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20.アニータの思惑

 契約も成立した所で、再びギルドの中に戻ったグレリスとアニータはこの先の旅の費用を稼ぐ為に仕事を探す事にした。

 アニータが言うには、本来であればギルドに登録していない人間じゃ無ければ仕事を回して貰えないとの事であるが、今の時点ではグレリスに魔力が無い為にギルドに登録する事が出来ないので苦肉の策を取る事にした。

「それじゃあ、俺はあんたの手伝いって事になるんだな?」

「そうね。ギルドに登録していないのに仕事を与える事は出来ないし、依頼主からの信用も失ってしまうから」

 ああ……とそのアニータのセリフにグレリスは納得した。

 バウンティハンターの仕事に置き換えてみれば何と無くイメージが出来る。

 許可も無しにバウンティハンターの仕事をする事は出来ない様に、ギルドにもギルドなりの理由があるらしいので今のグレリスはこのギルドなりの理由に従うしか無いだろうと思っていた。


(後は割り振られた仕事が俺に出来る仕事なら良いんだが)

 そこが大きな問題になるだろうともグレリスは思う。

 器械体操を始めとしたアクロバティックな動きは出来るものの、それ以外に自分に一体何が出来るんだろうかとグレリスは考えてみる。

(俺に出来る事……俺にしか出来ない事……)

 勉強の面に関して言えば、今まで通っていた全ての学校で下から数えた方が早いレベルなのは間違い無い。

 自分には身体を動かす方が向いていると思い、今の職業をグレリスは選んだ訳だがただ単にバウンティハンターの道を選んだと言う訳では無かった。


 目の前ではアニータが壁に貼られている求人票を見たり、そこかしこに置かれているテーブルの上の求人票を色々と手に取って見比べている。

(この女も……俺みたいに何か理由があってギルドから仕事を請け負ってるんだろうな)

 それぞれにはそれぞれの事情があるし、グレリスにだって聞かれたく無い事の1つや2つあったりするから聞き出そうとは特に考えていない。

 別に知りたい訳でも無いのでそこはどうでも良いのだが、やっぱり気になるのは会ったばかりの自分に対して何故ここまでしてくれるのだろうかと言う事だった。

(さっきから俺、同じ事を何回も思ってる気がすっけど……何でこの女、俺にこの世界の説明をしたり仕事の世話までしてくれるんだ?)


 この世界の事を教えてくれるのはまだ良いとしても、仕事の世話までしてくれるしさっきのギルドの自分に対して向けられていた敵対心剥き出しの空気を払拭してくれたのも今現在求人票を漁っているアニータに間違いは無かった。

 だが度を越した親切と言うものは時に親切では無く、相手にとっては余計なお世話になる事もあるし、何より今のグレリスが抱えている気持ちそのものだった。

(助かっているのか助かっていないのかって言われれば間違い無く助かってる。そこは素直に俺だって感謝しなければいけないのも分かってるつもりだぜ)


 でも、とグレリスは愛用のテンガロンハットの下で誰にも気づかれない様に目を細めた。

 ついでに腕も組んでアニータの背中をきつい眼差しで見つめる。

(そこまでされちゃあな……やっぱあの女はイマイチ信用出来ねえ。俺に対して何かを期待しているのか……それとも、俺が何かをやるのを待っているのか?)

 ただの興味本位なのだろうか?

 グレリスの疑問は頭の中に幾つも浮かんで、そして溜まったまま消えてくれそうに無かった。


 グレリスだってバウンティハンターではあるものの、だからと言って人の心が読める訳では無い。

 と言うかそもそも、人間の心が読み取れるバウンティハンターであれば賞金首が何処に逃げているか等が分かる事もあり得るだろう。

(ってか人間の心が読めるんだったらよぉ、バウンティハンターなんかやってねえで占い師でもやれば良いだけの話じゃねえか。でもなー、あいにく俺にはそう言った人間離れしている特別なスキルなんてものは持ち合わせていねえからよぉ、大人しくバウンティハンターの仕事をやり続けるだけだろ、自分のやり方でな……って、あれ?)

 考えている内にどんどん思考が別の方向に行っている事に気が付き、ブルブルと頭を横に振って元の話に頭の中を切り替える。

(だーっ、違う違う! そうじゃねえ! 問題はこの女の考えてる事だろ!)


 結局、アニータの考えている事は自分もエスパーじゃないから分からないって話だった事で頭の中を整理させたグレリスの目の前で、そのバウンティハンターから疑いの目を向けられていた張本人の女がさっきの受付の男と何かを話し込んでいる。

 手には求人票を何枚か持っている事から、色々と仕事の当てを見つけたのだろうかとグレリスは黙ってその動向を腕組みしながら壁に寄りかかって見つめる。

(結構時間掛かってたな。まぁ、色々と求人があるみたいだから選ぶのも時間がかかってたみてーだけど)

 バウンティハンターになろうと思っていたから、勿論求人を探す時にもその職種しか探していなかったグレリスにとって仕事選びで迷うと言う経験は未知の世界だった。

 一体どんな求人を見つけたのだろうか?

 グレリスの頭の中でそんな疑問が沸いていた。

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