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57.かなりきついバトル

 この展開はアイベルクにとっては2度目であるが、予想外の状況であった為に若干パニック状態だ。

 確かにセバクターと武器を持っている相手に素手で立ち向かう手合わせをしたのだが、複数人相手のトレーニングは地球で王国軍に所属している時位にしかやらない。

 それに今の地球のご時勢では情報テクノロジーの発達に伴い、素手での白兵戦を見る方が珍しいとも言える。

 銃火器が当たり前になった今の戦場では、素手で敵に立ち向かうのは奇襲や暗殺の時位のものだろうから。

 だけどこの世界では銃火器も実用化されているとは言え、目の前の3人の様に槍だったり斧だったりと言う様な必然的に接近戦になる武器がまだまだ主流である。

 そして武器を持っているのも当たり前の世界で、イレギュラーな存在のアイベルクは素手で勝負するしか無い。

 当然逃げる事なんて出来ないのでこうなれば軍人として、そして格闘家としてのトレーニングを積んで来た自分を信じて全力で立ち向かうだけである。


 短剣使いの狼の獣人エドワルドと、槍使いのライオンの獣人クロヴィスがメイベルと3人で襲いかかって来る。

 豪雨の中でなかなか動き難い状況ではあるものの、3人が武器を振るスピードはエドワルドの短剣を除いて余り速くないのが救いだった。

「うおりゃあっ!!」

 ブンっと音を立てて振られたクロヴィスの槍を屈んで回避し、続けて向かって来るメイベルの斧を大きく横にずれて回避しながら、回避した方向に居るエドワルドの胸目掛けて回し蹴りをヒットさせる。

 その横からは再び槍を構えたクロヴィスが向かって来るのが見えたので、突き出される槍を再び横に避けて回避してからクロヴィスの顔面に全力のストレートパンチ。

「がへっっ!?」

 吹っ飛んだクロヴィスを気にする余裕はアイベルクには全く無い。

 メイベルが斧を振り被って向かって来たので、その斧が振られたと同時にアイベルクは斜め前に転がって上手く斧の下をくぐって避ける。

 くぐって前方に転がって素早く立ち上がり、メイベルの身体に抱きついてから勢いをつけてエドワルドの方に突き飛ばした。

 短剣を振り被って向かって来ていたエドワルドは、自分の所属している盗賊団の尊敬する姉御が自分の方に突き飛ばされて来た事で状況が把握しきれずそのまま激突してしまった。

 それを見つつ、アイベルクは間髪入れずに身体を捻って右の回し蹴りをその激突した2人の顔面にしっかりと追い打ちで叩き込んだ。


 クロヴィスの様子は見えないのでとにかく動き続けるしか無いアイベルクは、蹴ったそのままの動きで反対方向に向き直る。

「うがあああっっ!!」

 クロヴィスが雄叫びを上げながら自分に向かって槍を突き出して来るのが見えたが、避ける暇は無いと判断してフックパンチで槍を弾く。

「ぬっ!?」

 弾いた槍に身体を持って行かれそうになったクロヴィスのその隙を突いて、弾いたフックの勢いで身体を回してそのままクロヴィスの側頭部にハイキック。

 槍で突っ込んで来た事により、自然とアイベルクとクロヴィスの距離が縮まった事でハイキックも上手く当たってくれたのだ。


 そのハイキックを食らったクロヴィスに更に回し蹴りを食らわせて怯ませ、彼の立派なたてがみを掴んで思いっ切り引っ張る。

 そしてさっきのメイベルと同じ様に、そのメイベルとエドワルドが居る方向へクロヴィスを突き飛ばした。

「うおっと!」

「くっ……」

 自分達の方に突き飛ばされて来たエドワルドを2人掛かりで受け止め、体勢を立て直して異世界からやって来た軍人を睨みながら武器を構え直した。

「へぇ、なかなかやる様になったじゃない?」

「油断は出来ないですよ姉御。今回のこいつは俺達の戦い方を分かってるだけ厄介になってます」

「迂闊に近づけねーなこりゃあ……だけどやるっきゃねーだろ!!」


 数ではこちらが勝っているので有利とばかりに、言葉とは裏腹にまだまだ余裕がありそうなメイベル盗賊団の3人に対して、アイベルクにとってはかなりきついバトルである。

 雨で礼服が重くなっているのに加えて、武器を持った3人を同時に相手にしなければならないシチュエーション。

 そして何よりも自分が相手の武器を奪い取って戦う事が出来ないのが、アイベルクにこのバトルを更にきついものにさせている理由だった。

(武器が無いときつい!!)

 メイベルを見かけてそのまま追いかけた時の自分を呪いたい。

 それこそ迂闊に追いかけるのでは無く、この城の騎士団員を呼んで捜索させれば良かったのだ。

 とは言っても既に結果論でしか無い為、アイベルクは自分が不利な状況なのに変わらなかった。


(どうすれば良い……どうすれば!!)

 チラリと目線を自分の斜め後ろにある出入り口のドアに向け、アイベルクが3人の様子を見て駆け出した……時だった。

 そのドアがアイベルクの目の前で突如開き、激突する寸前で何とか踏み止まった彼の目の前に1つの人影が。

「全く……貴様はこんな所に居たのか」

 聞き覚えのあるその声にピンク色の髪の毛、胸にぶら下げた勲章は間違い無くこのエスヴァリーク帝国騎士団長のセバクターだった。

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