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29.移動手段

 でも、徒歩で全て移動するとなれば他国に行くだけでも結構な時間が掛かるのは、頭を使うのが苦手なグレリスにも予想出来る。

「ああ、だったらよぉ……何かこう……馬以外の移動手段って無いのか? ほら、君が使ってた転送陣って奴とかさー……」

 そんな提案をしたグレリスに、アニータは物凄く冷めた目つきで呆れた様にこう言った。

「もう忘れた訳? 貴方の身体には魔力が無いのよ。転送陣って言うのは魔力に反応して転送機能が反応する仕組みになっているの。だから魔力が無い物を送る事は出来ないのよ。この世界の魔力って言うのはそこ等の木の枝1本、石1つにも必ずあるものなの。この世界は魔力が元になって生み出された世界だからね。さっきの運んでいるワインセットを入れていた木箱だって魔力のある木を削って作られているし、その次の依頼で集めた薬草の1つ1つにも魔力があるのよ。だからこそ、貴方は転送陣を利用する事は無理だと思うわね」


 その言い方にカチンと来たグレリスは思わず言い返す。

「待てよ。そんなのやってみなかったら分からねえだろ?」

 が、その言葉にも動じずアニータは続ける。

「分かるわ。そもそも転送陣はセットした本人しか起動出来ないの。だから私だったら自分で起動出来て自分で移動する事が出来る。でも、貴方は起動出来ないし移動も出来ない。だから無理なの」

 結局、何か転送陣以外の移動手段を考えなればいけないらしい。

「……じゃあ、他に何かもっとこう……楽に移動出来る乗り物とか無えのかよ」

 せめて普通に歩くよりも速いスピードの乗り物があれば良いなとグレリスは心底思いつつ、何の気無しに空を見上げた。

 空を大きな鳥が飛んで行く。

「あんな感じで、空を思いっきり飛んでひとっ飛びで他の国に行けたら良いのによ。何で人間には翼が生えてねーんだろ。何で俺は魔術が使えねえんだろうな」


 悔しそうに空を見上げながらそう言うグレリスだったが、そんな彼に対してアニータから思いがけない情報がもたらされた。

「この国で使うのはほとんど無理だけど、背中に乗って移動出来るワイバーンなら居るわよ」

「何っ、そりゃ本当か!?」

 願っても無い情報である。

 地球であればそれこそジャンボジェット機やセスナ等の飛行機、それからヘリコプターの様に空を飛んで目的地に向かう事が当たり前になっているが、まさかこの異世界でも魔法を使った転送陣以外に空を飛んで移動出来る乗り物があるとは思わなかった。

 でも、考えてみればここはグレリスの居た地球とは違う世界。だったらこうした予想外の移動手段があったってこの世界の常識となっているのであればそれが通用するのは当たり前の話だった。


 しかし、今のアニータの説明を聞いていた中でグレリスには引っかかる部分があった。

「ん……でも待てよ、ほとんど使えないってどう言う事だ?」

「そのままの意味よ。山が多いこの国では空の天気がかなり変わりやすいからね。確かに全く使えない訳じゃ無いんだけれど、自分から進んでワイバーンに乗って移動する様な人間は居ないわね」

「天気の問題か……それでも、使う奴は居るんだろ?」

 諦め切れずに食い下がるグレリスは、少しでも速く移動出来る手段があるのならそれを使ってさっさとこの敵ばかりの帝国から脱出したいと思っていた。

 それを聞き、アニータははぁ……とため息を吐いて答える。

「少なくともこの周辺にはワイバーンを飼っている様な町や村は無かった筈ね。それこそ帝都の方に近くなるに連れて人の行き来も多くなるから、1番確実にワイバーンを扱っているのは帝都かしらね。帝都なら天候を読める風水師も居るし腕の良いワイバーンの乗り手も沢山居る筈だし」


「だったらここ等辺は徒歩で移動するしか無いって事か……」

 明らかにテンションの下がった声色でそう呟くグレリス。

 しかし次のグレリスが呟いたその一言で、絶望が希望に少しだけ変化するのであった。

「馬でもありゃあ全然スピードが違うんだけどよぉ……」

「馬? 貴方、馬に乗れるの?」

「ああ、俺は趣味で乗馬やってるから」

 乗馬と言ってもヨーロッパ式の乗馬スタイルの様なものでは無く、西部劇に出て来る様なカウボーイスタイルで趣味として楽しんでいた事は今のグレリスの服装から見ても丸分かりである。


 グレリスがそう言うと、アニータは少し考え込んだと思ったらこんな提案を彼にした。

「馬に乗れるんだったら、馬の貸し出しをしている場所があるからそこに行って移動用の馬を借りる事も出来るわよ」

「えっ!? この町でか?」

「違う違う。ここからさほど遠くない町にそう言う場所があるから、ワイバーンを求めて帝都近くまで行くよりは余程安全じゃないかなって」

「そりゃ良い、助かるぜ!」

 ファンタジーな世界であるから馬も当たり前にあるのでは? と思っていたグレリスにとっては非常に良いニュースである事には間違い無い。

 だったらそのレンタルの馬を求めて、まずは3つ目のミッションにチャレンジする前に自分達のこれからの行き先を再度地図を見て2人は決め始めた。

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