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29.また獣人か!!

(くそっ、また獣人か!!)

 鳥の獣人だから鳥人とでも呼べば良いのだろうか?

 ともかくまだ1回しか手合わせをした事は無いとは言え、アイベルクにとってはこのタイプの獣人に対しては苦い思い出しか無いのである。

 だが、アイベルクの驚きはそれで終わりではなかった。

 その獣人……小型のワシ位の大きさの鳥人は何の迷いも無くアイベルクに向かって突進して来た。

 当然狙われるアイベルクも避けるが、ターンして狭い室内に羽根を撒き散らしながら再び向かって来る。

「くっ!」

 ゴロッと床を転がってローリングをし、起き上がりつつハイキックで獣人の身体を蹴り飛ばしてみるもののさほどダメージを与えられない様である。


 その後も自分に向かって突進を3回ほど繰り返して来た鳥人を見て、アイベルクはふと違和感を覚えた。

(あれ、この獣人は……)

 手には槍を持っているのだが、その槍はどうにも自分を狙うと言うよりかはけん制の為に使っているのでは……と思う位に急所を外して振り回されるのだ。

 だとしたらこの獣人は一体何が目的なのだろうか?


 いや、そんな事はどうだって良い。

今の自分は突然のこの侵入者が襲い掛かって来ている事態から何としてでも逃れるだけである。

(貴様の攻撃はワンパターンだ!)

 突進攻撃を回避し、先ほどは起き上がると同時にハイキックを食らわせたアイベルクだったが今度は違う。

 鳥の羽根が入ってしまって食べられなくなった料理のトレイから紅茶の入ったカップを手に取って、それをターンして次の行動に移るまでの鳥人の顔面にぶちまける。


「ぐひゅえ!?」

 妙な声を上げて床に落ちて動きを止めた鳥人の翼を掴み、全力で引っ張ってジャイアントスイングの要領で横の壁にその身体を叩きつける。

 予想よりも鳥人が重くなかった事も幸いしたが、その身体の大きさによって物凄い音を立てて鳥人が壁に叩きつけられた事実は変わらない。

 ゴロンと身体を力無く床に横たわらせる鳥人だが、まだ意識はあるのでアイベルクはその鳥人の顔を黒い革靴の底で何度も何度も踏みつける。

 ガツンガツンと容赦無く踏みまくり、最後にネリチャギでその顔面を潰してから意識が無くなったのを確認。

 頭部から流れ出た血が地面にシミを作っていくその光景をアイベルクは冷めた目で息を吐きながら見下ろしつつ、ここに居ても危険だと思い部屋の外へと出る事にした。


 廊下に出たアイベルクが見たのは壮絶な光景だった。

 騎士団員が殺されており、壁や床には血がべっとりついている惨劇が目に飛び込んで来たのを始めとして争う音が遠くからも聞こえて来る。

 やはり何者かの襲撃、それも自分が襲われた時と同じ時に色々な所で争いが起こっている事から複数犯の仕業であるとアイベルクはこの時断定した。

(それも獣人が居る……あいつ等の仲間の可能性は高い!!)

 もうほぼ間違い無いだろうと言う位の確信の気持ちを持って、とにかく状況を把握しない事には如何しようも無いと感じながらアイベルクは城の廊下を用心しながら進んで行く。

 特に曲がり角を曲がる時には細心の注意を払いながら、一旦壁に張り付いて先の様子をしっかりと把握してから進む。


 何処もかしこも騎士団員が殺されているが、たまには騎士団員が襲撃者を返り討ちにして殺害したのであろう場所もあったのでやられまくっている訳でも無さそうだとアイベルクは判断。

 だけどこの状況からすると、なかなかの実力を襲撃者達は有しているらしい。

(どれ位の襲撃者がこの城の中に居ると言うのだ?)

 幾ら警備が手薄になっていると言っても、城を守る為に組織されている騎士団の団員達がこんなに呆気無くやられてしまっても良いのだろうか、とやっぱりこの城のセキュリティに対してアイベルクは疑問を感じずにはいられなかった。


 そんな事を考えていても、この状況になってしまっている以上はもう手遅れである事に間違いは無いのだが。

 その手遅れな状況でこれ以上傷を広げられない様に騎士団員達が奮戦している中で、自分だけが逃げて良いものかと考えてしまうアイベルクだが、この世界の事もまだまだ分かっていない以上は無闇に戦いに首を突っ込める状況じゃ無いと思った。


 そもそもさっきの鳥人でさえ倒すのも一苦労だったのに、複数体で襲われた時には数の暴力と言う意味でやられてしまう可能性が非常に高い。

 だったら、なるべくエンカウントしない様にこの城から脱出した方が良いというのは明白だった。

(騎士団の人間よりも襲撃者達の方が強いとでも言うのか?)

 戦況がまだ分からない以上、憶測でしか物を言えない現状のままで城の廊下を進むアイベルクは階段を下りて下のフロアへと到着する。


 だがそこで、まさかの人物と鉢合わせしてしまった。

「……なっ、貴様!?」

「あ、あんたは!?」

 紫色の上着に長い茶髪を持ち、手にはスプーンの様な形の斧を携えてしかも部下らしき獣人まで率いているその女。

 まさしくそれは、自分を城に向かって護送しているあの時にいきなり襲撃をかけて来た女……メイベルに間違い無かった。

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