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22.気になる情報

 何処までも冷静な態度を崩さないリオスに若干イラつきながらも、とりあえず話だけでも聞いてみようと騎士団員の1人が言った事で聞いて貰える事になった。

 馬車が襲われた事、鉱山へ続く道とそこにあった足跡の事、鉱山に出入りしていたであろう怪しいあの集団の事、気絶させられた事、尋問された事、変な薬を嗅がされた事、目が覚めた時にはもう誰も居なかった事、ひと眠りしてから山を下りて来た事、そして酒場で気になる話を聞いた事を全て包み隠さず話した。

「…………と言う訳だ」

「あの場所は随分前に閉鎖された筈なのに……でも、だからこそコソコソ何かをするのにはうってつけだろう」

「ああ、間違い無いな。調査するには応援が必要だろうが」

 何かを確信したかの様に騎士団員達が納得した所で、リオスは騎士団員達にこう提案する。

「それじゃあ約束通り俺はここの牢屋で待っている。上層部への報告が終わったらまたここに戻って来て声をかけてくれ」

「ああ、分かったよ」

 騎士団員達は2人をリオスへの見張りに残して、上層部への連絡をする為に2人が詰め所を出て行った。

(さて、これが如何出るかな……?)


 ある意味これは一種の賭けだった。

 もし、自分が騎士団員達との交渉に失敗して捕まってしまえば水の泡だし、成功してあの時の連中の手がかりを少しでも掴む事が出来たらこっちの勝ちだとリオスは思う。

 今はとにかく、騎士団員達が上層部にこの事をしっかりと伝えてくれるかどうかと言う事だけを懸念するリオスだったが、そんなリオスには1つ気になる事があった。

(そう言えば、あの酒場の連中が気になる事を言っていたっけ……)

 あの酒場で食事を取る傍らで聞いていた隣のテーブルの会話。

 その中で聞いていたのは、あの馬車が運んでいた荷物の内容だった。

『あー、そういやそんな話もあったっけ。でもよぉ、噂によればその襲われた馬車は全て何やらヤバい物を運んでたって話だぜ? それこそ表には出て来ないような武器だの、禁断の魔術書だのって……。それからその頭がおかしくなった奴等もその荷物の中身になっていた変な薬のせいらしいぜ』


 こんな話を聞いていたなーとリオスは思い出し、まさか騎士団員達の中にこの馬車の襲撃に関わっている連中の存在があるのでは? と今更ながらリオスは不安になってしまう。

(……迂闊だったか……)

 少し考えれば分かる筈だったのに、結果を急ぐ余りその考えに至らなかった自分をリオスは公開する。

 これを日本好きの自分の副官に言わせれば、まさに『後悔先に立たず』と言う感じなのだろうかと考え込みながらリオスは小さく頭を抱えた。

 でも、もう騎士団員に喋ってしまった以上如何しようも無い。運を天に任せるだけだとリオスは腹をくくった。


 そんなこんなで、牢の中で待ち続ける事およそ2時間。

 上層部に報告に行った騎士団員達が戻って来た。

「ど、どう……だった?」

 恐る恐ると言った感じで問い掛けるリオスに対して、騎士団員の1人は無言で牢の扉を開けた。

「……行って良い」

「え?」

 拍子抜けする程あっさりとしたその一言に、リオスは思わずきょとんとした顔つきになる。

「釈放だ」

「……どうなったんだ?」

 俺の話はきちんと上に伝わったのかと言うリオスのその問い掛けに、騎士団員は1つ頷いて答える。

「問題無い。上に報告はしておいた。……ただ……」

「ただ?」

「……ちょっと、不穏な反応はされた。何だかめんどくさそうな顔つきと返事の仕方だったから、余り期待はしない方が良い。まぁ……魔獣の事を教えてくれたのは助かったから、それはそれで良しとしよう。さっさとこの町から出て行くが良い。町の街頭掲示板を探れば求人情報とかも見つかる筈だ」

「あ、ああ……」


 何だか釈然としないながらも、どうやらこれ以上の事は教えてくれそうに無いと悟ったリオスは素直に騎士団の詰め所を出て今しがた騎士団員の1人に言われた通り町の掲示板に向かった。

 町の掲示板には遺失物探しから魔物退治、それから商隊の護衛と言った実に様々な依頼が張り紙として貼ってあるのが確認出来た。

(今回は商隊の護衛はやめておく事にしようかな)

 前回の魔獣の事、それから拉致の事もありこの町で少し小金を稼いでから出発すべきだとリオスは考える。

 なので彼が最初に選んだ依頼は荷物を家から家まで届けると言うだけの依頼だ。

(……これをギルドに持って行け、と書いてあるがギルドとは何だ……?)

 何故この世界の文字が読めるのかリオスには分からなかったが、今はそんな事を気にしている余裕は無かったのでさっさとギルドの場所を町人に聞いてその足で向かうのだった。

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