表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

330/625

23.本格的なトレーニングの為の場所

 その禁止事項を出されているアイベルクではあるものの、裏を返してみればこの城の中の立ち入り禁止となっている区画以外は自由に行動が出来ると言う事であった。

 その食堂で朝食を摂っている時に、偶然セバクターも朝食を食べに食堂にやって来たのだ。

 そしてその時に立ち入り禁止の区画を描いた城の内部の地図まで渡されている。

 事実上の軟禁状態とは言え、こんなにもホイホイと城の地図を渡して良いものなのかとアイベルクはこの帝国のセキュリティ意識に疑問を覚えつつにはいられなかった。

 でも、騎士団長自らがそうして地図を渡して来るのだから問題は無いのだろうとアイベルクは考えて素直にその地図を受け取っておく。

 赤のインクで塗り分けられている場所が立ち入り禁止のエリアなので、地図を良く見て現在の自分の位置を的確に把握しておく様に、とアイベルクはセバクターから釘を刺されていた。


 そんな状態のアイベルクは、本格的にトレーニングをさせて貰おうと思い立って最初に鍛錬場へとマップを見ながら、そして時々通りがかった城の関係者にも道を聞きながら向かっていた。

(次の角が左で、2個先の角を右か)

 道を尋ねた中の1人が口走った話によれば、広々とした敷地を持っている王城の中にそれこそ何千人、何万人規模の騎士団員が使用する鍛錬場が存在しているとの事であった。

 数多くの国を束ねている帝国として存在しているエスヴァリーク帝国では、当然それなりの軍事力が無ければ話にならない。

 例えば束ねている国の1つが、独立の為にエスヴァリーク帝国に戦争を仕掛ける様な事態になったとしたら?

 例えば帝国中に大規模な数の魔物の出現があったとして、それを討伐する為の人員が必要になったとしたら?


 そして今、それこそ帝国騎士団は団長であるセバクターを始めとして危機的状況に陥っている真っ最中でもある。

 爆弾騒ぎが帝国中で起こっている今の話は、どうやらセバクター達にとってもその時の会話と彼等のリアクションを思い出してみるだけで、こう言った大規模な事件が未知の経験であると言うのをアイベルクに伝えるには十分なものだった。

 だからこそ、それなりの人数を騎士団の人員として備えておいてもまだ右往左往している状況になっているのだろう……とそう言う事を考えつつ騎士団の鍛錬場に辿り着いたアイベルク。

(この鍛錬場の広さからすると、かなりの人数が収容出来そうだな)


 話に違わず、一目見ただけでも広大な敷地が確認出来る。

 これも道を尋ねた城の関係者から話を聞いていたのだが、騎士団の訓練施設はこの広大な敷地で数千人単位の鍛錬が馬を一緒に使っても可能な程に充実しており、エスヴァリーク帝国の騎士団員達もセバクターは勿論その全員が精鋭揃いだと言われている。

(地面は柔らかめの土で出来ているのか。だとすると、鍛錬の際に地面で怪我をする心配は少ないかな)

 今の時間帯には爆弾騒ぎの事もあるだろうが、余り鍛錬に励んでいる騎士団員の姿は見えなかった。

 でも先程アイベルクは朝食を摂ったばかりなので、食べてすぐの運動は体調に差し支えると即座に判断し、まずはこの城の構造を色々と見て回ってみようと鍛錬場を後にする。


 そのアイベルクの様子を2人の男が訝しげな目つきで見ていた。

「……誰? あれ……」

「さぁな。ただ、見慣れない格好をしていたから部外者の類である事は間違い無さそうなんだが、セバクター団長に話は通じているのか?」

「いるんじゃないの?」

「だったら良いけど……とりあえず、後で報告書を出しに行きがてら聞いてみる事にするか」

 そんな会話が鍛錬場で行われている等とは露知らず、アイベルクは地図を片手に立ち入り禁止以外のエリアを色々と歩き回ってみる。

 ちなみに食事の前に既に洗濯して貰ったあの礼服に着替えを済ませているので、例え貴族の人間に出会ったとしても失礼は無いだろうとアイベルクは思っていた。


 実際には貴族の人間達にもこの爆弾騒ぎの事は知らされているらしく、王族に近い貴族関係者を中心にして安全が確認されるまでは城の貴族の住んでいる区画から出ない様にと騎士団から通達があった、と巡回している騎士団員からアイベルクは探索中に聞いた。

 それに貴族が住んでいる城の区画は皇帝の執務室も近くにあるので、さすがにそこまではアイベルクも立ち入らせる訳にはいかないらしい。

 当然、地図にもしっかりと赤いインクで立ち入り禁止だと描き込んである徹底ぶりだった。


 アイベルク自身も別に貴族達に用事がある訳でも無いので、その辺りには近づかずに場内の地図にある中で目を引いた別の場所へと向かう事にする。

(もしかしたら、ここで何か手掛かりが見つかるかも知れないな……)

 その場所で自分が求めている手掛かりを探すのも目的の1つだ。

 そこで調べるのに疲れたら、さっきの鍛錬場に向かって身体を動かして気分転換しようと決めたアイベルクは地図を見ながら再び歩き出す。

 この世界の情報が沢山あるだろうと思われる、城の中の図書館に向かって……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ