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21.気になる会話

「……でよぉ、その魔獣がさー」

「それ私も知ってるわよ。特定の馬車ばかり狙うってここ最近有名になっている魔獣の事よね」

「そうそうそれそれ。俺達傭兵の商売も上がったりだ。あのルートももう駄目かもな」

「魔獣は動きが素早いから、この町の騎士団もなかなか襲ったその魔獣の尻尾を掴めないらしい。一説によれば、足跡とか目撃証言からやけに襲い慣れている様だっていう話だからその魔獣を使役している人間がいるんだろうってよ。おまけに、襲われた馬車の御者を始めとしたキャラバンのメンバーって全員頭が変になっちまったんだろ?」

「あー、そういやそんな話もあったっけ。でもよぉ、噂によればその襲われた馬車は全て何やらヤバい物を運んでたって話だぜ? それこそ表には出て来ないような武器だの、禁断の魔術書だのって……。それからその頭がおかしくなった奴等もその荷物の中身になっていた変な薬のせいらしいぜ」

「えー、それって出任せの情報じゃないの? 誰から聞いたのよ?」

「騎士団の知り合いだよ。これは間違いねぇ」


 リオスは思わず、食事の手が止まってしまう程にその話に聞き入ってしまっていた。

(馬車、魔獣、その魔獣を使役する人間の噂、運んでいた荷物の謎、それから薬の話……)

 これは自分の身に起こったあの鉱山跡の一連の出来事に間違い無いと心の中でリオスは確信した。


 そして、酒場から出たリオスの身体は、自然にその酒場から1番近い騎士団の詰め所に居る騎士団員達の元に向いていた。

「ちょっと、昨日そこの街道で見かけた魔獣の事についての話を聞いて貰って良いかな」

「何だ、御前……?」

「その魔獣を俺は知ってる」

「え? 魔獣って最近ここらで噂になっている襲撃事件のか?」

 呆気に取られる騎士団員達を余所に、リオスは空いていた椅子を引き寄せて腰を下ろした。

「つい昨日の話なんだけどな? 俺は西の町に向かう街道でそいつを見たんだ。魔獣が暴れていたから何だろうと思ったら、馬車が襲われていた。そして俺は見たんだ。その馬車を襲った魔獣のそばに何人かの人間が駆け寄って行くのを。とは言え……俺は見ての通り丸腰だし、太刀打ち出来ないと思ったし、幸運にも俺は存在がそいつ等に気づかれていなかったみたいだから、そのまま逃げてこの町にさっき来たばかりだ。腹ごしらえもしてからな」


 ここで、騎士団員の1人からリオスに対してこんな疑問が。

「なら、何で早く騎士団に報告しない? のんきに飯なんか食ってないで報告しに行くべきじゃ無いのか? それに御前、確か……」

 リオスはその騎士団員の問い掛けに、若干気まずそうな顔と口調で答える。

「まぁ確かにそっちにも連絡が回って来ている様に……俺は確かに爆発騒ぎに乗じて逃げたみたいな事情があってな。それで……もしなんだが、さっき酒場の傭兵らしき連中が商売上がったりみたいな事が聞こえて来たからさ。その魔獣に迷惑している様子であれば、俺の知っている事を全て話すから俺の事は黙っててくれないか?」

「わ、私達が?」

 リオスの唐突な申し出に1人の騎士団員が戸惑いの声を上げる。

「そうだ。それに俺はこの町に来たばかりの日が浅い存在だ。あんた達は騎士団員だし、ここの町に駐留してるからこそ周辺の事情にも詳しそうな気がするんだが、違うのか?」

「まぁ、そりゃあ日々街中だけではなくて、街道の周辺も巡察してるしなぁ……」


 頭をバリバリ掻く1人の騎士団員の反応に、リオスは頷いて口を再度開く。

「ならば余計にそうだろう。俺が見たって言う事を伏せて、この目撃情報を上層部に持って行く。そうしてその魔獣に関する手がかりを騎士団が掴む事が出来れば、君達は一気に知名度も上がると思うぞ? 重要な情報を提供してくれた英雄として」

「……それは、まぁ……」

 別の騎士団員も腕を組んで考え込む素振りを見せる。

 しかし、ここで最初にリオスに訝しげに話し掛けて来た騎士団員が口を開いた。

「罠、と言う可能性もあるが?」

 確かにその騎士団員の言う事も一理ある。ただでさえ爆発時剣で護送中だった男がいきなり戻って来たかと思えば自分達が気にかけている魔獣の事について話しかけて来て、自分の体験らしき事をしゃべって来るだの上層部にこの事を代わりに話してくれだのと言う事を考えれば、それが胡散臭さ満点な考えになるのも否めないな、とリオスは苦笑する。


 そこで、リオスはあえて開き直ってみる事にした。

「もし俺の事が信用出来ないって言うんだったら、俺はあんた等が上層部に話して来るまでこの詰め所の牢屋で待っている。逃げも隠れもしないしそもそも牢屋なら出来ないし、罠だったらわざわざこんな場所まで1人でのこのこやって来て、捕まるリスクを覚悟してまであんた等にいきなり話しかけてこんな事を頼む訳が無いだろうしな。そこまでするメリットが俺には無いし、俺はただ単にこの町で立ち止まらずに他の町に行きたいだけの話さ。その為にはその魔獣が障害になる可能性もあるから潰しておきたい。その魔獣に対する考えはあんた達も同じだと思うが」

「…………もし罠だったら、その時は容赦無く連行するからな」

「ああ、それで構わないさ」

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