表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

260/625

14.俺、何もしてないぞ?

 突き刺さる視線。

 それはギルド未経験の自分に対しての好奇故のものなのか、はたまたアニータの言っていた通りで恨みから来ているものなのか、もしくはその両方なのか?

 事情がさっぱり呑み込めていないグレリスにとっては、そんな視線を向けられる覚えは……あると言えばある。

 むしろ、このギルドの中に対して好奇や興味と言う観点での視線を向けるのはグレリスの方が先だったからだ。

 それ以前にグレリスは、このギルドの建物に入る前からキョロキョロと色々な方向に向かって視線を巡らせていた。

 だがそれも仕方の無い事なのかもしれない。


 不穏な事をアニータに言われたあの後にようやく町に入る事が出来たグレリスだったが、その町並みはグレリスがプレイしているゲームのジャンルであるロールプレイングゲームで良く見かける光景がそのまま目に入ったと言って良いものだったからだ。

(明らかに中世ヨーロッパの雰囲気じゃねえかよ。俺1人を騙す為にわざわざこんな大掛かりなセットを組み立てたりするのか?)

 さっきの不気味な建物と言い、この町と言い……どうも今の自分は疑心暗鬼になっているとグレリスは考える。

 考えたくは無いのにそう考えてしまうなんてグレリスらしく無いのだが、今までのシチュエーションを振り返ってみるとどうしてもそう考えてしまう方向に進んでしまうのだ。


 本来は物事をポジティブに考える事が多いグレリスだが、やっぱりグレリスだって人間。怒る時もあれば落ち込む時だってある。

 当然、疑心暗鬼になる事もある。

 そんな状態のグレリスに気が付いていないアニータは、いよいよ町の中に存在しているギルドへとグレリスを連れて来る事に成功した。

「もし気まずくなりそうな予感がするなら、ここで待ってる?」

 一応……と言った感じでアニータはグレリスにそう問いかけたが、グレリスはここまで来たらどんな事にでも飛び込んで行ってやるよと半ば開き直った態度で返した。

「いいや、俺も行ってやるよ。この町の住人の顔を見ておくのも悪くねえだろ」

「ここの住人ばかりとは限らないけど、あなたがそう言うなら一緒に行きましょう」


 そしてギルドの中へと踏み込み、アニータの説明を受けようとした途端に今の様な視線を全身にグレリスは浴びているのだ。

(この空気……何か、やばい気がする)

 開き直ってしまった数秒前の自分を後悔してももう遅い。

 バウンティハンターとして培って来た今までの経験が、本能に伝わった上で危険だと自分に対して警鐘を鳴らしているのをグレリスは感じている、

 流石にこの空気に関しては縮こまりそうになるものの、別に悪い事は何も自分はしていないから良いじゃねえかと気持ちを奮い立たせる。

(もうこうなったらとことん開き直ってやる! いざとなったら器械体操で培った足腰のバネで、あの不気味な建物の時と同じ様にとことん逃げるだけだぜ)


 ひそかにそう決断するグレリスを案内し、アニータはギルドのカウンターへと向かう。

「魔力の測定をしたいんだけど良いかしら?」

「ああ、構わんぜ」

 カウンターの椅子に座っている受付係の中年の男は、グレリスに訝しげな視線を向けながらもアニータの申し出に了承の返事を出す。

「えーとそれじゃあ、手袋を外してからここに手を置いて」

「これか?」

 アニータが指示したのは丸い水晶玉の上。

 魔力の測定とグレリスには聞こえたが、一体どんな事になるのだろうかと期待半分不安半分でアニータに言われるがままに黒い手袋を外した手を水晶玉に触れさせる。


 ……が。

「あれ? 何も起こらねえぞ?」

 その一言がどうやらトリガーになってしまったらしい。

 アニータを除いた、ギルド全体の不信感と不穏な空気と怒りのオーラが入り混じった、ポジティブなグレリスでさえ今度は流石にあたふたしてしまう程のプレッシャーが発生してしまうトリガーに……。

「何だとぉ!?」

「やっぱりそうか、どうも怪しいと思ってたのよね!」

「おい、こいつどうする?」

「騎士団長殺しの奴と一緒の存在だろ? だったら問答無用でボコボコにやっちまおうぜ!」

「いいや、それよりも直接帝都に連れて行く方が存分に処刑される光景を見られると思うわよ」

「どっちにしろ、ただじゃここから出さねえからな!!」


 ギルドの中で求人票を見ていた冒険者達、それから受付の男やその他の係員達までもが一斉にグレリスに対して拒否反応を示したり不快感を露わにした声を上げる。

(な、何だよこれ……)

 学園ドラマの中である様なハイスクールのイジメでもあるまいに、一体何が原因でグレリスは自分がこんな状況に追い込まれているのかさっぱり見当がつかない。

 自分はただ単に、水晶玉に手を乗せた所で何も変わらなかったからそれに対して疑問の声を上げただけ。

 なのに何故ここまで言われなければならないのか?

 何故ボコボコにされなければいけないのか?

 どうして帝都まで連れて行かれる事になってしまうのだろうか?

 ともかく今はここから逃げる事を最優先に考えなければならないな、とグレリスが思ったその時、意外な人物が口を開いた!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ