人間があのラニサヴしか居ないのも事実。

 俺はもう30代も中盤に差し掛かった年齢の男なんだし、ここはグッと我慢して……と頭をブルブル横に振ってからアルジェントも会議室を出るのだった。


「遅いぞ」

「わりーわりー、道に迷っちまってよ」

「何処をどうしたら迷うのだ。さぁ、さっさと行くぞ」

 会議室を出てから自分の部屋までの道のりが分からなくなり、その部屋で忘れ物のチェックをしてから正門まで辿り着くまでまた時間がかかってしまってそれがラニサヴをイライラさせていた。

 もうこうなったら開き直るか、とアルジェントはへらへらしながら謝罪。

 そんなアルジェントを見ながら、詰め所の内部はそこまで広くない筈なのに迷う方が珍しいなと思うラニサヴも出発を促す。


 だが、アルジェントには気になる事があった。

「そう言えばさ、これからその洞窟に発掘作業に行くにしては人員が少なくないか?」

 ラニサヴの周りには、その発掘作業要員としてこの詰め所から5人の騎士団員が付き添っていた。

 そのアルジェントの質問に対し、ラニサヴはこれからの予定を説明する。

「その洞窟の近くに町がある。詰め所から昨日鷹を飛ばして、その町に配属されいる騎士団の部隊に声をかけておいた。何人かが発掘作業に来てくれるとの話だからな。心配は要らん」

「あ、そうなの。だったら問題ねーか」


 ラニサヴの回答にアルジェントは安心したが、次なる問題はその洞窟までかかる時間と移動手段だ。

「で、ここからその洞窟までどれ位かかるんだ? それから歩いて行くのか?」

「馬を使う。森の中にある洞窟だからワイバーンでの着陸は無理だ。貴様は馬に乗った事はあるのか?」

「俺は乗馬の経験はまるで無いぜ」

 それを聞き、ラニサヴはうーんと腕を組んで考え込む。

「そうか。なら……あの手段しか無さそうだな」

 ラニサヴの考えた移動方法とは……。

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