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27.他国からの受け入れ制度

(私の実力も一応プロレスの世界で慣らして来ていた訳だし、飛びつき技で一矢報いたとは言えあの手合わせの時の様にあっさりと勝負をつけられてしまうとは思いもよらなかった)

 自分の慢心と油断が原因だったのか?

 それともこのアンリと言う人が自分以上の実力を持つ人間と言う事なのだろうか?

(……いや、両方だろうな)

 心の中で自分の弱さを認める。

 自分に足りないものを認めなければ、何時まで経ってもその場所からステップアップして成長する事は出来ない、とプロレスのトレーナーに言われた記憶がレナードにはある。


 そんな経験を持っているレナードに対して、アンリはまだ伝えていないこのリーフォセリア王国の特徴を述べる。

「それからな、この国の王都で行えば手に入らない情報は無いと言う位の情報網を持っている。伊達に軍事国家として成長して来た訳じゃないし、他国の人間であっても実力主義の国だから、その入団志望者が騎士団に入る事が出来るだけの実力を持っていると判断される様であれば騎士団に入団出来るんだ」

「えっ、そうなんですか?」

 意外な気持ちがその瞬間顔に出たレナードに、アンリはしっかりと首を縦に振って返答した。

「ああそうだ。だから今の騎士団には色々な国の出身者で構成されているし、他国に遠征に向かう時にその国で生まれ育った人間が居ればそれだけで幾ばくかの不安は解消される訳さ。ちなみに俺は違うぞ。俺はこのリーフォセリア王国の王都カルヴィスで生まれ育った人間だからな」


 普通、地球の軍隊で考えてみればその国で生まれ育った人間のみと言うのが一般的である。

 有名な軍隊であれば、レナードのヴィサドール帝国と同じヨーロッパのフランスで外人部隊がある事だろう。

(フランスの外人部隊とはまた違うが、アメリカみたいなものなのかな)

 実際の所、アメリカ軍に他国からやって来た人間が入隊するのであればグリーンカードや永住権が必要になって来るのでアメリカ生まれアメリカ育ちの人間が入隊するのとはまた別の苦労が増える事になるのである。

 地球の常識に考えて当てはめてみると、このリーフォセリア王国と言う国は寛容な王国なのだろうか? とレナードは考える。

 しかし、そう考えてみるとレナードの頭には不安要素もやっぱり出て来てしまうのだ。

「ですが、少し不安ですね」

「何がだ?」

「もし他国からの密偵が身分を偽って騎士団に入団し、そして騎士団の機密情報を盗まれると言う危険性があるのでは無いですか?」


 アンリはそれに対してひらひらと手を振って「大丈夫だ」とサインを出す。

「ははっ、その辺りも勿論ちゃーんと考えてあるさ。腕っぷしだけじゃあ騎士団には入れない。騎士団員としてやっていけるだけの知識や礼儀作法があるかどうかと言うのはもっともだが、そう言う他国の回し者と言う奴を入れない為に徹底的に入団希望者の過去の経歴を洗い出している。そしてその経歴が嘘だと言う事もあり得るから、超一流の魔術師達に頼んで嘘が無いかどうかを魔術で見破って貰う事にしているのさ。もし魔術師達を買収する様な事があれば、その時は買収された側の奴も一緒に処刑するだけの話だ」

「そうですか……」

「実際、何回かそう言う事があったからな。まだそこら辺の管理がしっかりしていない時に、他国の密偵に騎士団員として王宮を荒らされた経験があったんだ。だから今は一部の重要な建物や王宮には王族関係者の他に、上位クラスの騎士団員や魔術師しか入れない事になっている」

「は、はぁ……」

 それなりに考えている様ではあるが、そんな事が過去にあったのであればもうそんな制度止めてしまえば良いのにとレナードは心底思わずにはいられなかった。


 言うべきか言わないべきかを迷うレナードだが、ここで質問の1つとして思い切ってアンリに切り出してみる。

「その王宮を荒らされると言う事件があった時……この他国からの受け入れ制度を止めようと言う声は上がらなかったのですか?」

 アンリはレナードの新たな質問に「うーん」とうなってから答える。

「確かにそう言う声はあった。だけど結局は他国の情勢を仕入れやすいと言う事で継続される事になったんだ。密偵の活動だけじゃ限界があるんだってよ。実を言えば俺だってこの制度には反対している人間の1人だ。でも、師団長の俺にすらその決定権は存在していないから反対の声を上げてももっと上の人間が可決してしまえばそれまでの話。それに、その荒らされる事件があってからよりそう言うチェックは厳しくなって、今までそんな事件は起きていない」


「ちなみに、その事件が起きたのってどれ位前の話なんです?」

 そうレナードが尋ねると、一瞬アンリは苦々しい顔つきになってから答えた。

「……5年前だ。と言うか、この国の特徴の話から少し逸れてしまったな」

 もうこの話は終わりにしようと言わんばかりに、アンリはレナードが最初に質問した答えの続きを始める。

(……何かあるな)

 アンリはきっとその事件に関係している筈だと踏んだレナードだが、それを今聞ける雰囲気では無さそうだった。

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