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18.企み

「ちょっと待て、今までの話だと御前達があの馬車を襲ったって事にならないか?」

「ああそうだけど?」

 黒髪の男はリオスのその疑問にあっさり答えた。と、言う事は……?

「まさか……まさか、あの魔獣も……」

「ええそうよ? 私達はあれの飼い主。あ……ほら、戻って来たわ」

 紫髪の女が指差した方向。そこは自分が殴り倒されたあの出入り口の方だった。

 そこからのっしのっしと言う擬音が似合いそうな程にゆっくりと歩きながら、背中にロープで大量の木箱を括り付けられたさっきのあの魔獣が歩いて来るのがリオスの目に入った。

「……!」

「この魔獣の事だろう?」


 更にその後ろからは、何人かの新たな武装している人間がやって来た。その人間達を見て、リオスにはピンと来るものがあった。

「……もしかして、さっき森の中で走り回っていた連中か?」

 あの崖の上から森の中に見えた、明らかに馬車が襲われていた方角に向かって走っている何人かの人影。

 まさかと思ってリオスがそう訪ねてみれば、どうやら当たりだった様だ。

「覗き見とは趣味が悪いわね」

「何処から俺達の姿を見ていた?」

 悪い予感は続くのか……と思いつつも、崖の上からあんた達が走り回っていたのを見たと言う事を今しがた自分の疑問に反応した赤いショートヘアーの背が高い女と、セミロングの茶髪を頭の後ろで束ねた細身の男にリオスは正直に話す。


「馬車の方に向かって走っていたと言う事は、あの馬車を助けてくれるって思っていたんだが、助けたのはその魔獣の方……つまり、あんた達は馬車を襲っていた側の連中か」

「そうだが」

 当たり前の様に答えるその茶髪の男に、どうやら本格的にまずい状況だと悟るリオス。こういう強盗には手慣れている様だ。

「その魔獣の背中の荷物が、御前が積み込みを手伝ったって言う荷物だ。御前が中身を知らないならここで開けて確かめてみるだけの事だな」

 スキンヘッドの男がそう言い、魔獣の背中の荷物を他のメンバーがどんどん下ろしていく。

 積み込みを手伝っていたリオス自身も感じていたのだが、馬車の荷台にリオスが身を縮めなければ乗り込めない位に大量に荷物を積んでいた。

 これだけの量の荷物を一体何に使うのだろうかとリオスは気にならなかった訳では無いが、その疑問が今目の前で少しだけ解消されそうであった。


 ガチャガチャと木箱を開けて、中身を取り出していく武装集団。

 木箱の中からは、何やらくすんだ白い袋に包まれた物体が出された。

 その光景を見ていたリオスは、そう言えばこの荷物の1つ1つは結構重い物だったと記憶を辿っていた。

(今、地面に降ろした時の音から考えても結構な重さがあるな。それに、中からガチャガチャ音がするから……でも金属っぽくは無い音だ。ならば石の類いかな)

 そうリオスが予想した通り、袋の中からは画家が使う石膏像の様な首から上だけの小さい人間の頭がゴロゴロと幾つも出て来た。

 するとスキンヘッドの男が自分の武器である大斧を手に取って、まるで地球の伝記に出て来るモーゼが杖を突き立てる場面の如く、その大斧の柄頭の部分で一気に顔の部分を突いて砕いた。

 すると、若干の砂埃を上げて顔から粉々になって割れてしまったその顔の部分から、何かが転がり出て来たではないか。


(何だ、あれは……?)

 良く見てみると、どうやら小さい袋に入っている白い粉の様だ。

 まさか、地球で言う所の麻薬みたいな危険物がこの世界にもあるのかとリオスは息を呑む。

 その袋を今度は1つ開封し、リオスの顔に近づける赤い髪の女。

「や、やめろ!!」

 何かをされると思ったリオスは、自由な足で反撃を試みるがスキンヘッドの男と茶髪の男に身体を押さえつけられてしまい成す術無し。

「そんなに怖がる必要無いわよ。ただ甘い匂いがするだけだから」

 そしてその袋の中身を否が応にも嗅がされてしまったリオスだったが、ここでふと妙な事に気がついた。

(……ん!?)


 そのリオスの様子の変化に気がつかないまま、次にスキンヘッドの男が自慢の大斧の柄で思いっ切りリオスの後頭部を殴りつけて彼の意識を飛ばす事に成功する。

「何だぁ? 弱っちい奴だぜ」

「で、こいつは如何するんだ?」

「ほっとけほっとけ。どうせここはもうお払い箱だ。それにもうここに放っておいても、目が覚めた時には凄く面白い事になるからさ」

「あー、それもそうね。なら早くリーダーと一緒に残りの作業を進めましょう」

 スキンヘッドの男、紫髪の女、茶髪の男、赤髪の女がそんな会話を交わしている事には、気絶しているリオスは当然分からないまま、その場に後ろ手に縛られた状態で取り残されてしまったのであった。

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