表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

353/625

46.特殊能力?

 洞窟でのバトルも終了し、クローディルのコントロールするワイバーンで城にやっと戻る事が出来たアイベルクは、そこで今までの出来事をもう1度セバクターを始めとした帝国騎士団員達に話す事になった。

「嘘だって?」

「確かにあの女はそう言っていた。爆弾が仕掛けられている場所は嘘を混ぜて話したとな。だからあの女の証言は何処まで本当なのか疑った方が良いだろう」

 取り調べ室のテーブルを挟んで向かい側に座っているセバクターにそう証言するアイベルクだが、それを聞いてセバクターは考え込む素振りを見せる。

「……なら、アジトの話も違う可能性が……」

「アジト?」

「あのメイベルの部下……貴様の部屋で倒れていた、恐らく貴様と戦ったであろう鳥人の男がアジトの場所を吐いたんだが、その証言も何処まで本当なのか疑ってかかった方が良いかも知れないな」

「鳥人……ああ、私の部屋にいきなり突っ込んで来たあの……」

 セバクターの話で、アイベルクは自分があの部屋から城の廊下に出なければならなくなった事を思い出した。


 それと同時にまだ思い出した事があったので、それもセバクターに伝えておく事にする。

「あの鳥人、私を殺す気は無かったらしい」

「え?」

「メイベルが言ってたんだが、私にはどうやら特殊な能力があるらしい。私もそれが何かは分からんが、城を襲撃したのはメイベルを助け出す為と私を拉致して利用する為の2つの意味があったらしい」

「特殊能力……?」

 少しだけだが、その自分の証言に対してセバクターの顔に呆れの表情が浮かんだのをアイベルクは見逃さなかった。

「一体何が特殊能力なんだか……」

 ポツリと呟いたセバクターの耳に、バタバタと慌ただしい足音が聞こえて来たのはその時だった。

「セバクター、爆弾の被害が出た!!」

「何!?」


 部屋に飛び込んで来たのは金髪の特殊部隊総隊長クローディル。メイベルの部下である獣人のエドワルドとクロヴィスの尋問をしていたのだが、その最中に部下の騎士団員達から同じ報告を受けてセバクターの元に走ってやって来たのだ。

「被害は何処だ!? それから規模は!?」

「南のコーフォニアと東のスルヴィアだ! 宿屋が爆破されて、30人以上の犠牲者が出た!! それからスルヴィアでは教会が爆破されて、団体巡礼で訪れていた40人とシスター、それから神父の全員が死亡との報告が……」

「くっ……!」

 クローディルの最悪な結果報告を聞いていたアイベルクが唖然とした顔で、しかし冷静な口調で自分の考えを呟いてみる。

「あの女の仕業かも知れんな……。その爆弾の設置場所の証言に嘘を混ぜたと言っていたが、実際のその時の証言から得られた爆弾の設置場所とはまた違う場所に設置されていたのか?」


 それに答えたのはセバクターだった。

「ああ。10か所の爆弾の設置場所をあの女が証言した。だがその爆破事件が起こった町はどちらもその時の証言には含まれていない……」

「くそっ……あのアマ、魔石を盗み出すだけじゃ飽き足らずここまでしやがって!!」

 思わず床を蹴りつけるクローディルだが、そんなクローディルをアイベルクがたしなめる。

「床に当たり散らしている暇は無い。隊長、あの女の居場所は分かるんだろう?」

「あ、ああ!」

「だったら今すぐ……今すぐだ!! あのメイベルを追いかけて、他に爆弾を設置した場所を何としてでも吐かせるんだ。このままだとまた爆発事件が起こって犠牲者がより多くなる可能性がある!!」

「分かった!!」


 しかし、そんなクローディルの報告をあざ笑うかの様にまた新たな報告が騎士団とアイベルクにもたらされる。

 再び慌ただしい足音が部屋に居る3人に聞こえて来たかと思うと、丁度部屋を出ようとしていたクローディルの顔面にガツンとドアをぶつける形で1人の騎士団員が飛び込んで来た。

「ぐへっ!?」

 思わず尻もちをついてしまったクローディルだが、飛び込んで来た騎士団員の表情はそんな事に構っていられる状況では無い程に余裕が無かった。

「だ、団長っ!! 大変ですっ!!」

「どうした?」

「あの盗賊団のアジトに向かった我が騎士団の分隊が、爆弾で全員死亡したそうです!!」

「なっ……」

 唖然を通り越して絶句する取り調べ室内の3人。


 立て続けに犠牲者の報告がセバクターの元にやって来る。

 犠牲者の報告は騎士団長に着任してから5年間の間に何回も受けて来たので慣れたものだと自分では思っていたが、これ程までの犠牲者の数をカウントした事件が複数同時にやって来た事でセバクターも内心でパニック状態になっていた。

「くそっ……どうすれば良い、どうすれば……」

 顔に両手を当ててブツブツと呟くセバクターに対し、アイベルクが声をかけてアイディアを出してみる。

「落ち着け! 犠牲が沢山出ているから頭が回らない気持ちも分かる。だけど今やれる事もある筈だ」

「やれる事とは?」

 半ば自暴自棄の状態で、エスヴァリーク帝国騎士団長は異世界の陸軍名ばかり大佐にそう尋ねた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ