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32.騎士団に入る切っ掛け

 一通りのプロレスの説明が終了してアンリも納得した様なので、今度はレナードが質問する番だ。

 自分のプロレスへの入門理由を聞かれたのだから、アンリにも聞いてみようかと思ったのもあってこんな質問をレナードはしてみる。

「アンリさんは、何で騎士団に入ろうと思ったんですか?」

「俺か?」

「そうです。個人的な興味ですからお話ししたくなければ構いませんが」

 一応こうして「話さない」と言う選択肢も与えておけば、変に角が立つ事も無い。

 だが、アンリは別に話したくない訳では無かった様である。

「まぁ、面白いかどうかは分からないけど俺の人生だったら幾らでも語ってやっても良いよ」


 別に隠す様な事でも無いからな、と前置きしてからアンリは自分が騎士団に入った切っ掛けを話し始める。

「俺が騎士団に入る切っ掛けになったのは、このリーフォセリア王国に昔居たって言う英雄の話を聞いてからだな」

「英雄?」

「ああ。その英雄の話を聞いてから、俺は騎士団に入ろうと思ったんだ。憧れたって言う事に関してなら、俺はあんたと同じだな」

 確かになーと思いつつ、レナードはその英雄の事について聞いてみる。

「話が少し逸れますが、その英雄って言うのは一体どの様なお方だったんでしょうか?」

 そう問い掛けてみれば、アンリは1度うーんと伸びをしてグルグルと肩を回してから話を再開する。

「その英雄はこのリーフォセリア王国のみならず、世界中の色々な場所で伝説を残している超大物さ。もうかれこれ100年前になるのかな。当時はようやく最新の技術が確立したって話しただろ?」

「ええ、確か200年程前に各国で続々と古代の遺跡が見つかり始め、そして一部だけですが古代の情報を解明出来たのが100年前とお聞きしました」


 少し前に聞いた覚えのある話を思い返しながらそう述べたレナードにアンリは1つ頷き、英雄の話の続きをして行く。

「そうだな。その100年前、ようやく古代の技術が解明された頃にはもうすでにこの世界の中では有名過ぎる程有名になっていた英雄が居た。名前をユイシェルと言ってな。そのユイシェルに俺は憧れて騎士団に入ったんだ」

「ユイシェルさん……」

「聞いた事はあるか?」

「いいえ、今までそのお名前は聞いた事がありません」

 実際の所、今アンリからこうしてその英雄の話を聞くまでその話は全くレナードは知らなかった。

 そもそもこの国にそんな英雄が居る事すら知らなかったし、英雄の事なんかよりも大事な事を聞き出さなければいけなかったからレナードは全くそんな話をするつもりも無かったから、英雄の話を聞く機会が無かったのは当然と言えば当然だろう。

 前にアンリと別れた後、そのアンリの部下に付き添って貰って情報収集をした時だってレナードはユイシェルと言う名前を1度も聞いた事が無かった訳なのだから。


 その事についてはアンリも納得した様子で頷いた。

「ああ、そう言えばあんたが前に情報を集めていた時は元の世界に帰る事を聞き回っていたんだと思うし、聞く機会が無いのも当然か。でもなぁ……」

「でも?」

 何だか話の続きを促されている様で、レナードは若干の疑問を覚えた。

 だけどそっちがその気ならば、話の続きを是非とも聞いてみたいものだと思い直してアンリに接続詞の続きを言う様に仕向ける。

「でも……と言うのは? まさか、そのユイシェルさんって言う英雄の方が私が居た元の世界である地球に関係があるって事ですか?」

「ああ、まぁ関係があると言えばあるんじゃないのか?」

「ならばそのユイシェルさんのお話、もう少し詳しく御伺い出来ませんか? せっかくのアンリさんが憧れた方のお話ですから」

 半ばカマを掛けてみたレナードだったが、それはどうやら当たりだったらしい。

 関係があるのであれば是非とも聞いてみたいとはやる気持ちを抑えつつ、冷静な口調でアンリにレナードはユイシェルの話の続きを促した。


「今でこそその数は減ったが、100年前はまだまだ世界各地で魔物達が猛威を振るっていた時代でな。今から考えれば信じられない程の数の魔物がリーフォセリア国内だけでもあちこちをうろついていたものだ。それから、その当時はまだ今の国同士のいがみ合いもそこまで大きなものでは無かったから各国は連合軍を組織して、大規模な魔物狩りに乗り出した。その魔物狩りで世界各国のあちこちをフリーの傭兵として渡り歩いて大きな戦果を上げ、かなりの実力を誇っていたと言う伝説の傭兵。勇猛果敢な事で知られて、他の傭兵達より何倍も抜きん出た存在だったらしい」

 尊敬の念も込めているのだろうか、僅かに声が上ずった興奮している口調でアンリはその英雄ユイシェルの事を語る。

「同じ事を何度も確認しますが、そのユイシェルさんがアンリさんの憧れた人であり……アンリさんもユイシェルさんみたいになりたいと思って騎士団に入ったって事なんですね」

「ああ。偉大な英雄だからな。特にこのリーフォセリアや南のアイクアル王国での活躍は素晴らしかったと聞いた事がある」

 だが、そこでレナードはアンリに1つの疑問を覚えるのだった。

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