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19.この世界の事、この国の事

 そんな肝に銘じたレナードの隣で、彼が出した提案に乗ったアンリはこの町の中で心当たりが無いかと考える。

 すると、1つ良さそうな場所を思いついた。

「そうだ、この世界には世界中に繋がりを持っている機関が存在しているんだがそこに行ってみるか」

「へえ、そう言う機関があるのですね」

 あいにくこう言ったファンタジーな世界に疎いレナードは、アンリの言っている機関が何なのかすぐに思い浮かべる事は出来ない。

 しかし、地球の機関に例える事は出来る。

(国家の大使館みたいなものなのかな)

 大使館であれば外国に対して繋がりを持つ事が出来るし、何よりもその現地の情報をいち早く手に入れる事も出来るから、多分そう言った類の機関なのだろうと予想するレナード。


 その予想は当たらずと(いえど)も遠からず。

 案内された場所は「ギルド」と呼ばれている場所であり、ヴィサドール帝国の中にも存在している公共の職業安定所と同じく、仕事を紹介されたり出来る他にも酒場としての役目も果たしている場所であり、それぞれの町の近辺で活動している冒険者達のたまり場になっているのだ。

 町ごとにギルドを置いている所もあれば、ギルドが無い田舎の村から仕事を得る為にわざわざ遠くの方からやって来る冒険者も居るのだ、とアンリはレナードに教えてくれた。

「と言う事は、私は運が良かったんですね」

「そうなるな」

 辺境と言えども、こうして人が集まって来る町の近くに出て来た自分は、すぐに人里を見つけられる事が出来てラッキーだったのだろうとレナードは思う。


 そんな辺境の町であるアルジェルを、レナードは地球で言う所の地方都市に該当する位の町かなと見当をつける。

 この規模の町が辺境の町だとしたら、王都は一体どれ程の広さがある場所なのだろうか?

 そう思ったレナードは、ギルドに向かう前にアンリに王都について聞いてみる。

「王都ってどの位の広さがあるんですか?」

「どの位……うーん、この町よりは大きいのは確かだな。俺は大体この町の5倍位は広いかなと思う」

 5倍!

 流石は国の都、「王都」だとレナードは感心してしまった。

 感心するレナードに今度はアンリから質問が飛んで来た。

「王都に行きたいのか?」

「最終的には行く事になるかもしれないですね。この町に、王都以上の機能を持つ施設や設備がありますか?」

「……無い」

 予想通りのアンリの答えにレナードは頷く。


「もう少しこの世界の事、それからこの国の事について知りたいです。そして最終的には王都に行きたいです」

 淀み無く、そして迷い無く言い切ったレナードだったがアンリは余り乗り気では無さそうな顔をする。

「……まぁ、俺は良いけどよぉ……王都に向かうなら結構かかるぜ? それでも良いのかよ?」

「構いません。その他の町にも行きます。元の世界に変える手がかりを見つけられるなら、私は何処にでも行く覚悟です」

 地球にはまだまだやり残した事があるし、結婚だって実は婚約寸前の彼女がレナードには居る。

 だからこそ、自分の地球への想いは強いし揺るぐ事なんて無いんですと一気にアンリにぶちまけたレナードに、ぶちまけられた方のアンリははぁと溜め息を吐いた。

「分かったよ。でも前にも言った通り、その王都からの連絡が無い限り俺はこのアルジェルの町からは出さないからな。それだけは覚えておけよ」

「勿論です」


 正直な気持ちで言えば、今すぐにでも地球に帰る事が出来るならばレナードだってそうしたい所だ。

 だけど、今のレナードが頼りに出来るのはこのアンリだけだ。

 それに地球に帰る為に必要な手がかりと言うには乏しすぎる情報だが、隣のソルイール帝国と言う場所で異世界からやって来たと思わしき人間の目撃情報があったと言う。

 ソルイール帝国にも行ってみたい。

 だけど、この王国の何処かにもしかすると地球に帰る事が出来る場所やキーアイテムになりそうな物、もしくはそうした物や場所へのヒントがあるかも知れない以上、それを探してからでも遅くは無いかもしれないとレナードは思っていたのだ。

(可能性がある場所や物は全て調べる。私はまだこのアルジェルの町と隣の丘しかこの世界を知らない訳だからな)


 アルジェルの町を一通り見て回った後に、アンリはこの世界についてもう少し詳しく教えてくれるとの事だったのでレナードはそれに期待しつつギルドへと向かう。

 アンリが言うには色々な場所から冒険者が集まって来ると言う事であるから、冒険を専門としている人間達であれば、もしかしたら魔力が無い他の人間がこの世界に居る可能性の情報も手に入るかも知れない。

 軍と言うのは国民を守る為に組織されている団体なのだが、普段は事務作業等でレナードは軍の施設の中ばかりに居る。

(そう言えば、軍の任務以外でこうして1人で旅をする事なんて何年ぶりだろうな……)

 今はアンリが居るから2人だが、この先で1人になるかも知れない。

 その時になっても困らない為に情報はしっかり仕入れる様にしようと決めたレナードの前に、そのギルドの入り口が見えて来るのだった。

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