表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

342/625

35.ただで済むと思ってます

 鳥人の身体が冷たい地面に転がった。

「ぐぉ!? て、てめぇ等こんな事しやがってただで済むと……」

「思ってるがそれがどうした?」

 薄暗くて冷たい地下の監獄で5人の男達に壁際に追い詰められた鳥人がそう聞いたものの、その男達の内の1人がそう言った。

「お、おい止めろセバクター!! 幾ら何でもこんな事……」

「何も喋ろうとしないこいつが悪い。だったら喋りたい様にするまでだろう」

 必死に彼を止めにかかるカヴィルドに対してセバクターは冷静に、しかし怒気の篭った口調でそう言った。

「お、おおおお願いだ頼むよ……殺さないでくれぇ!」

「だったら喋れ!!」


 セバクターのミドルキックが的確に鳥人の腹を捉え、起き上がったばかりの鳥人は後ろに吹っ飛んで壁に叩きつけられてから地面に転がった。

「ぐへぇ!」

「おら、起きろっつってんだよ!!」

 転がった鳥人の両腕をシーディトとルディスが掴んで無理やり立たせ、更にその2人が腹に強烈なパンチを両側から1発ずつ浴びせる。

「ぐへ、おがぁ!!」

「もう1発!」

 追い打ちでライウンが手に持ったライフルの柄の部分で鳥人の胸をど突き、ゲホゲホと苦しそうにもだえ苦しむ鳥人を見下ろした。


 それを見て慌ててカヴィルドがシーディトとルディスを止める。

「ちょちょちょ待て待て! このままだとこの獣人、死んでしまうぞ!! このままだとこっちの立場が悪くなるし、セバクターも殺人犯になる!!」

 だがそれをセバクターの冷たい声がさえぎった。

「構わん。連行する際に暴れ出したから、制圧の為にこちらが対処した結果死んでしまった事にすれば良い!!」

「待て待て!! ほら、こう言ってるんだし将軍は容赦しない男だからな。さっさとあんたも吐いてしまった方が身の為だぞ!!」


 カヴィルドが鳥人にそう忠告したが、その忠告された側である鳥人の男はすっかり怯えた表情で震えている。

「たたたた頼む! 何でも話すし、俺の分かる範囲の話だったら全てぶちまけるから殺さないでくれ……」

「だから早く言えよ、早く!!」

 ライウンに今度はライフルでみぞおちをど突かれ、鳥人は再度悶え苦しむ。

「御前達がこの城を襲った目的は何だ? それと貴様と戦ったであろうあの男は何処へ行った? それから御前達の盗賊団の規模、アジトの数、その他洗いざらい全て話して貰う!!」


 言えば助けてやると殺気を隠そうとしないセバクターの剣幕に、再度引きずり起こされた鳥人の男は震える声と身体で呟いた。

「た、助けて……何でも言うから……何でも……」

 それを聞いてセバクターがカヴィルドの方に振り返る。

「この男の言ってる事が嘘だったとしたら?」

「その時は本当に殺してしまっても良いだろう。だから今はまだ殺すなよ」

「ほら、自分の立場が分かったらさっさと質問に答えろ!!」

 急かすかの様にシーディトが鳥人の脇腹に左のパンチを浴びせ、やっとの事でポツリポツリと鳥人が話し始める。

「お、俺達がこの城を襲ったのは……メイベル団長を助け出す為だ」

「やはりか……」


 襲撃して来た大勢のメンバーで、自分が見た限りでもその半分位が獣人であった事からあの時馬車を襲って来た盗賊団と似た様な構成のメンバーであった。

 だからこの襲って来た連中と言うのはもしかしたら……と考えていたセバクターの予想はどうやら当たった様である。

「何故助け出す為にわざわざここまでやって来たんだ? 城を襲撃すると言う事は余りにもリスクの高い行為になるが、そうまでして助け出したいと言う事は何かそれだけ重要な目的があってこそなのだろう?」


 セバクターがそう聞くと、男はこれも素直に吐く。

「団長はこの世界中で色々と武勇伝を持っている人だからな。でも、このエスヴァリーク帝国ではまだ全然活動し始めたばかりで、そんな時に団長を俺達が失ったら活動に支障が出ちまう。だから団長を取り戻したかったんだ」

 その回答に対して口を開いたのはシーディトだった。

「……弱いな」

「え?」


 ポツリとそう呟いたシーディトに鳥人が視線を向ける。

「弱いって……どう言う事だ、俺は……」

「その程度の理由だけじゃあ城を襲ってまであの女を逃がそうとする理由としちゃあ弱すぎる。団長って言うのは確かに団を引っ張る存在だが、その団長が何時居なくなるかって言うのも分からねえ。何でもかんでも団長任せにしていたんなら、あれだけの大規模な襲撃を上手い具合にかけられるとは俺は思わないな。確かに団長が居なくなったらそれはそれで問題なんだが、それ以外にも御前達にはあの団長を「必要としている」だけの理由があったって事だろうが……違うか?」

 言い切ると同時に右のパンチを鳥人の右脇腹に浴びせれば、苦痛に耐える表情をした後にあっさり吐いた。

「う、わ……分かった! メイベル団長しか知らないって言うか、打ち合わせがまだ済んで無かったんだよ、俺達は!!」

「打ち合わせ?」

 その打ち合わせとは一体何の話なのだろうか?

 まだまだ叩けばゴッソリとホコリが出て来そうなので、帝国騎士団員達の尋問は一向に終わらない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ