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54.派手にやってあげましょう

(騎士団の連中みたいに身体ばっかり鍛えてる様な連中が私をはめようなんて、まだまだ10年は早いのよ)

 大空に相棒のワイバーンと一緒に飛び立ったメイベルは、自分の目的を達成する為にある場所へと向かう。

 そんな彼女が発信機に気が付いたのは着替えの時だった。

 ワイバーンであの山奥のアジトとはまた別のアジトに向かっていたメイベルだったが、その途中で通り雨に遭遇したのが逆にこの結果を呼び寄せてくれたとも言える。

 あのアジトだって元々は取り壊す予定の廃墟を部下の獣人に安く買い取って貰い、世界中に散らばっている自分の他のアジトと同じ様に緊急退避用の場所として使っていただけなのだ。

 通り雨に遭遇した事でとりあえず服だけでも着替えようとあのアジトに向かったのだが、そのアジトで自分のお気に入りである紫のコートを脱いだ瞬間に違和感に気が付いた。


「……あら? 何かしらこれ……」

 ポケットの中にコツン、と何かが当たる感触を覚えたメイベルがそれを取り出してみると、それは見覚えの無い小さな赤い宝石……の様な魔石の一種だった。

 自分はこんな物をポケットに入れた覚えは無い。

 だったら何処でどうやってこんな物が入り込んだのだろうかと記憶を探ってみると、あの洞窟の前でワイバーンに乗り込む前に金髪の騎士団員と自分がバトルした時が、この見覚えの無い物が入り込んだ時だと1番しっくり来た。

(まさか、あの時に……?)

 自分の斧の攻撃をかいくぐった金髪の男にタックルされるも、完全に押し倒され切る前に何とかギリギリで抜け出してから斧の柄の部分で男の身体を突きまくって彼が怯んだ隙に脱出したのだが、考えられるのはその時とっさにあの男が入れていたと言う事だ。


 こんな物が自然にコートのポケットに入る訳が無い。

 ならば何かの目的があってわざと入れたとしか考えられない。

(見た所爆発物の類では無さそうだけど、気になるわね……)

 一体何の目的で自分のコートにあの男はこんな物を入れたのだろうか?

 騎士団と言えば国の治安を守る事が仕事だ。

 特に自分の様に爆発事件を起こしている人間はどうしても捕まえたい筈だと考えて、そこからこの物体が何なのかを予想すると答えは自然と浮かび上がって来た。

(まさかこれ……私の位置を知る事が出来るんじゃ!?)

 部下の獣人や人間達は世界中に散らばっているのだが、その部下達から気になる情報をメイベルは聞いた事があった。

(近年、各国の騎士団や警備隊だけにしか知られていない……それを持っている生物の位置を知る事が出来る技術が開発されたって。それがもしこれだとしたら……)


 それならこんな物をわざわざ自分のコートのポケットにあの男が入れたのも納得が行くし、あの男が騎士団員だと言うのも納得出来るだけの説得力があった。

 ならばどうする? とメイベルはしばし考え、思いついたのが自分の位置を逆に利用する事だった。

(へーえ、良い度胸してるわね。だったらこっちもそれなりの対応をしてあげるわよ)

 どうせこの建物は取り壊す予定だった場所なんだし、他のアジトだって世界中に沢山あるし、部下だってかなりの数が世界中にまだ居るしもし居なくなってもまた募集すれば良いだけの話だと考えたメイベルは着替えを済ませて、自分の行方を捜しているであろう帝国騎士団を逆に追い込む為にさっそく行動し始めた。

(そうねぇ……大人数で来るかも知れないから、派手にやってあげましょっか)

 これから帝国騎士団をどうやって追い込むかを考えると自然と笑顔になっていたメイベルのその罠に、まんまとクローディルやシーディト達がはまってしまったのだった。


 その罠にはまってしまった騎士団員達は、どうにか危機一髪で爆発から逃れる事には成功していた。

「ぐぅ……おいみんな、大丈夫か!?」

「は、はい……」

「ぐっ、あ……いってえな……」

 2階から決死のジャンプをした為に満足に受け身も取れないままで着地してしまった6人は、骨折とまでは行かないまでもすぐには動けそうに無いレベルの怪我を負っていた。

 だが、その怪我を負っている事よりも気にしなければならない事があるのもまた6人全員共通である。

「まさかあの女は、俺達がここに来るのを知っていたって事か……?」


 ルディスがそう呟けば、同じ考えを持っていたカヴィルドが同意の声を上げた。

「恐らくな。となればむやみにあの女を追いかけるのは危険だろう」

 またこうして返り討ちに遭う可能性があるし、そもそも行方だってこれで分からなくなってしまったのでメイベルが何処に行ったのかも不明だ。

「しかし……自分の部下の命すら何とも思って無いのか?」

 ここに踏み込んだ時に遭遇したメイベルの部下は、この爆発の事なんて何も知らない素振りで普通に襲い掛かって来た。

 多少の部下を犠牲にするのはメイベルには当たり前の事らしい、とニーヴァスが自分のその考えを口走りつつ、今は目の前で燃え盛る建物を見上げる事しか出来なかった。

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