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17.水責め

「ぶはぁぁっ!」

 自分の銀髪が水に浮き、そして後頭部を鷲掴みにされて水から顔が上げられる度に前髪がうっとおしく顔に張り付くのがたまらなくリオス自身には気持ち悪かった。

「おらぁ、さっさと吐いちまった方が身の為なんだぜぇ?」

「誰の差し金なのかしらね?」

「このまま溺れ死んでも良いってんなら頑張ってみろよぉ!」

「火あぶりにでもしてあげましょうか? 次は」

 周りの武装した男女の声がリオスに響くが、だったらまずは落ち着いて話せよと言いたくなる位に先程から水責めを受ける。

 彼の現状は、水に顔を浸けられて気絶から目を覚ましてこうなっていた。

 後ろ手にロープで手首を縛られており、2人の女達が支える水の入った大樽の中身目掛けて屈強な男達に頭を押さえつけられて、何回も何回もガボガボと水を飲まされている。


「うぐぅ……げぇ……! がはぁ……っ!!」

「まだ言わねぇか、このぉ!!」

 男のイライラする叫びで再びリオスは水の中へ。

 後ろ手に手を縛られている為にカポエイラがこんな時に役に立つ……かと思いきや、頭を押さえつけられていると言う事は強制的に前屈みの状態にされてしまっているので、このまま足を振り上げれば水の中に頭から落ちてしまう。

 手も縛られたままなので大樽の中で溺死してしまうのは目に見えていたからだ。

「ぐぅ……がは、ごほぇえ!!」

 水が気管に入って息をするのも苦しいリオスは、このままでは本当に死んでしまうと本能が悟って咳き込みながらも大声で叫ぶ。

「わっ……げほ、あ、かった! い……げほ、げほ、言う……げは、言うから、げぇ……げはっ!!」

「へっ、最初からそう言えば良いんだよ」


 うんざりした様に背後でそう言うスキンヘッドの筋骨粒々な男に対して、リオスは心の中で反論する。

(話す暇さえ与えなかっただろう……!!)

 ぐったりと膝から崩れ落ちるリオスを再度男達が抱え込んで、手近な木箱の1つに座らせる。

「さぁて、それじゃあ水も滴る長髪の男さん……話して貰いましょうか? 何で私達のアジトにこそこそと入り込んで来たのか?」

 短剣をリオスの顔にちらちらと近づけながら、ゴミを見る様な目で紫の髪の女がリオスに問い掛ける。

 どうにかしてこの状況から脱け出したかったリオスだが、現実はなかなか厳しそうだ。

 事実を話すしか無いと思い、素直に魔獣に襲われてこの鉱山跡に逃げ込んで来た事までを話した。


 しかし、この男女がリオスを解放する気配は無い。

 それどころか、非常に残酷な発言と意味深な発言の2つをこの後にリオスは聞かされる事になる。

「ははあ、成る程なぁー。要は養分がそっちからやって来てくれた訳だ」

「……養分?」

 自分から見て左斜め前に立っている、肩まで届く黒髪の男のセリフにリオスは首を傾げる。

「後で分かるわよ。まさかその馬車にあなたが乗っていたなんてね。大方、助けを求めて逃げて来たって所かしら?」

「でも残念だったな、ここはお前を助けてくれるどころか御前の敵しか居ないぞ」

「は?」


 この集団は一体何を言っているのか。

 普段から冷静沈着なリオスをも悩ませるセリフをさっきから吐き続ける。

「何を言っているのかさっぱりだ。あの馬車の事について何か知っているのか?」

「はっ、御前が町でその馬車の荷物の積み込みを手伝っていたって言う目撃情報があるんだよ。と言う事は、その荷物の中身も知っているんだろう? 俺達にも教えてくれや」


 リオスは知らない。

 中身については聞かない事が、次の町まで乗せて行って貰える条件だったからだ。

 しかし、その発言を聞いた紫髪の女が短剣をリオスの頬に押し当てて頬を斬る。

「ぐうっ!?」

「次は頬じゃ済まないわよ」

 自分の頬から血がドロドロ流れ落ちるのをリオスは感じ取りながらも、何とかして隙を見つけたいと思っているがなかなかチャンスが巡って来ない。

「だから……俺は知らない。俺はあの馬車の荷物の積み込みを確かに手伝ったけど、荷物の中身を聞かないのが別の町まで乗せて行って貰う条件だったんだ」

 ……が、ここでリオスはふとある事に気が付くのであった。

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