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24.考え方を変えてみると……

「ギルドからの届け物ですーっ!!」

 商店の裏口に辿り着き、そこのドアをドンドンとノックし声を張り上げて中から配達先の人間が出て来るのを待つグレリス。

 何かイベントが起こるのを期待していた訳では無いが、特にこれと言って変わった事も無く地図を確認しながら配達先に辿り着いたのであった。

 そして、およそ30秒程経ってから配達先の人間が姿を見せる。

「ああ……ギルドからな。それじゃそこに置いてくれ。それと依頼書もサインするからくれ」

 髪がボサボサのその男に言われ、ワインセットの荷物を降ろして依頼書をグレリスは男に渡す。

「どーも。じゃまた宜しく」

 依頼書にサインを貰い、後はこれをギルドに届ける事によってミッションが成功になるのだ。


「これが基本的な依頼の流れになるわね。サインを貰えるだけの働きをして、そのサインが入った依頼書をギルドに届けて報酬を貰う。これで私はお金を稼いでいるのよ」

「なるほど、よーく分かった。それじゃあ次は……薬草集めか」

 2つ目のミッションは若干手間取りそうである。

 採集に関しては決まった場所で採集出来るものがアニータの経験ではほとんどらしく、ギルドの中でも余り人気が無い様な物らしい。

 時には魔物が近くをうろつく中で採集作業をしなければいけない事もあるらしく、そう言った場所での採集ミッションでさえ単価が余り高く無いのだとか。

(苦労するだけで無く、命まで奪われる危険性があるって事かよ)

 説明を聞いているだけでもやってらんねーよとグレリスが思ってしまう程のミッションタイプだが、今の自分にはまだこの町に来て……いや、この世界に来て時間がそんなに経っていない以上、仕事を選んでいる余裕は自分には無いと思い直した。


 生きて行く為には働かなければならない。

 元々親が資産家である等の環境であったり、株投資等で稼いで行けるだけの知的な才能がある人間であれば話はまた変わって来るのだが、グレリスの家庭環境はどちらかと言えば一般家庭よりもやや下の方だったし、グレリス自身も分かっている通り学業成績はまるで勉強をしないのでロクなものでは無かった。

 だからこそ、自分の身の丈に合っている仕事を選んだ結果がバウンティハンターだった訳であり自分の天職だと思っている。

 自分にマッチする仕事を選んで働くのが大事なのだ。

 この世界で自分にマッチする仕事が見つかるかどうかと言うのは、色々ミッションをこなしていけば見つかるかもしれないと漠然とではあるがグレリスは考えていた。


 兎にも角にも、記念すべきと言うファーストミッションを終えたグレリスはその足でこのまま2つ目のミッションに向かう事にする。

 材料集めと言う事で、薬草を色々と今度は採集しに向かわなければならないのだ。

 アニータから前に説明されている通り、こうした採集系のミッションは手間と報酬のバランスが釣り合っていない事が大多数の為に人気のあるミッションとは言えない。だから依頼をしてもなかなか引き受けてくれる冒険者が居ないので、ギルドに何時までも依頼として残る……つまり回転率も悪い。

 しかし、先程「やってられねーよ」と心の中で思ったグレリスはその回転率の悪さに目をつけて見方を変えてみる事にする。

(待てよ……こう言うミッションはちょっと考えてみれば、割と良い稼ぎになるんじゃねえのかな?)

 グレリスが元々ミッションを受ける理由は金の為と言うのもあるのだが、本来の目的である「地球に帰る事」と言うのを達成する為に色々な場所へと向かって情報を得る事でもある。


 つまり、人気の無いミッションを進んで受ける事でそれこそ自分をリスペクトして貰える事に繋がるし、回転率の悪さからしてみてもそれだけ受ける冒険者が居ない……となれば、命の危険が無い面倒臭い採集ミッションをこなすだけでも他に受けたい冒険者のライバルはなかなか現れない事になる。

 時間はかかるものの、金も稼げて情報も手に入れられる可能性が高くなると言うメリットばかりのジャンルのミッションと言う見方も出来るのだ。

 けど、実際に今からそのミッションを自分の身体でこなしてみて、どれ位の時間がかかるのかと言う事を確かめなければならない。

 それに、あの不気味な建物からの追っ手がある可能性を考えてみると、このスタイルを実行するのはまだまだ先になりそうだともグレリスは考えた。


(俺を狙う奴等が居るとしたら、そいつ等をしっかりと退けておかなきゃな)

 初っ端からこうした採集系のミッションばかりを選んで、ミッション中に追っ手に狙われでもしたらそれこそシャレにならない。

 まずは町から町へと移動する為に、なるべく次の町に向かう事が出来るミッションを受けようと画策する。

 材料採集の後に控えている3つ目の調査のミッションもそれを見越して受けたもので、次の町の方角にミッションの目的地があればその途中でミッションをこなしてそのまま向かえるからだ。

(ここばっかりはなかなかバランスが難しそうだぜ)

 ミッションの内容と時間効率を考えて引き受けよう、とグレリスは思いながら2つ目のミッションに出発した。

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