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25.自分だったらどうする?

 詰め所へと戻ったレナードは、アンリに帰還した事と情報収集の結果を伝えるべく彼の執務室へと向かう。

「そうか、特に情報は得られなかったか」

「はい。得られた事には得られたのですが、それはアンリさんと一緒にあの冒険者の人達から聞いた情報と同じ様な物ばかりでして」

「成る程なぁ。実の所、騎士団長とギルドトップの奴が殺されたとなればやはり大事にしたくない気持ちも分かるし、それなりに外部に情報を漏らさない様にとは言われている筈だ」

「そうですよね……」

 今までの話を、断片的にだが聞いていたレナードはもうすでに分かっている。

 もし自分がそのソルイール帝国の騎士団に関わる人間だとしたら、騎士団長が殺されたりギルドトップの人間が殺されたりしてしまえば、それだけで国中が騒ぎになるのは目に見えているし情報の流出は避けられない。


 だからこそ、食い止められる所で食い止めておかなければ、他国との関係が悪化したり攻め込まれてしまう隙を見せてしまう事になる。

(私であれば、まずはギルドに情報をなるべく漏らさない様に全力で止めにかかる。騎士団は国の上層部が圧力をかけるだろうが、騎士団長ともなれば殺されてしまったら大事だからそれでも幾らかの情報が流れ出てしまうのは避けられない)

 事が事だから完全な情報の隠蔽は無理だろうし、事実こうして隣国ではあるがリーフォセリア王国にまで冒険者を通して情報が漏れてしまっている。

 だから私では如何しようも無い……と思っていると、コンコンと執務室のドアがノックされてアンリの部下の兵士が1人入って来た。

「師団長、王都から連絡が入りました」

「本当か? それで、どうなった?」


 その兵士の言葉をレナードもアンリも心して待つ。王都の出方次第でレナードの行く末が変わると言っても過言では無いからだ。

 そしてその兵士が言うにはこう言う事らしい。

「大至急、その魔力が無い方を王都まで連れて来る様に……との事でした」

「分かった。ワイバーンでも良いのか?」

「なるべく時間が掛からない手段を選べ、との事です」

「ならワイバーンで行くか。あんたはワイバーンに……乗った事無いよな」

「はい」

 空を飛ぶ手段ならヘリコプターや飛行機位は乗った事があるものの、流石に生きている飛行物体の背中に乗ると言うのは勿論全くの未経験であるレナード。

「あんたは俺が責任を持って王都まで連れて行く。と言うかあんたにもしもの事があれば、俺が責任を負わなければならないんだ」


 そう言われた約30分後には、レナードは詰め所の裏庭に用意されたワイバーンにまたがっていた。

 正確にはワイバーンのパイロットであるアンリの腰に腕を回して抱きつく姿勢である。

「命綱のロープも渡しておくけど、それでもしっかり掴まっててくれよ」

「かしこまりました」

 腰のベルトの上から、その命綱のロープを巻かれて万全の体制でレナードはいよいよ王都へと向かう。

 あれだけ行ってみたかった王都にやっと行ける。

 それだけでレナードは顔には余り出さないものの、心の中は高揚感で一杯だった。

(欲を言えばもう少しこのアルジェルの町を回ってみたかったが、王都に行けばきっとこれ以上の規模の町になっている筈だし、そこで異世界を良く調べてみれば良いだけの話だろうな)

 多少の心残りはきっと王都が解消してくれるだろうと信じて、レナードは大空へと飛び立った。


 その大空の旅は意外と快適なものである。

 ワイバーンのバサバサとはためく翼の音も、それから肌に直接受け続ける風も、生物の肌の感触を直に感じ取る事が出来る股間の感触も全てがレナードにとっては未体験ゾーンの為に新鮮だ。

「何かこう、もっと乗り心地とか悪いのかなって思ってたんですけど結構快適なんですね」

 自分よりも大きな背中に向かってそう呟いたレナードに、ワイバーンのパイロットをしているアンリはこう返した。

「そうだろうそうだろう。スピード全然出してないからな。それよりも高い所は平気なのか?」

「ええ、怖く無いですよ」

「そうかそうか。だったら問題無いな。このワイバーンみたいにこうして乗り物としての移動手段で役割を果たしてくれている生き物は、ちゃんと調教師の手によってトレーニングされているから心配無いぜ」

「ああ……」

 そう言えば馬とかでもそうなんだよな、とレナードはそのアンリの説明に納得する。


「本当はもっともっと速いスピードが出せるんだけど、そうなると当然俺達の身体が持つ訳が無い。だからこうしてゆっくり飛ぶのが最も賢いやり方って訳さ」

 そのアンリの説明に対して、レナードはイメージ出来る事態について聞いてみる。

「では、速く飛ばなければならない……例えば急いで目的地に向かわなければならない時にはどうするんでしょう? やはり、それなりに我慢出来る所までスピードアップしていくと言う事ですか?」

「そうなるな。その時は振り落とされない様にワイバーンを水平に保たなければいけないから、そう言う操縦の仕方をきちんとトレーニングするのさ」

 騎士団ではこのワイバーンに乗れる事が昇進の条件の1つだと語ったアンリの手により、ワイバーンは王都に向けて翼を動かし続けるのだった。

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