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23.尾行した先で

 リオスはギルドまでの道のりを町人達に聞きながらギルドまでやって来た。ここで小さな依頼を多くこなして行けばその内金もたまるだろう。

 そう思いながらギルドへと入ろうと足を進めかけたリオスだったが、何の気無しにふと右側を向いて見ると往来の人込みの中に見覚えのある人影を見つける事になる。

「……!!」

 あれは、まさか。

 茶髪で痩せ型、それにあの服装……間違い無い。

(あいつは!!)

 あの時、鉱山で自分を水責めにした集団の中の1人じゃないかとリオスは目を見開きながら無言で驚き、そしてそのままひたひたと……まるで浮気調査をする探偵の如くその茶髪の男を追いかける。

(今回はただでやられる訳にも行かないのでね)


 人通りが多い往来を、その男を見失わない様にリオスは神経を集中させて追いすがる。勿論男をただ追いかけて行くのでは無く、周りにあの男の仲間達が居ないかどうかと言う事も含めて気を張る。

 正直言ってかなり気力と精神力を使う事なので、探偵とかの連中はこうした事を日常的にしているんだなーとリオスは心の中で尊敬の念を抱きながら必死に尾行を続ける。

 時々人込みに紛れ込んでしまって見失いかけそうになるし、いきなり立ち止まったりして露店を覗き込んだりするその男の行動に何度もリオスは冷や汗を流しつつも、何とかバレずに一定の距離を保ちつつ、そして怪しまれない様に黒いコートを脱いで肩にかけて男の後ろ姿をその視界に捉え続けていた。


 やがて茶髪の男は町の入り口付近に存在している古い民家へと入った。

(あそこがあいつの家なのか?)

 遠目にも分かるその家が見える位置からソーっと見て、更に接近してみるリオス。

(周りに気配は……無いな)

 あの鉱山の時と同じ失敗はもうしない。その思いを胸にしつつ、家の壁に張り付いて窓からじっと中の様子を見てみる。

 中ではやはり、あの時の鉱山跡で出会った人間達が談笑しているのが聞こえて来た。

(約10人と言った所か)

 大体の人数を把握してみるが他にも仲間が居るかも知れない。そして周りに気を配るのも忘れない様に、リオスは盗み聞きを続ける事にした。


「あの男、一体何処に行きやがったんだ!?」

「何処かで発狂しているかと思って色々な場所に探りを入れてみたんだが、あの鉱山周辺にも隣の街にも居なかった」

「この町に戻って来たと言う可能性は低い。確かその男は騎士団員に捕まっていたと言う話だろう?」

「そうでしょうね。あの男は何だか用心深そうな感じだったし。でも、この町も一応調べてみるべきじゃないかしら」

「そーすっか……」

 茶髪の男、紫髪の女、スキンヘッドの男、そして赤髪の女とあの時目立っていた4人が一気に勢揃いしているのも窓の外から分かる。どうやら自分の事を話している様なのだが、この感じだとこの町で自分を探し始めるのはすぐだろうと会話の内容からリオスには容易に想像がついた。


(まずいな、この町にはもう居られなさそうだ)

 やっぱりこの町には戻って来るべきでは無かったかと思いつつも、こんな会話が繰り広げられているなら早々にこの町から姿をくらますべきだとリオスはその身体を翻そうとした。

 ……が。

「それじゃあ、さっさと探しに行くか」

(お……っと!)

 身を翻す前に、行動が素早いこの家の中の集団がぞろぞろと外に出て来るのを窓の向こう側に見て、咄嗟にリオスは身を屈めて様子を窺う。

(まさか全員で行くのか?)

 どうもそうらしい。全員でリオスを探しに行く様だ。

 と言うかそれ程までに自分の事が気になるのか? とリオスは疑問を隠しきれないが、それ以上に気になるワードがさっきの会話の中で出て来ていた事をふと思い出した。

(そう言えば……あの連中、確か俺が発狂とか何とか言ってなかったか? 俺が発狂するって言えば生きる術を見失った時くらいかと自分では思っているが、まさかその事なのか?)


 冷静沈着なリオスですら、発狂と言う単語のその真意を見い出す事が出来ない。

 そうこうしている内に集団の全員が家の外へと出て行ってしまったので、これは逆にチャンスなんじゃないかと思ってリオスはその家の中に入ろうとする。

 でも鍵がかかっているんだろうな、と思いながらドアの取っ手を手前に引っ張ってみると、意外な程あっさりとドアが開いてしまったでは無いか。

(……鍵もかけないのか。無用心だな)

 現代の地球の考え方とはこうしたセキュリティの面においても違う物があるのだろうか、と若干敵ながら戸締りについて心配してしまうリオスだったが、はぁと息を吐いて家の中へと踏み込んで家宅捜索を始めるのであった。

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