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18.ツテ

 アンリの凄さを身を持って感じた後は、詰め所で他の騎士団員達と一緒に朝食を摂る。

 ここの騎士団員達には既にレナードの事が伝わっている様であり非常に物珍しい視線を向けられるのは勿論の事、異世界からやって来たと言うレナードに対しての質問が矢継ぎ早にやって来る。

 レナードはゆっくりと朝食を口に運ぶ暇も無いまま、真面目な性格も相まって1つ1つの質問に丁寧に答えて行く。

「地球と言うのはどれ程の文明があるのだ?」

「結構進んでいると思います。魔法が無い代わりに科学が発達して人々の生活を支えていますね」

「ドラゴンやワイパーン等の魔物は居ないのか?」

「居ませんね。熊とか鹿とか馬とかなら居ますけど、そう言う魔物は空想上の生き物として認識されています」

「国は何ヵ国位あるんです?」

「ええと……正確な数は私も把握出来ていないのですが、大体200位はあったかと」


 ちなみに一般的な国連加盟国数だと194カ国ではあるが、旅行でトータル100カ国以上訪れた経験がある旅人達だけで構成されている、トラベラーズセンチュリークラブの独自のリストでは324カ国だと言う。

 こうして楽しい……とは余り言えない朝食タイムが終わり、いよいよアンリに案内されてレナードは町に繰り出す事となる。

 考えてみればあの丘を下りて来てこの町に入ってからすぐにアンリと出会った訳だし、先導されてアンリと一緒に詰め所に向かう時には自分がこれからどうなるのだろうと言う不安で頭が一杯だったのでおぼろげながらの町の風景の記憶しか無いのがレナードの現状だ。

 町に繰り出すに当たって、昨日みたいなトラブルはもう勘弁して欲しいものだとレナードは心の中で本音をぶちまけてからアンリについて行く形を取った。


(でもせっかく異世界に来た訳だし、こんな展開はあの演習場所に居た参加メンバーの中では私以外には誰も出来ないんじゃ無いのか?)

 だったらせっかくの異世界を楽しんでみよう!

 そう決意したレナードだが、その時ふと疑問が自分の中に浮かび上がって来る。

(……私、だけ?)

 それを考え始めると、レナードの疑問はどんどん膨らんで大きくなり始めた。

(えっ、本当にそうなのか? 前にこのリーフォセリア王国の隣にあるソルイール帝国に、私と同じ魔力を持たない人間が現れたのだったな)

 あくまで噂にしか過ぎないし、アンリから聞いただけだから事実確認も出来ていない。


 だが、それがもし事実だったとすれば?

 そしてその魔力を持たない人間が、自分と同じ地球からこの異世界にやって来た人間だったとしたら?

(万に1つの可能性だが、地球からやって来た人間がまだこの世界の何処かに居るのかも……?)

 本当にこれは自分の推測にしか過ぎないとレナードも分かっているのだが、それでも100パーセントありえないとは言い切れない話でもある。

(となれば、それをアンリさんに聞いてみるのが良いかもな)

 師団長と言う上の立場の人間であるアンリであれば、他の国にアプローチもしてくれるかもしれない。

 自分だけでこの世界全ての事を知るのは限界があるし、未開の地だってあるかもしれないし未踏の地だって存在するかも知れない。

 だったらここはこっちの世界で生まれ育った人間のツテを頼るのが1番手っ取り早いだろう、普段から合理的に考えるレナードはその方法を実行しにかかる。


 それにこれから町の中を見回ってみて、そのアンリに聞く方法以外にもまだ他の魔力を持たない人間を探し出す方法が見つかる可能性だってあるだろうともレナードは考えた。

(インターネットがある地球だったら、色々とそのインターネットで人探しがはかどるかもしれないが、この世界の事がまだまだ分からない以上は、私の知らない効率の良いやり方が見つかる可能性も……)

「……い、おい!」

「はっ、はい!?」

「大丈夫か? 何だかボーっとしていた様だが」

「あ……申し訳ございません、少し考え事をしていたものでして」

 どうやらアンリに呼ばれていた様であるが、今まで考え事をしていたレナードは気が付けなかったらしく今の時点でようやく反応する事が出来た。

 人からの呼びかけに気が付かないなんて自分でも珍しいなと思いつつ、レナードはアンリの方に顔を向けた。


「考え事?」

 レナードのそのセリフに食いついて来たアンリに、考え事をしていた張本人の軍人はその考え事の内容をストレートにぶつけてみた。

「……と言う訳でして」

「ははあ、成る程なあ。今は辺境警備の人間だけど、俺も昔は王城で働いていた事があったからその知り合いを辿ってみると見つかるかもしれねえな」

「王城で働いていたんですか?」

「前は、だけどな。色々あって今はこうして辺境警備の仕事だよ」

 その瞬間、レナードはアンリの瞳に何処か影がある様な気がしたが、人にはそれぞれ色々な過去があって様々なものを背負って生きているのだから、自分から聞き出すのは失礼だと分をわきまえる事にして、アンリが自分から話してくれるのであればその時に彼の口から聞こうと肝に銘じた。

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