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39.苦いフラッシュバック

 鍵の束と言っても全部で3本しか無い。

 それを1つずつ、自分の口にくわえて確かめて行くと3本目でビンゴだった。

(うっしゃー、これで手かせも外れたぜ!)

 この鍵の束も馬車が倒れた時に騎士団員の服から外れたか何かしたかで落っこちたのだろうと推測しつつ、やっと手かせが外れた事に安堵した。

 これでまた自由に手が扱えると腕をグルグル回しながら喜び、さっさとこの場所から離れてあの町に行くしか無いと決める。

(取り敢えず、あの町に着いたら情報収集をするのが先決だな)

 北の遺跡と言うと、ロシア自体が北に存在している国なので雪が降っているとか寒そうだとかと言うイメージが先行する。

 だがそれは自分の勝手なイメージかもしれないので、今までの突っ走りがちな性格も反省して少しは情報収集に精を出すべきだと考えるジェイヴァス。


 そしてそこまで考えを巡らせた時、不意に5年前の苦々しい出来事が頭の中にフラッシュバックして来てしまった。

「……ちっ!」

 手かせが外れた喜びが一瞬にして吹き飛んでしまうその出来事。

 自分に大きなトラウマを植え付けてしまった原因のその5年前の出来事を頭を振って忘れようとしても、まるで魚が川の流れに逆らうかの様にどんどんフラッシュバックは続く。


 5年前、自分がまだ大尉だった頃にジェイヴァスは国内の紛争を解決する為に戦場へと向かった。

 森の中から奇襲をかけて、一気に反政府軍を叩き潰すと言う作戦を立てて実行に移す手筈だった。

 作戦は特に問題無く進み、いよいよ森の中までやって来た。

「良し、目標は油断している。頃合いを見計らい一気に仕掛けるぞ!」

 上層部の命令に従って自分が隊長となり部隊を率いていたジェイヴァスは、ここでは何時もと違って油断をせずにタイミングを見計らい、一気に潰そうと思っていたのだ。

 森の中に息を潜め、待ち続ける事夜更けの時間。

 暗視スコープで動きを見張り、反政府軍に動きが無くなった事を確認してから野営地に向かって動き出すジェイヴァスの部隊。

 見張りとして動いていた反政府軍の兵士を一気に制圧し、続いて野営地のテントが至る所に張り巡らされている場所へと向かう。


 勝負を短期決着させる為にそれなりの人員も装備も用意して来たので、まず負ける事は無いだろうと思いつつ勝負に出たのだが……。

「……なっ!?」

 テントの中をそれぞれ制圧しようと分担して行動に出たジェイヴァスの部隊が見たのは、何と土嚢や毛布等を使って人間の形を作り、ダミー人形として寝かせてある姿だった。

(見張りは確かに本物の人間だった。なら残りの反政府軍は一体何処に!?)

 半ばパニック状態になりかけるジェイヴァス隊の兵士達の足元で、その時何かが動いた。

「……お前等、下がれえええっ!!」


 大声を上げて退避を促すジェイヴァスだったが時すでに遅し。

 巧妙過ぎる程の擬態をして、テントの周りに伏せていた反乱軍の敵兵達が一斉に起き上がって銃撃をして来たのである。

 ジェイヴァスと何人かの部下は咄嗟に逃れる事が出来たが、大多数の部下達は逆奇襲にやられてしまいそこで絶命する事になってしまった。

「ちっ!!」

 生き残った部下達と共に応戦しながら戦況を確認するジェイヴァスだが、一気に形勢逆転されてしまい不利になってしまったジェイヴァスは応援を要請しようとインカムで呼びかける。

「こちらジェイヴァス隊!! 敵の奇襲で誘い込まれた……応援を!」


 しかし、インカムから返って来た答えは残酷なものだった。

『援軍は認めない』

「は!?」

 この非常事態に上層部は何をぬかしているのだろうか。

「それはどう言う事だ! おい、答えろ!」

『援軍は認めないと言った筈だ。そちらの処理は任せる』

「おい、俺達を見殺しにする気か!?」

 非常事態だと言うのに何故援軍を出してくれないのだろうか。

 こう言う場合は真っ先に援軍を出すのが筋じゃ無いのだろうか?

「ちょっと待て、待っ……くそっ!!」

 通信を強制終了させられてしまい、ここでジェイヴァスもようやく気が付いた。


 自分達は上層部に見捨てられてしまったのだと言う事に。


「しゃあねえ、おい、生きてる奴だけでも連れて帰ってやる!」

 敵の動きをスコープで察知し、木の陰から飛び出して近くの2人を持っているマシンガンで射殺。

 素早く違う木の陰に飛び込んで、近くに居た1人をヘッドショットで始末。

 更にジェイヴァスに気が付いて向かって来た1人の心臓を射抜き、視界が開けた所で固まって出て来た4人を纏めて始末する事に成功。

(ちっきしょう、きりがねえ!!)

 それでも圧倒的に不利な状況に立たされてしまった事に変わりは無いので、まだ反政府軍は大勢居るのだ。

 武器と弾薬はまだまだ残っているので、戦いながら身を隠すジェイヴァスは全く諦めた状況では無い。

 そして、反政府軍は元軍人や傭兵が指揮しているとは言えもともと政府に不満を持っている民間人の寄せ集めの軍隊だと聞いているジェイヴァス。

 それにしては統率が取れているし、しかもこの奇襲もまるで……。

(予想……していた?)

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