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34.クイズ形式が好き

 分かるかしら? とクイズ形式で質問されたって、アイベルクはファンタジーのジャンルにはさっぱり疎い人間なので難しい問題である。

 しかし、今の話をしっかりと聞いていた事である程度の予想はつける事が出来た。

「魔力がどうのこうのと言うのが、その男には関係無かったんじゃないのか?」

「やっぱり貴方もそう思うわよね? そこは最上級の魔術師が長い時間をかけて作り上げた封印が施されていた場所だったから、魔法に縁が無い人間は絶対にその扉を開く事が出来ない筈なのよね。それと物理的な攻撃も無効になる様にしていたから、幾ら扉を叩こうが蹴ろうが燃やそうが、封印を解かない限りは傷1つも付けられない筈だったってその戦いに参加した私の部下は帝国騎士団の人間から聞いていたんだけど……ここまで話せば私達が貴方にお願いしたい事、もう大体分かるでしょ?」


 その聞き方が本当に好きなんだなと思わざるを得ないままで、アイベルクは自分の脳をフル回転させて考えを導き出した。

「私にも同じ事をしろと言うのか? 魔力が無い事を利用して、何処かのその魔術のどうのこうのって言うのが施されている場所に行かせるつもりか?」

「そうよ。流石にここまで説明すれば分かるわね。今から私達と色々な場所に行って、封印が掛かってて入れない場所で貴方が入れるかどうかを試して貰うのよ。命の保証は勿論、食事だって寝る場所だって与えるし悪い様にはしないわ」

「……その保証はあるのか?」

 怪訝そうにアイベルクが聞いてみれば、メイベルは鼻で笑って答える。

「保証? それは貴方の態度次第ね。さっきみたいな態度を取るのであればどうなるか分かってると思うけど、自分の身の振り方には気を付けた方が良いわよ? ああそれと、私達と一緒に行く事に貴方に拒否権は無いから、それも伝えておかなきゃね。最悪の場合は手足を斬り落としてでも連れて行くつもりだしっ!」


 セリフを言い切ると同時に振り下ろされたメイベルの斧が、アイベルクのすぐ横をかすめて地面にドスンと突き刺さった。

 身動きが取れない状況でこうして間近に武器を振り下ろされれば、流石のアイベルクでも冷や汗が流れ落ちない訳は無かった。

「それじゃあ最初の場所に向かうわよ。大勢で行動すると目立つから何人かに部隊を分けて、時間をおいてから地上から向かう部隊と空から向かう部隊でそれぞれの方面に向かって。私はこの男を連れてまずは西の方角に向かうわよ」

 リーダーのその号令で、一斉にメイベル盗賊団のメンバーが動き出した。

 アイベルクは後ろ手に巻かれていたロープが若干緩んでいたのをメイベルの部下に発見され、更にきつく縛り直されてからメイベルのワイバーンで最初の場所に向かう事になる。

 この状態では例え飛び降りる事が出来そうな状況であっても、ロープが邪魔をして受け身も取れないし川にでも落ちたら溺れてジ・エンドだからやっぱり成す術が無い。


 誰か軍の仲間でも居れば……と思っても、実際に今の自分は1人ぼっちの状態でこうなっているのだから何も出来ない。

(せめて……せめて誰か私があの城から居なくなった事に気が付いてくれれば……っ!!)

 今、あの城の状況はどうなっているのだろうか。まだ戦いは続いているのだろうか?

 セバクターやシーディト、カヴィルド達は無事なのだろうか。

 本来であれば自分自身の事を心配しなければならないのだろうが、あの騎士団の面々はこの世界で職無し、家無し、身寄り無しの三拍子揃った自分を城まで連れて行ってくれて衣食住の面倒を見てくれた存在であるからこそ、こうして今のアイベルクも心配しているのである。

 だとすれば、その現状を確かめる為にもこの先でどうにかしてこのメイベル盗賊団から逃げ出すしか無い。

 だが今の状況では相手の実力がまだ全然分かっていない。

(確か……メイベルと言う女の口から、ソルイール帝国と言う国でこの盗賊団のメンバーが傭兵として活動していたと言う情報を聞いたな)

 

 城の図書館でこの国の情報を集めていたアイベルクは、このエンヴィルーク・アンフェレイアの地理を必死に自分の記憶から辿り始めた。

(あの地図をさっきのメイベルのセリフから照らし合わせた位置だと……北の方だから、確か北の真ん中辺りにある国だった気がする。そしてこのエスヴァリーク帝国は地図の右下だから、結構距離が離れているな)

 この盗賊団のメンバーの行動範囲は、今の情報を断片的に組み合わせてみただけでもかなり広いのでは無いかと推測出来てしまった。

(もしそのソルイール帝国に傭兵として行っていた様なメンバーが他にもまだ居るのだとしたら、この世界全体に活動範囲を広げているだけで無くメンバーもかなりの大人数……と言う感じがするな)

 この予想以外にも、例えばこの盗賊団はメンバーが少ないので世界各国を回って盗賊団のメンバーを増やそうとしているのでは無いか……との予想も出来るし、既に世界各国に名をとどろかせている有名な盗賊団なのかも知れない。

 とにかく動くにはまだまだ早い。チャンスが来るまで焦らずじっくり待つしか無いだろうとアイベルクは我慢する事にした。

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