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58.2回目のバトル

「……え? あのグレリスが下で暴れてるって?」

 下の異変に気がついたアニータの部下が、最上階まで階段を駆け上がってその異変を報告しに来たのである。

 それを聞いてアニータの傍らに控えていた彼氏のドゥルシラが腕を組む。

「あの男、どうやら何らかの方法で牢屋を脱出して来たらしいな。あそこにはゴーシュを見張りにつけていた筈だけど、ヘマしちまったみてぇだ」

 自分があのグレリスに負けてしまった後、あそこから出して貰えると確信して油断し切っていたグレリスにキックを食らわせて、一気に形勢逆転に持ち込んだ黒髪の男……自分達にとっては大切な仲間である彼の事を思い出してドゥルシラは溜め息を吐く。

 部下の報告によれば、グレリスは確実にアニータとドゥルシラの居るフロアに向かって来ているらしい。


 それを聞いて、ドゥルシラは愛用のショートソードと腰のホルスターに差しているハンドガンをチェックする。

「……行くの?」

「ああ。必ず仕留めてやるから任せておけ。お前はここで屋上の最終チェックを頼むぞ」

「分かったわ。それじゃあそっちは任せるからね」

 報告にやって来た部下も引き連れて、下のフロアにある自分専用の部屋に向かって待ち伏せを決行するドゥルシラの背中を見送ったアニータは、踵を返して屋上へと続くドアを開ける。

 そのドアの先に当然屋上への階段が存在しており、向かった先には噂されている極秘兵器の魔導砲が設置されている。

 人間の肉体からエネルギーを吸収して、世界各地に向けて町や村を1つ軽々と吹き飛ばせる程の代物だ。


 かつての騎士団長やギルドの英雄、そして自分の姉はこれを極秘裏に開発する為に色々と活躍していたのだ、と英雄の仲間や騎士団長の部下から聞かされていた。

 何を思って開発したのかを調べて行く内に、自分の姉を殺した魔力の無い人間への復讐を考える様になった。

(……待っててね、お姉ちゃん。後はもう最終チェックだけだから……)

 魔導のエネルギーをチャージして、それを天高く大砲の様に空に向かってレーザーとして撃ち出す。

 射程距離は十分にシミュレートされているし、エネルギーだって50発は今の状態で撃てる程に十分に蓄えてある。

 だからこそ、ここで予定外の乱入者に邪魔をされる訳には行かないのだから。


 その予定外の乱入者であるグレリスはエネルギーの生成工場を超えて、その奥にあった階段を使って上に上にと進んで行く。

 直角に180度カーブしている階段を上って、その奥に進んで行くと色々な部屋がある。

 当然そこでもまだ敵が居たので、確実に1人1人とグレリスは自分のキックとエスクリマのテクニックを駆使して倒して行く。

(大分上まで上がって来たかな……)

 窓の外から見える景色で判断する分には、なかなか高いフロアまで来ているらしい。

 その窓のそばにふと、グレリスは気になる設備を見つけた。

「あれっ、何だこりゃ?」

 そんな声が出てしまう程奇妙な物……それは箱に仕舞われている長い長いネット。

 何でこんな場所にこんな物が……と思いつつもズルズルそのネットを引き出すと結構な長さになる。


(このフロアまでの高さよりも高いんじゃ……あれっ? ん、そうか……これって!)

 グレリスは1つの結論に辿り着く。

 もしこのビルで何かがあった場合、つまりそう言う非常時にすぐに脱出出来る様にする為の脱出ネットでは無いかと思った。

(ははぁ、まぁこんな場所で何かやばい事が起こったらそれこそ……なぁ……)

 その何かが起こらなければ良いけど……とネットを一先ず戻そうと思った瞬間、目の前の窓が不気味に一瞬光った。

「……!!」

 本能に従って横っ飛びで飛んだグレリスの後ろで、窓ガラスが盛大に割れる音がする。

 咄嗟に体勢を立て直したグレリスが光の方に目を向けると、そこには……。


「ちっ!」

 自分の愛用しているリボルバーと形は違えど、あの時騎士団の詰め所で見た物と同じ形の銃を構えるドゥルシラの姿があった。

 自分を殴り倒したあの男。グレリスにとって因縁の相手だ。

「何でここまで来られたのかは分からないけど、色々やらかしてくれたみたいだから死んで貰うしか無いねぇ?」

 口調こそ飄々としているものの、ドゥルシラの目の奥には怒りの表情がはっきり存在している。

 飛び道具を持っているなら素手のグレリスの方が圧倒的に不利な状況なので、今は回避するしか無いと近くの部屋に飛び込んだ。

「逃がすかっ!」

 当然ドゥルシラもグレリスを追いかけてその部屋の中に飛び込んで来たが、グレリスだって何も対策を練っていない訳では無い。


 飛び込んで来たドゥルシラが部屋の中の様子を認識するまで数秒は掛かる。

 その数秒こそがグレリスにとっては大きなチャンス。

 銃を構えて部屋の中を見渡した瞬間に、グレリスのハイキックがドゥルシラの右手に炸裂して彼の銃が手から弾き飛ばされた。

「このっ!」

 それでもドゥルシラはまだ武器を持っている。

 あの地下で戦った時に使ったショートソードで再びグレリスに襲い掛かって来たのだ。

 グレリスも勿論応戦し、2回目のバトルが幕を開けた!

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