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22.ワイバーン

「こ、これは……?」

「ああ、あんたの世界にはこう言うのは居ないんだったな」

 もしゃもしゃと、エサの入った木のバケツに顔を突っ込んで食事を摂っている生き物。

 それは間違い無く最初の丘を歩いていた時に遭遇した、レナードがドラゴンと間違えたのと同じ生き物であるワイバーン達だった。

 アルジェルの町の中にある、高い木の柵で仕切られている飼育場の様な場所でそのワイバーン達はエサの時間を満喫中だった。

 それもその筈、ここは移動用に飼育されているワイバーン達の住処となっているのだから。


 地球には空を飛ぶ為に飛行機やヘリコプターと言った物が存在しているが、こちらの世界では飛行機がドラゴンに、ワイバーンがヘリコプターに該当するらしい。

 騎乗用のそうした空を飛ぶ生き物は個人で所有している人間も居るのだが、どちらかと言えば金持ちの為の乗り物として販売されたりしている他に、何と自分でドラゴンやワイバーンを保管して来る猛者も居るのだとアンリが教えてくれた。

「リーフォセリアの貴族達の一部、それから歴戦の傭兵や冒険者の中でも一握りの連中位かな、こうした生き物を個人で所有してるのは」

「それはエサ代とかそう言うお金の問題ですか?」

 そのレナードの質問に、アンリは腕を組んでうーんと首を捻ってから答える。

「それもあるが……どちらかと言えば自分の地位を示す一種のステータスみたいなものって言った方が良いな」

「ステータス……」


 ポツリと呟いたレナードにアンリは続ける。

「実際の所、エサ代や飼う場所と言ったその他諸々の管理費はバカにならない。大きいワイバーンやドラゴンであればある程広い場所が必要になるし、空を飛ぶ為に必要なエネルギーを補給する為のエサ代も掛かる」

 そこで一呼吸置いて、こう言う生き物を飼う上で最も大切な事をレナードにアンリは告げる。

「それに何より、元々こうしたワイバーンやドラゴン等の竜族に当たる連中は獰猛な性格だからな。人間に従うなんて事は野生の連中からしてみればそれこそプライドが許さないだろうし、この世界を創ったって言う連中が居た頃のこの種族達は人間の言葉を理解していたそうだしな」

「人間の?」

 ますますファンタジーじゃないかと感心するレナードにアンリは頷く。

「そうだ。知能が高い生き物として知られているんだ。今でも俺達の言葉を理解出来る様なワイバーンやドラゴンがこの世界の何処かに居るんじゃないのか?」


 流石に俺は見た事無いけどな、と苦笑いするアンリだがこう言う世界に疎いレナードは余り話について行けない。

 それでも持ち前のコンピューター並みの頭脳で何とか理解する。

「つまりプライドが高い種族を手懐けて騎乗用にする為には、時間も掛かるしお金も掛かるし何より手懐ける為に色々な知識や場所や調教師等も必要と言う事ですか?」

「そう言う事だ」

「それが出来るのは、そう言う環境を用意出来る程の財力と名声と信頼がある人間しか居ない……」

「その通り。だからこう言うドラゴンやワイバーンを飼っている人間は一握りなんだよ。この国……いや、この世界ではな」


 地球の常識に置き換えてみると何と無くレナードには理解出来た。

 小さなヘリコプターやセスナ等であれば個人で所有するのも出来なくは無いが、やはりそれを飛ばす場所、それから保管する場所となれば滑走路になる広い敷地やヘリポートが必要になる。

 そして機体の大きさが徐々にスケールアップして行けばジェット燃料だって多く必要になるし、ヘリコプターだって大きくなればそれだけ操縦に神経を使わなければならない。

(世界は違っても、生活のスケールに関してはこうした物を持てる人間と持てない人間って言うのは一緒らしいな)

 サーヴィッツ家の家柄では持てない事も無いのだが、いかんせんジャンボジェット機を所有する程の財力までは無かった。

 セスナは趣味で親戚が持っている事は知っているが、そっち方面にも疎いレナードは余りその世界を知らない。

 ヘリコプターに関しては自分の高校時代の同級生が大きな会社を国内で経営しており、そこでヘリポートとヘリコプターを幾つか所有しているのを見た事がある。

 後はそうした空を飛ぶ為の乗り物だけでは無く、クルーザー等の海の乗り物も同じ様にワイバーンやドラゴンに当てはまるのだろう……とレナードは解釈した。


 そう言えば、アンリは一体どれ程の家柄なのだろうか?

 ふとレナードはそんな事を考えてみる。

(見た目や言動だけで考えてみると、余り上流の階級出身では無いかもしれないな)

 しかし、人を見かけだけで判断してはならないのはレナードだって良く分かっているつもりではあるしそう教育されて来た。

 もしかすると、地球に居る時の自分よりも良い家柄の出身かもしれない。

 はたまたその真逆で、貧民からのしあがって来た人物かもしれない。

 元々上流階級出身で、プロレスの世界に入ってからは全く違う世界観の人間との付き合いをして来たレナードは良い意味でも悪い意味でも世界を広く見られる様になったと自負している。

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