表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

338/625

31.騎士団の戦い

「うおああああっ!!」

 向かって来る獣人相手に、小脇に抱えたマシンガンで的確に狙いを定めて射殺するライウン。

 その傍ではルディスが弓を使って、空を飛び回る鳥人をこれまたしっかりと射止めていた。

「おい、余り弾薬の無駄遣いをするなよ」

「分かってるって。そっちこそ、矢を外して上の奴等を逃がすんじゃないよ!?」

 ルディスとライウンはお互いの背中をカバーし合う形で、城門から城の正面玄関へと続いている広場にて飛び道具を使って奮闘していた。

 騎士団員が全て剣や槍等の近接用の武器、それから魔術ばかりで戦う等と言う時代は既に終わった。

 これからは新型兵器を駆使して戦う時代が来ているのだ。


 それから獣人と言う種族は、人間と動物の交尾から生まれたいわばクオーターの存在である。

 人間と動物が交尾をする事自体がまだまだ少ないので、大国であるこのエスヴァリーク帝国でもなかなか見かける事の出来ない貴重な種族でもある。

 だがそんなレアな種族と言えども、城にいきなり襲撃をかけて来て騎士団員を殺したとなれば、殺された側の騎士団員の仲間達は反撃に転じなければならない。

 騎士団員はレアな種族である獣人を守る事もあるが、それ以上に自分達が仕えている皇帝を守る事を騎士団の入団の時に誓ったのだから。

 その誓いを守る為にも、今こうしてその騎士団員であるルディスとライウンは戦っている。

 かつて盗賊だった自分達を、こうして騎士団員と言う形で拾い上げてくれたセバクターにまだ礼は返せていないと感じながら。


 その一方でそのセバクターも城の中で奮戦していたのだが、別の場所で戦っていたシーディトとカヴィルドが彼の元にやって来た。

 かなり慌てている様子がその顔に浮かぶ疲労と息の荒さから見て取れる。

「せ、セバクター! 大変だ!!」

「何だ、どうかしたのか?」

「はぁ、はぁっ……やばいんだ。あいつが……あのメイベルって言う盗賊団のリーダーが入っている牢屋の見張りが殺されて、メイベルの姿が見えなくなっているんだっ!!」

「なっ……!?」

 そんな馬鹿な。

 リーダーの入っている牢屋には特に見張りを厳重に強いていた筈なのに。

「あの女を探したのか!?」

「一通り探したんだが、まだ獣人連中の襲撃が続いているんだ。もしかしたらこの襲撃って、あの女の……!!」


 シーディトの予想を最後まで聞くまでも無く、セバクターは確信してしまう。

「あの女をここから助け出す為に、数に物を言わせてこの城に襲撃して来たのだろう。あの爆弾騒ぎで帝都を含めた騎士団の数を帝国中に分散させ、その間にこの城を襲撃させてリーダーの身柄を助け出せば……」

「こっちはまんまとはめられたと言う訳か」

 カヴィルドも苦虫を噛み潰した表情で呟いた。

「とにかく、今はこの城の惨劇をこれ以上拡大させない様にするんだ。引き続き迎撃に当たれ!」

「「はっ!」」


 セバクターに敬礼をして、シーディトとカヴィルドがそれぞれ武器を携えて走って行った。

 その背中を見ながら、自分もさっさとこの襲撃を食い止めなければならないと思いつつロングソードを構えて歩き出す。

 だが、この時セバクターは重大な事が自分の頭から抜け落ちているのに気が付かなかった。

 あの女を牢屋からみすみす逃がしてしまったと聞いたショックが頭の大部分を占めていた事により、それも無理の無い事ではあったのだが。


 セバクターがそれに気がついたのは、それからおよそ30分後の事である。

「何とか終わったな」

「ああ。生き残っている奴は居ないのか?」

「残念だが今の所は居ないみたいだ」

 セバクターとシーディトとカヴィルドの3人が安堵の息を吐きながら、戦場となった城の敷地内の後片付けに精を出していた。

 城に襲撃をかけて来た獣人と人間達を全て駆逐した定刻騎士団員達。皇帝とその関係者も全員無事という報告があったが、城の宝物庫が荒らされてしまい財宝のおよそ3分の1が盗み出されていると言う報告が部下から寄せられていた。


 だがその時、カヴィルドがある事を思い出す。

「そう言えば、あの魔力を持っていない男はどうなった?」

「え?」

「あっ、そう言えばあいつは何処に行ったんだ? まだ部屋に居るのか?」

 ここでようやくセバクター達はアイベルクの事を思い出し、3人揃って彼の滞在している部屋へと向かった。

 そしてそこで見たのは、派手に窓ガラスが割られている状態の部屋であった。

「こ、これは……」

「待て、誰かが居るぞ!」


 部屋の片隅でうめきながら床に転がっている1人の鳥人を発見し、それぞれの武器に手をかけながら3人は歩み寄る。

「おい、貴様! 貴様は一体何者だ!?」

「うぐぅ……あ、鼻が曲がってる……まず治療してくれぇ……!!」

 情けない声を上げてそう懇願する鳥人に対して、セバクターは溜め息を吐くとアゴで部下の2人に指示を出す。

 それに従ってシーディトとカヴィルドが鳥人の頭と足を持って、2人掛かりで医務室へと運んで行く事にする。

 残されたセバクターはグルリと部屋の中を見渡し、アイベルクが居ない事に気がつくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ