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27.馬車に揺られて

 帝都は以前2週間程度かかると説明された。

 しかもその道中にはリオスが魔獣に出会ってしまったあの街道があるし、その先に存在している西の町も超えていかなければならないとの事であった。

 それでも、これ以上この町に居て何かトラブルに巻き込まれるのは御免だし、路銀も貰ったのでさっさとここは帝都に向かうべきだろうと判断してリオスは馬車に乗り込む。

 だが、騎士団員の護衛はいらないと今回は断った。

(また、爆発事件みたいな事に巻き込まれるのは御免だからな)

 騎士団員と一緒に帝都に向かう為に馬車に乗った結果があの爆発事件に繋がった訳なので、その時の記憶がまだ新しい事もあってデジャヴになりたくないとリオスは考えたのだ。


 が、その代わりについて来る事になったのが……。

「だったら俺が行くさ。この町は今とんでもない事になっているから、俺も帝都に行った方が仕事にあぶれなくて済むだろうからな」

 この町の便利屋だと自分で言っていた、ハンマーを腰にぶら下げているホルガーが一緒に馬車に乗り込む事になったのである。

 便利屋の仕事をしている内に出来た騎士団員達との繋がりがあるらしく、騎士団員の代わりとして護衛と見張りも兼ねて帝都へと向かう事になったのであった。

「帝都の通行証も貰ったし、これさえあれば帝都に入る事が出来る。魔獣に関しては俺に任せておけ。色々知ってる。それとこの国の事も良く知ってるから安心してくれよ」

 はにかんだ笑顔でそう言うホルガーだったが、リオスは余り気分が乗らなかったのでとりあえず愛想笑いで返した。

「ああ、助かる」


 そんな経緯で馬車に乗ってリオスとホルガーは帝都に向けて出発したのであるが、リオスが1人で行動していた時とは打って変わって今までのトラブルが何だったのかと言う位に何事も無く西の町への街道を進む事が出来た。

「……こんなに平和なのか」

「何時もこうさ。あんたは運が無かったんじゃないのか?」

「……そうか」

 冷静に呟くリオスだったが、内心では若干ムッとしていた。

 別に普段の生活の中で運があるとか無いとかそう言う事を言われている訳では無いのだが、この世界に来てしまってからと言うもの、何だか色々なトラブルに巻き込まれてしまっていると言うイメージが強い。

 それを考えると、一旦あの町から離れてみる事で運気とかが変わる可能性もあるかも知れないと漠然とリオスは考えていた。

 そう言うオカルト的な物を信じるのはそう言えば絶滅の危機に瀕する位に久しぶりだったな、と苦笑を漏らしながらだったが。


 そして、この際だからと個人的にリオスはホルガーに聞いておきたい事があった。

 そもそも騎士団員にホルガーの事を話しておいたのだが、それが果たして伝わっているのだろうか?

 騎士団員の詰め所に行くのに、ホルガーは特に嫌がる様な素振りを見せなかった事も気になるな……とリオスは思いながら質問をぶつける。

「君に聞きたい事が幾つかある」

「何だ?」

「あの町での便利屋の仕事についてなんだがな、色々な所を回っているのか?」

「あーそうだよ。基本的には町全体。頼まれれば不可能な事以外は何でもやる。それが便利屋だよ」

「そうか。なら、路地裏の家に行く事もあったりするんだな?」


 その瞬間、僅かにホルガーの口元が引きつったのをリオスは見逃さなかった。

「……確かにそう言う場所に行く事もあるけど、それがどうかしたのか?」

「その事についてなんだがな、君の姿をあの爆発事件の後に見かけたんだ。路地裏から出て来る所をな。そして、その路地裏の入り口の前を俺が通り掛かった所で血の臭いがしたんだ、路地裏からな。そして路地裏に入って行ったらそこで女の死体を見つけた。血の臭いがあそこまで漂って来るって言う事は相当充満していたって事になるだろう。にも関わらず、路地裏から出て来た時の君は遠目に見ていた俺にも分かる位に平然としていた。これは一体どう言う事なのかな?」

 リオスはホルガーの目を見ながら、真剣な表情で質問をぶつけた。


 そんなリオスに対して、ホルガーはしれっとした表情で答える。

「ああ、あの時の俺見られてたのか。あの時は路地裏から入って行く民家の1つで、壁の補修作業の依頼を受けていたんだよ。板を切って貼り合わせて壁を補修し、それから塗料まで塗ってくれって。その塗料の臭いが結構きつくて、鼻をやられちまってたんだわ。……って、その女の死体って……騎士団には報告したのか?」

「ああ、報告は勿論した」

 逆に問い返されたのだが、嘘を言っても仕方無いだろうと言う事でリオスも頷く。

「だったら大丈夫じゃないか? とにかく、俺は塗料の臭いで鼻をやられて麻痺していたから血の臭いには気がつかなかった。……あー、だから騎士団員にその死体の事で話を聞かれたのか、あの後……」

「……そうか。疑う様な真似をしてすまなかった」

「別に良いよ。でも、何だかあの町では物騒な事件が多発してるよな。一体どうなってんだよ……?」

 詫びを入れたリオスにホルガーはヒラヒラと手を振って「気にしてない」のジェスチャーで答えたが、リオスはまだまだ不信感が拭えていなかった。

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