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22.チュートリアルだからこそ真剣に

 ゲームの世界で言えばこれが操作方法について実際に操作して慣れる、いわゆるチュートリアルと言うものだろうとグレリスは考える。

 しかし今のこの状況になる前に、あの不気味な建物の中でかなり激しいアクションを繰り広げていたのは記憶に新しい。

 あれが操作方法についてのチュートリアルだとすれば、これ等のミッションをこれからこなすと言う事がこの異世界で生きる上で必要な生活スタイルを身につける為にあるチュートリアルと呼ぶべきだろうか。

 そして、最後の3つ目のミッションを選んだのは早くこの町から出て行きたいからと言うのが理由だった。

 あそこの不気味な建物から全然離れていないこの町に、追手がやって来るのも時間の問題だろうと考えているグレリスは正直にその理由をアニータに話す。

「あそこの連中はね……確かに厄介な連中が多いから、結構食い下がって来るかもしれないわね」

「え? あの連中の事知ってんのか?」

 知っている連中ならば、是非とも教えて欲しいのがグレリスの本音である。

 自分があそこの連中に狙われる理由が、異世界からやって来た人間だからと言う理由以外にまだあるのであれば知る権利が自分にもある筈だとグレリスは読む。


 しかし。

「私は特に何も知らないわ。それよりも、手続きがあるからまた受付に行かなきゃ」

「え、あ、おい……」

 相変わらずのアニータの態度。

 彼女が何を考えているのか分からないその態度はグレリスを困惑させるだけであるが、強引に聞き出そうとしても彼女が教えてくれるかどうかの保証は無い。

 それはともかく、これでグレリスには仕事のアテが出来た。

 実際には自分自身で請け負った訳では無く、あくまでもアニータの手伝いと言う形で引き受けるので実際にはアニータの請け負ったミッション。

 ギルドへの登録が出来ない以上、こうして間接的にミッションを請け負わせて貰わなければならないのがグレリスに若干惨めな気持ちを生んでいるのも事実である。

 だけど、ミッションを請け負っている事に変わりは無いし成功報酬だってアニータと約束した様にミッションコンプリート時に貰う事が確定している以上は全力で取り組むとグレリスは考えていた。


 例えそれがチュートリアルだとしても、いやチュートリアルだからこそ真剣に取り組まなければこの世界での仕事のやり方が曖昧なままでミッションに挑む事になる。

 となれば最終的に余計な手間がかかる事になるかもしれないし時間のロスだってするかもしれないし、最悪の場合はミッション失敗と言う結果になるのは簡単にグレリスの目にも見えていた。

 あの不気味な建物から追っ手が来る前に別の町への移動を済ませてしまいたいと考えているグレリスは、早速最初のミッションをこなしにかかる。

 また、アニータも追っ手の可能性は十分に理解しているらしい。

 グレリスが、追っ手の可能性があるからなるべく早くミッションをこなして行きたいと伝えた所、意外な程あっさりとその願いを聞き入れてくれた。

「今回の依頼は3つとも簡単な物ばかりだし、受けた依頼の報告は必ずしも受けたギルドで報告しなければいけない決まりじゃ無いから良いわよ」

「えっ、そうなのか?」


 どうやらグレリスは思い違いをしていた様だ。

 てっきり3つ目のミッションが終わった後に、1度この今居る町まで戻って来てミッションコンプリートの報告をして、そこからまた隣の町に向かうのかとばかり思っていた彼にとっては良い意味で期待を裏切られる結果になった。

 だったら話は早いと言う事で、3つ目のミッションコンプリートの報告は隣の町でさせて貰う事にした。

 鉱山の方角は丁度隣の町まで行く方角でもあるから、それだったらミッションにチャレンジ出来るし隣の町まで移動も出来るしと良い事ばかりが揃っているのでこっちのルートを迷わずグレリスは選ぶ。

「なら、まだ日没まで時間はあるからすぐにもう出発しましょう」

「ああ、それじゃ最初は酒の配達からだな!」

 追っ手が来るかも知れない以上、日没を気にしている余裕は今の所グレリスには無かった。

 確かに日没が来てしまえばそれだけ移動がしにくくなるし、ここが異世界だと言う事で何か魔物みたいなのが居るかも知れないとグレリスは考えた。


 だけど、追っ手が来て自分を捕まえるならまだしもすぐに殺しにかかって来る可能性の方が今はもっと高い。

 ならば可能性が未知数ではあるものの、パーセンテージでは低いかも知れない方にグレリスは賭けてみる事にした。

(その場で殺すまでは行かないにしても、絶対に俺を捕まえようとはして来る筈だぜ。ってこたぁ、俺とアニータの足取りを何としてもあいつ等は掴みに来るだろうな。なるべく足取りを掴ませない様に金を稼いで行かなきゃならねーってなれば、なるべく目立たない地味な仕事……それも遠くの町までの移動が出来る仕事が良いな)

 地球では遠くに賞金首を捕まえに行く時はそれなりのフィードバックを期待していたので余り乗り気では無かったが、今は逆になるべく遠くへ行ける仕事を探している自分にグレリスは驚きつつアニータと共に1つ目のミッションに出発した。

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