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53.ハンドメイド

 こうして、気絶してしまったグレリスは研究所の地下にある牢屋に放り込まれてしまったのである。

 場所は違えど、地下の牢屋と言う事ではこのエンヴィルーク・アンフェレイアにやって来て最初に目が覚めた時と全く一緒の展開である。

 しかも今回は戦い終わった後に殴り倒されてしまった満身創痍の状態で牢屋で目覚めたせいか、身体に力が入りにくい状況である。

「……っつ、何処だ、ここ……」

 目を覚ましたグレリスは、自分が再び牢屋に居る事に気が付いた。

 そして殴られて気絶してしまう前の事も思い出す。

(あの女の彼氏がまさかあの青い髪の毛してる奴だって?)

 と言う事は最初の不気味な建物に居た青髪の男と、その後で自分を助け出してくれたアニータは結局裏で手を組んでいたと言う事になる。

 そうとしか考えられない。


 それを考えてみて、グレリスは自分が結局アニータに利用されていたのだと結論づける。

 だけど、結論づけてそれで終わりと言う訳にはいかない。

 早くしなければ自分の命も危ないし、何よりもこのままアニータの口から聞かされてしまった恐ろしい計画を放っておく訳にもいかない。

 本音で言えば、グレリスはこの世界の平和がどうのこうのと言うのは別にどうでも良い事である。

 だけど、もしアニータの言っていた兵器が本当に作動して世界中が破壊される様な状況になったりした場合、この世界から地球に帰る為のヒントまでもが一緒に破壊される可能性もあるからだ。


(そんな事、絶対にさせてたまるかよ!!)

 まずはこの、自分と外界を隔てている鉄格子をどうにかしなければならない。

 これがもし夢だったら自分の手で簡単にへし折れて外に逃げる事が出来るのだろうが、あいにくこれは現実の世界なのでへし折るどころか曲げるだけでも難しそうである。

(どうすっかな……鉄格子の外には見張りが居るし……)

 あの黒髪の男……自分をあの壁画の部屋まで連行した奴だとグレリスは思い返しながら考え込む。

 見張りの男は牢屋の横の壁に腕を組んで、足も組んで寄りかかっている。

 何か役に立ちそうな物は無いかと思ってベストの内側を探ってみるグレリスだったが、最初にあの牢屋で持ち物を確認した時と同じ様に何も無い状態のままであった。

 それでも何か無いか……と懸命に探し続けるグレリスだったが、結局何かが見つかりそうな気配は無かった。


 だったら部屋の中に何か使えそうな物が無いか探してみる。

(ションベンとかする為のバケツにそれから吊りベッドに……食事を受け取る為の鉄格子についてる小窓位しか無えな)

 これだけで一体どうやって脱獄しろと言うのであろうか。

 グレリスは考える事が苦手な自分の頭で、これまで生きて来た26年間の色々な記憶から何か脱獄に役立てる知識は無いかと探ってみる。

(う~ん……あ!)

 そう言えば良く自分と一緒に行動している、今は日本に行っている2人組の内の片割れである元殺し屋のバウンティハンターを思い出した。

(そーいや、あいつが日本に行く為に色々日本の事を調べていて、脱獄に4回も成功したって言う日本のプリズンブレイカーの事を話してたっけか)


 そのプリズンブレイカーはどんな事をしていたっけ……と考えながらグレリスはもう1度牢屋の中に使えそうな物が無いかを見て回る事に。

 すると、鉄格子の隙間から外を覗こうと鉄格子に手をかけた瞬間に肘が何かに引っかかった。

「っと……ん?」

 引っかかったワイシャツの肘を外してみれば、その引っかかった原因である何かが壁から突き出ている。

 良く見てみると、どうやら小窓の枠に取り付けられているものの既に錆びた釘らしい。

 それと剥がれかけている窓枠を見た瞬間、グレリスの頭の中に1つの記憶が蘇る。

(あっ、そうか確かそのプリズンブレイカーは……!!)

 こうなったらその記憶だけを頼りにして何とかやるしか無い、とグレリスは行動をスタートする。


 まずはその剥がれかけている壁の枠……どうやら材質はブリキらしい部分をグレリスは力任せに引っぺがす。

 次に錆びている釘をグイグイと引き抜いて、見張りの男に見つからない様に場所と気配を確認しながら窓の明かりだけを頼りにして作業する。

 この窓は食事の受け取りをする為に作られている簡素な物なので、外を見る為に作られている訳では無いのが逆にグレリスの作業を目立たなくしてくれた。

 ブリキの欠片の中央部分に一直線になる様に細かく、隙間を開けない様に釘を使って穴を開けて行く。

 こうする事でギザギザの切り取り線を作り出す地道な作業が続いた。

 焦ってはいけない。

 確実に、しかしスピーディーに事を運ばなければ見張りの男にばれてしまう危険性がアップする。

 窓のそばじゃ無ければ釘の先端が良く見えないので、ただでさえ危険なこの状況下の中でその相反する条件をクリアするべくグレリスは指先とブリキの穴に集中する。

 その日本のプリズンブレイカーも全く同じ方法で脱獄をしたと言うので、この情報を教えてくれたそのバウンティハンターと先人の知恵に感謝しながらグレリスは手作りのノコギリを作り上げたのだった。

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