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5.謎の森

 一体何が起こったのだろうか?

「うぐ……む……」

 レナードが光の眩しさを感じつつまぶたを開けてみると、そこは何故か薄暗い森の中だった。

「……はっ?」

 あり得ない。自分は今までトイレに居た筈なのだ。

 なのに何故こんな場所で倒れているのだろうか?

 光の眩しさは木々の間から差し込む太陽の光のせい。

 薄暗いのは木々が生い茂っている深い森の中だから。


 そもそも、自分はあの光に包まれてしまってそれからどうなったのだろうか?

 もしかしたら意識を失って、その間に誰かに拉致されてこんな場所まで来てしまったのだろうか?

 ここは一体何処なのか?

 今は一体何時なのか?

 次から次に噴き出して来る疑問の数々だが、戦略を練るだけで無く自主的に戦況の分析も進んで勉強しているだけあって頭脳派で冷静な性格と評されるレナードは、この状況でも冷静に行動を開始する。

 こう言う見知らぬ場所で意識が戻った時には、まず自分がどの様な状況に置かれているのかを把握するのが第一条件だ。


 レナードは自分の軍服をまさぐり、今の持ち物を確認する。

 ポケットから出て来たのは財布にスマートフォン、それからボールペンが3本。

 他に持ち物は見当たらないので、今度はそのスマートフォンを使って場所や時間の確認だ。

 この場所が分かるのであればどうにかなるかもしれないと思い、レナードはスマートフォンを起動する。

 ……が。

(圏外か……。深い森の中なのでアンテナが立たないのはしょうがない。時間は14時22分。私がトイレに入ったのは夜なので、少なくとも夜が明けてから10時間以上は経過していると見て良いだろう)

 場所を確認する為のGPSアプリは森を抜けてから再起動しようと思い、レナードは歩き出した。


 歩けど歩けど一向に森を抜ける気配が無いのだが、それでも今は自分の勘が頼りになる。

 今回の演習は確か実地訓練で森の中でのプログラムもあった筈だから、その場所まで誰かに連れて来られた可能性も十分に考えられる事だった。

(イタズラにしては度が過ぎたものだな)

 一体誰が何の目的でこんな事を仕出かしたのか、そして何故自分がそのターゲットになってしまったのだろうか?

 冷静な性格のレナードだって1人の人間。

 この非常識な出来事の犯人を突き止めなければ気が済まないのは至極当たり前の話だった。


 そんな不可解な事件の被害者であるレナードが森をようやく抜けたのは、それから1時間後であった。

(流石に疲れた……)

 後方支援部隊所属とは言えども日々のトレーニングは欠かしていないレナードなのだが、幾らブーツを履いていても舗装されていない不安定な地面をこれだけの時間歩き続けるのはスタミナの消耗が激しかった。

 1時間以上も歩きっ放しと言う事はそれ程までに広い森だと言える。

 一応、道がそれなりに造られて整備されていたので迷う事無く無事に森を抜ける事が出来たのは救いだったと言えよう。


 森を抜けた事で少しは不安が消えたのだが、それでも完全に無くなった訳では無い。

 目の前には小高い丘が広がっており、その丘からは1つの町が下に見えている。

(町だ……)

 森の中ではリスやウサギ等の小動物を見かける事はあったのだが、人間には1度も遭遇していないのが現状であった。

 ようやくこれで人間に出会う事が出来るかも知れないのかと一気に安心感と少しの緊張感に包まれたレナードは、その町を目指して丘を下り始めた。


 だが、その町に向かって丘を下る途中でレナードは段々と違和感を覚えずにはいられなくなって来た。

(……んん?)

 山奥であれば舗装されていない道が続くのは分かる。

 しかし、丘の上から見えた町はちょっとした地方都市位の大きさがある様にレナードには見える。

 すると、地球の文明テクノロジー的な観点から考えても無くてはならない物が無いのである。

(タイヤの跡が見当たらない……)

 よっぽど山奥の、それこそ放牧等をして生きている様な小さな村でも無い限り、今の地球上ではバイクや車が生活必需品として至る所で見掛けられる筈だ。


 となれば、この町の大きさからしてみればそうしたバイクや車があるのが当然の筈なのだが、レナードの目には一切そう言う乗り物の通った跡やエンジン音が見当たらないし、聞こえて来ないのである。

 もしかすると雨が降ってそうした跡が消えてしまったのかも知れないし、ここまでそうした乗り物で来る事が出来ない可能性だってあるし、たまたま今の時間帯に車通りが無いだけでエンジン音が聞こえて来ないと言う状況かもしれない。

 こうして色々と思い付くだけの予想をレナードは頭の中で立ててみるが、そのまま更に歩いて行くとレナードですら予想していなかった物が目の前に現れた。

「……!?」

 目に飛び込んで来たその光景に、レナードは軽いめまいを覚えた。

 丘を下る途中で開けた場所があるのだが、そこに横たわっている生き物……の死骸にレナードの視線が釘付けになった。

(こ、これは……!?)

 明らかに地球では見た事の無い……いや、フィクションの中でしかお目にかかる事が出来ないシルエットの生き物だった。

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