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29.エンヴィルーク・アンフェレイアとはどんな世界?

 このリーフォセリア王国の特徴がアンリによって説明された所で、次にレナードはこの世界がどう言う世界なのかの説明を求める。

「世界と言っても、伝承として語り継がれている事位しか俺は知らないけど、それでも良いか?」

「もちろんです。お願いします」

「なら話そう。世界の名前はエンヴィルーク・アンフェレイアと言う。太古の昔にエンヴィルークと言う男の神とアンフェレイアって言う女の神が居た。その2つの神はこの世界に海を創り、それから陸地を創り、更に天からの光を与えて草木を生やし、最後に俺達人間を始めとしてドラゴンやワイバーン等の生物をこの世に生み出したと言われているんだ」

「壮大な話ですね」

 地球の歴史とはこれまたどうやら違うらしい。

 地球が最初に生まれた「ビッグバン」があり、それから氷河期があったり人類が猿から進化したりと言う様な事は、もう実に40億年以上前にさかのぼる事だからだ。


 地球に住んでいる人間であれば当然知っていなければならない事だが、その地球の歴史と同じ様にこのエンヴィルーク・アンフェレイアと言う世界の成り立ちもこの世界に生きている人間達なら誰でも知っている事なのだろうとレナードは思っていた。

「それからはこの世界で色々な人間や魔物が生まれ、派閥が生まれ、国が出来て、そして没落して行く。この繰り返しで今の形に落ち着いたと言う訳だ。あんたの世界でもそれは同じじゃないのか?」

「魔物は居ないですけど、それ以外はこちらの世界でも同じですね。魔法はありませんが、その代わりに科学技術が発達しているんです」

 するとその瞬間、アンリの顔つきが目に見えて変わったのがレナードには分かった。

「科学技術……?」

「ええ。こちらの世界の魔法がそれに該当すると思います。自宅に居ながらに遠くの場所に手紙を一瞬で届ける事が出来る機能がある機械や、ドラゴンやワイバーンと同じ様に大空を速く飛ぶ事の出来る乗り物があったり、離れた場所に居る複数の人間とその場で同時に会話ができる機能が発明されたりと言うものがあります」

「ほぉ……」


 レナードがメールシステムや飛行機、それからチャット機能について自分なりの言葉で説明してみるとアンリは何やら考え込む素振りを見せる。

 だが次の瞬間、アンリはとんでもない事をその口から吐き出した。

「これは昔、城にある文献で読んだ話なんだがな……。このエンヴィルーク・アンフェレイアと言う世界にも、数千年前には科学技術が発達していたって言う話だ」

「え……?」

 この中世ファンタジーの世界で、科学技術が発展していた?

 レナードにとっては興味があると言うよりも、単純にその事実にびっくりする話である。「それって、その城に保存されていると言う文献以外に何処かで閲覧する事は出来ますか?」

 少しばかりの期待を込めて、レナードはアンリにそう問いかけてみる。


 だが、アンリはゆっくりと首を横に振った。

「無理だ」

「何故です?」

「確かに文献はあるし、古代の遺跡も見つかった。だが我がリーフォセリアも含めて各国はまだ見つかった遺跡の全ての情報を解明出来ていないから、部外者に気軽に見せる訳にはいかない。この件については200年程前にこの世界に伝わったものだからな。各国で続々と古代の遺跡が見つかり始めたのがおよそ200年前。そしてようやく古代の情報を解明出来たのが100年前。それでもまだ一部だがな」

「そうですか……」

 その気持ちも国の業務に携わっている立場のレナードには分からないでも無かった。


 しかし、落胆した声色のレナードにアンリから1つだけ情報がもたらされる。

「じゃあ、1つだけ文献から得た情報を教えてやるよ」

「えっ、よろしいのですか?」

「ああ。この世界に存在している銃と呼ばれる、金属の弾丸と火薬を筒に入れて、その筒から火薬に着火させて弾丸を真っすぐ撃ち出す武器もその解明出来た情報を基に魔術と融合させて開発されたんだ」

「銃ですか。こちらの世界にもありますね。魔術を使わないと言う所だけが違いますが」

「へぇ、銃はそっちの世界にもあるのか。こちらにも腕1本で撃つ事の出来る拳銃から、両手を使って連続で弾を撃ち出す事の出来る連射機能付きの銃、それから広い範囲に威力のある銃撃が出来る両手持ちの銃等があるぞ」

 その説明から、レナードはそれがハンドガン、マシンガン、ショットガンだとそれぞれ見当を付ける。


 だが、そこでふと疑問が沸き起こる。

「多分、それはこちらの世界にもあるものですね。ですが1つ疑問に思った事があります。それは騎士団の正式な武器として採用されたりはしていないのでしょうか?」

 その問いにアンリは「あー……」と納得した様子でうなずいてから答え始めた。

「それはいわゆる適正ってものだろう。銃の存在は一般的にも知られる様になったし町の武器屋にも売られている。だけどどうしても銃が性に合わない人間だって居るのさ。俺もその1人だ」

 そう言えばアンリが銃を使っている所はもとより、銃を所持している様子も見受けられなかったなとレナードは今までの事を思い返しながら納得した。

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