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48.盗掘団の話

 そのジェイヴァスのリアクションに、リーダーの男と実質的な副リーダーの女は顔を見合わせて頷いた。

「まぁ良いだろう。質問は何だったかな?」

「ここに閉じ込めた理由、それからこの先の待遇に、ここが何処かって事とこっちの目的……だったかしら?」

「おお、やっぱりお前の記憶力はなかなかのもんだな。こいつはこうやって記憶力が良いからな。お前の服装も細かく伝えてくれて助かったんだぜ」

「彼女自慢なんかどうでも良いから、俺の質問にとっとと答えてくれねーか?」

 のろけ話なんて、40歳になっても彼女すら居ないジェイヴァスには何の関係も無いので聞きたい事をさっさと聞かせて欲しいのが彼の本音だった。


 その聞きたい事を聞かせてくれるのはどうやら副リーダーの女らしい。

「まずはここは何処かって言う話だけど……ここは遺跡の近くにある村の牢屋ね。私達の仲間がここには大勢住んでるから色々と融通を利かせてくれるのよ」

「は? 住んでる?」

 こいつ等はこんな所をねぐらにしているのか? と理解が追い付かないジェイヴァスだが、女はさして気にした様子も無く話を続ける。

「ええ。勘違いされちゃ困るけど、ここに住んでいるのは私達の分隊。本隊は私達だからね。今はまだここだけにしか分隊を置いて無いけど、いずれは世界中に分隊を置くつもりではいるわよ」

 そこまでこの盗掘団が大きくなれば、それだけでどれだけの被害が世界中に出てしまうかと言う事がジェイヴァスにも容易に想像出来る。


 地球にだって、世界中に自分達の息のかかった連中を派遣したり支部として常駐させている様な組織は至る所に存在している。

 そう考えてみると、被害が大きくなる前にこいつ等を潰さなければいけないのは明白だった。

 それに、そんな大々的に言える程の分隊をこんな所に置いていたら目立つのでは無いか? とジェイヴァスはその事を疑問形で口に出してみる。

「あ、そう。でもよー、規模が大きくなればなる程それって周りにばれやすくなっちまうんじゃねえのか?」

 そんなジェイヴァスの疑問に、副リーダーの女ははぁ……と溜め息を吐いた。

「貴方、余り知略に関しては得意じゃ無いみたいね。そう言うのは身分を偽ってるに決まってるでしょ? 自分は盗掘団の仲間です、なんて正直に言える筈が無いじゃない」


 リーダーの男も副リーダーの女のそのセリフに続ける。

「色々とカモフラージュが必要なのは重々承知の上さ。だから本隊の俺達は表向きは傭兵団って事にしてあるし、分隊の奴等も表向きには酒場の店員だったり店で商売していたりってなぁ、そうやって欺いてんだよ。ああ、馬鹿なお前には分からねえよな」

「んだと、てめぇ!?」

 完全に馬鹿にされているジェイヴァスだが、リーダーも副リーダーもその点に関しては全く気にしていなかった。


「じゃあ次。私達の目的についてだけど……まぁ、今の話と少し被るけど最終的には世界各国で盗掘活動をさせて貰うわ。このアイクアル王国はその第1歩と言った所ね」

 それを聞いてジェイヴァスは思い出す。

 あの魔法使いの女と戦った後に、彼女の持ち物で出て来たメモの内容にそれらしき事が書いてあったのを。

「盗掘活動自体は分からねーでもねぇが、お前等の目的はもっと別の所にあるんじゃねえのか?」

「それはどう言う意味だ?」

 ジェイヴァスの発言に違和感を覚えたリーダーが問いかける。


「俺さぁ、あの魔法使いの女からメモを発見したんだよ。それとてめぇが持ってるそのバッジのダミーもな。で、そのメモには確か……北の遺跡でどうのこうので、世界が何とかかんとかって書かれてた気がするんだけどよ?」

 そうジェイヴァスが男の問いに答えると、男は苦々しい顔つきをしてチッと舌打ちをする。

「はっ……まぁ、それも答えてやろう。この世界にはとある伝説があるんだ」

「伝説?」

「その昔、滅びた古代文明がこの世界には存在していた。その古代文明は色々な技術を持っていて、魔法を使わずとも遠くに居る人間同士で連絡が出来たり火を起こせたり、他にも色々と今では考えられないテクノロジーの宝庫だったらしい。そして、魔法とその技術を組み合わせた革新的な設備や兵器も開発されていたそうだ。このバッジはその時の名残の1つらしい。他の国で聞いたんだよ」

「他の国……? まさか、世界中で活躍したいって言ってるって事はこのアイクアル王国以外にも、そのバッジと同じ様に色々な宝があるって事か?」

「そうらしい。俺達はまだ見た事は無いがな。つまりお前がどうやってあの遺跡の封印を解いたかは知らないが、こうして手に入れてくれて手間が省けた。感謝するぜ」


 そこで次の質問に答えようとした男だったが、1つ思い出した事があった。

「あ……そうだ。だったらついでにこれも話しておいてやるよ。このアイクアル王国の北にあるソルイール帝国って所で奇妙な噂を聞いたんだ」

「噂?」

 一体どんな噂だよ、とジェイヴァスは男の口から語られるであろうその話に耳を傾けるが、その話はジェイヴァスにとって非常に重要でありこれからの自分の行き先を決定づけるのには十分過ぎるものになるのだった。

「そのソルイール帝国に、魔力を持たない人間が現れたらしい。お前と同じ様にな」

「は……えっ!?」

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