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38.忠告を無視した者には制裁を

 ドロップキックで地面に倒れた女の腹目掛けて全力で足を降り下ろし、みぞおちにそのジェイヴァス足が食い込み悶絶する女を今度はサッカーボールキックで蹴り飛ばしてうつ伏せにさせた。

 そしてみぞおち蹴りのショックで未だに咳き込む女の背後から、自分の手かせの鎖の部分を首に引っかける体勢で馬乗りになりながら思いっ切り自分の方に引っ張り上げる。

 上半身はジェイヴァスの身体で押さえつけられているので、起き上がりたくても起き上がれなければ鎖から逃れたくても逃れられない。

「お前達のリーダーはあの紫色の髪の毛の男だよなぁ?」

「うぐっ、がはっ……ぐぇぇ!!」

 自分のの問い掛けに答える余裕の無い女に、ジェイヴァスはそのまま首を絞め上げながらささやいた。

「俺は忠告したんだぜ。あの槍使いの女に伝言って形で、お前等は2度と俺に近づくなってな。その忠告を無視したらどうなるか、これで身を持って良く分かっただろ」


 ささやきながら力強く自分の方に女の首を引っ張り上げるジェイヴァスは、手かせから伝わる感覚で女の力がだんだん抜けて行くのが分かった。

「ぐぅあ、ぐぅ……ぐぇ!!」

 断末魔の痙攣を始めた女に対して、ジェイヴァスは今までよりも更に力強く女の首を引き上げて叫んだ。

「うおぉぉぉぉぉ!!」

 何故だか分からないが、魔法の効果が自分に無かった事で難を逃れたジェイヴァス。

 しかしそうで無ければ、もうこの場で自分が絶命していた事になっていたかもしれないのだ。

 当然、話し合いで解決出来る問題では無いし話が通じる相手でも無い。

 だったらやられる前にやるだけなのだ。


 そう考えながら女の首を絞め続けた結果、気が付いた時には既に女の方が絶命していた。

「ちっ……」

 接近格闘ならば絶対に負けられないと思っているジェイヴァスは、この世界ならではと言える魔法の戦い方に大苦戦した。

 しかし、あの酒場の時と同じで勝った方が強いのが戦場だ。

 そう思いながら、ジェイヴァスは自分が今しがた殺した女の亡骸から金の入った袋を抜き取り、ついでに何か無いかと服をまさぐってみる。

 すると、胸の内ポケットから何かが出て来た。

(何だこりゃ?)

 ごつごつして小さなその物体に、ジェイヴァスが見覚えがあると気が付くのはすぐの事だった。

「……あれっ!?」

 思わず驚きの声を上げてしまうのも無理は無い。

 何故ならその女の懐から出て来た物は、以前あの遺跡で紫色のモンスターを倒した後に手に入れたあのバッジと同じ形のアクセサリーだったのだ。


 だが、何故これをこの女が持っているのだろうか?

 更に女の服を上から下までくまなく調べてみると、今度はズボンのポケットから1つのメモ書きが出て来た。

 文字は全く見慣れない形の筈なのに、何故かロシア語で読めてしまうそのメモ書きの内容はジェイヴァスを納得させるのには十分だった。

(この偽物のバッジと同じ物を見つけ、北の遺跡で色々と試してみる事。そうすればこの世界にまつわる重要な手掛かりが得られるかも知れない……だって?)

 一体何の事だかさっぱりジェイヴァスには見当がつかない。

 でも、そこに書いてある北の遺跡と言う単語については記憶の中に確かに存在している。

(確か、あそこの町からそれこそ北の方に向かって進んで行けば……)


 バトル、拘束、バトルと目まぐるしい出来事が続いていたが、ようやくそれもひと段落した様だ。

 もう目に見える所まで次の町がやって来ている。

 騎士団員達が全員死んでしまった様なので、今のこの状況は逃げ出すのにうってつけだった。

(だけどさっきのあの火の奴で全員黒焦げだし、変装しようにも出来ねえな)

 それにこの手かせもどうにかして外したい所である。

(誰かに切って貰うとするか。でも、このまま町に行ってこの手かせを見られたら絶対怪しまれちまうぞ、俺……)

 どうにかしてここで切って行ければそれが最善の選択なのだが……と辺りを見渡してみると、あるものがジェイヴァスの目に飛び込んで来た。

 それはまさしく、襲撃される時まで自分を護送する為に使っていた馬車の荷車の部分だけだった。

 馬は荷車を繋いでいたロープを荷車から引きちぎって走り去って行ったらしい。


 思い出してみれば、馬車が倒れた時は窓を上にして倒れたのだから、ドアがある部分は地面とキスする形で倒れた筈だ。

 ならば……とジェイヴァスは、倒れたのと窓を割った以外はほぼ無傷かもしれない馬車の中を覗いてみる。

(……やっぱりあった!!)

 倒れている馬車の中には、あの留置場に自分が入れられた時に没収された自分の軍服とバッジが入っている、ヴィスと言う槍使いの男から奪い取った袋だった。

 あのいきなりの展開であれば、自分の荷物なんて当然気にしていられないのは当たり前の事だろうし、自分が騎士団員の立場でもきっとそうするだろうと思いつつジェイヴァスは手かせで動きを制限されながらも、何とか馬車の中からその袋……と、鈍く輝く鍵の束を取り出した。

(こりゃあもしかして……)

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