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52.危機感が無い

 何故彼女がここに?

 それに今の会話の内容からすると、自分が戦ったこの青髪の男とは知り合いの様であるとグレリスは思っている。

「あ、アニータ……何でここに!? ってか、これはどう言う事だ? 誘拐された筈じゃなかったのか!? 説明してくれよ!!」

 色々と頭がこんがらがっているこの状況で、グレリスは彼女自身の口から説明を受けなければ納得出来ないし理解も出来ない状況である。


 そんなグレリスに対して、アニータはハァーッと面倒臭そうに溜息を吐いてから話し出した。

「貴方って本当に頭が悪いのね。いいや、危機感が無いと言った方が良いかしら?」

「なっ……んだとぉ……!?」

「何だ、って……そのままの意味よ。別に何もそれ以外の意味は無いわ。最初に私は言った筈だけどね。この国の人間は魔力が無い人間に対して敵意を持っているって」

 アニータのそのセリフを聞いて、グレリスはまさか……と言う顔つきになる。

「もしかして、君も俺に敵意を……」

「そうよ。貴方の出方次第で、私は貴方を信用するかしないか決めていたからね。最初は信用しようと思っていたけど、やっぱり無理だったわ」

「何でだよ?」

 グレリスにはさっぱり思い当たる節が無いのである。


 そして、アニータは驚愕の事実を語り始めた。

「貴方が地球って言う世界に帰りたいって言うなら、恐らく以前の魔力を持たない人間と同じ事をするんじゃ無いかって怖くなったからよ。私のお姉ちゃんを殺したって言う、その魔力を持たない人間と同じ様にね!!」

「お、お姉ちゃん……!?」

 いきなり自分の知らない人物が話に出て来て、グレリスは更に困惑する。

 戸惑う様子を見せているグレリスに対して、アニータはまるでゴミでも見るかの様な冷たい目つきのまま鼻で笑った。

「それじゃあこの際だから、頭の悪い貴方にも全て教えてあげるわ。その魔力を持たない人間に殺されたって言うのは騎士団長と帝国の英雄だけじゃ無いの。帝国の英雄には将来を誓い合った彼女の存在があってね。その彼女こそが、母親違いではあるけれど紛れも無い私のお姉ちゃんだったのよ」


 アニータの異母姉妹はユフリーと言い、そのユフリーとアニータは父親の元で育てられたのだと言う。

「例え半分しか血が繋がって無かったとしても、私にとっては本当の姉妹だもの。そのお姉ちゃんを殺した魔力を持たない人間が憎かった。だからそのお姉ちゃんが死んじゃったって話を他の国に居た時にギルド伝いに聞いて、それで私はこの国に戻って来たのよ。魔力を持たない人間を何としても探し出して、復讐する為にね!!」

 その捜索活動の中で同じく魔力を持たないグレリスに出会った事で、もしかしたらその殺人犯に辿り着けるのでは無いかとアニータは考えたのだと言う。

「でも、俺はその殺人を犯した奴とは関係無かった訳だし、結局利用価値も無かったって事だろ? だったら適当な所で適当な理由つけて、それでおさらばって事にしてくれりゃーこんな事にならなかったんじゃねーのかよ!?」


 グレリスの絶叫に近い大声での質問に、アニータは薄く笑みを浮かべた。

「確かにそれも考えたわ。最初はそうしようと思ってた。ギルドからの依頼も真面目にこなしてくれたし、何より私が連れ去られた時に私を心配する素振りもしてくれていたからね。でも……それを差し引いても魔力を持たない人間は、私のお姉ちゃんを殺した人間と同じよ。それに私の正体を知られてしまったからには、もう1つだけ私からの依頼を受けてから死んで貰うわ」

「依頼って……何だそりゃ? そう言えばさっき、俺にはまだ利用価値があるとか言ってたな。それと関係があるのか?」

 アニータはその質問に首を縦に振った。

「ええ。貴方には地下でカプセルに入っていた人達を見て貰ったと思うけど、あれはただ単にあそこに入れられている訳じゃないの。人間の筋肉とか……それこそ身体全体からエネルギーを吸い取ってね、この国で極秘に開発中の、世界全土に向けて魔力のビーム砲を発射させる装置があるのよね」

「はっ!?」


 その衝撃的な告白に、グレリスはまさか……と言う顔つきになる。

「お、俺もそのエネルギーの養分に……」

「そう言う事だけは察しが良いのね。この地下施設を見られて、このままただで帰す訳にいかないのよ。でも安心して。あいにく地下のあのカプセルには空きが無いから、すぐには殺さないわよ。それまでせいぜい残りの短い人生を楽しんでおく事ね」


 そう言い残してクルリと踵を返したアニータの背中に向かって、大声でグレリスは叫ぶ。

「てんめぇこのやろぉ!! 俺がてめぇに対して何かしたのかよ、こんなの理不尽じゃおぐぅ!?」

「おいおい、俺の彼女にあんまり汚い言葉を覚えさせねーでくれねぇかなぁ?」

「か、彼女?」

 まさかの告白が青髪の男からも出て来た。

「お、お前の彼女なのかよ!?」

「ああそうだよ? まさかお前、アニータに惚れてたとか言うんじゃねーだろうなぁ?」

 その問いかけに一瞬言葉が詰まってしまったグレリスに対し、男の容赦無い顔面パンチが飛ぶ。

「勘違いも程々にしとけや? って、聞こえてねえか」

 パンチで気絶してしまったグレリスを見下ろし、男はぽつりと呟いた。

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