表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

123/625

60(最終話).決着、そして……

(まだ……まだ、ここで負ける訳にはいかねえんだよ!!)

 素手なら素手なりの戦い方がある。

 斧の刺突と振り下ろし、それからなぎ払いをスウェー、バックステップ、そして横移動でかわしながらもう1度距離を詰め、今度はコラードに前蹴りをお見舞いしようと足を突き出す。

「はっ!」

「ふん!」

 お互いの息遣いがクロスし、ロシェルの右足がコラードの片手にガッチリガードされて掴まれてしまった。

 だがロシェルは咄嗟に機転を利かせて、もう片方の足のバネを使って垂直に飛び上がりつつ身体を横向きに倒し、左足をコラードの側頭部にぶち当てた。

「がへ!?」


 予想外の、そして頭と言う急所の塊の場所への攻撃にコラードも足がふらつき倒れてしまう。

「やあああああっ!」

 そこに雄叫びを上げつつ、ロシェルはダッシュからの膝蹴りを起き上がりかけているコラードの顔面に叩き込む。

「ぐご……」

 再び地面に倒れ込んだコラードの首を掴んで、お得意の首相撲に持ち込んだ。

 クリスピンの時と違って、ノックアウト寸前のコラードは抵抗するだけのパワーを出す事が出来ない。

 首相撲はムエタイ使いであれば確実に修得していなければならない技であるし、達人が首相撲を仕掛ければなかなか抜け出す事は相手もムエタイの達人で無い限り簡単では無い。

 それはコラードも同じで、がっちりロシェルに首をロックされてしまった。


「うら、やぁ、どあ、らっ、だぁぁ、よっ、らっ、やっ、あっ、らああああ!!」

 まず12発を最初に、そこからジャンプしつつ空中で3発、そしておまけにもう1発の合計で16発の膝蹴りをコラードの腹に叩き込む。

「あが……」

 意識が朦朧としているコラード目掛けて、ロシェルは斧を彼の手からチョップで叩き落としてから彼の両腕をそれぞれ片方の手で掴み、アゴ目掛けて頭を両膝で勢い良く蹴り上げてコラードの首の骨をへし折った。

「ぐごがっ……」

 奇妙なうめき声を上げてコラードは地面に背中から倒れ込み、息絶える。

「はぁ……はぁ、はぁっ……はぁ……っ!!」

 この瞬間、あの噴水の時の手合わせのリベンジを達成したと同時に、全ては終わった。

 この事件の真犯人の死亡と言う結果により、爆発事件のロシェルの容疑が晴れたのである。


「うむ、2人とも良くやったぞ」

「あ、ありがとうございます!」

「勿体無き御言葉です」

 その後、定期的にクリスピンから鷹を使って連絡を受けていた大公がレフォールの町にわざわざやって来た。

 しかも1つ目の町に辿り着いた頃にペルドロッグを出発していたらしく、その理由が「私も事件の結末を見届けたい」と言うものだったのだ。

 それを聞いたロシェルとクリスピンは呆れてしまったが、無事にこの事件が解決した事を喜んでいる熱血な大公の姿に何も言う事が出来なかった。

 この世界に来てからおよそ1ヶ月半。

 時間にしてみれば大した事が無い様な長さだが、ロシェルにとってはこれ程中身の濃い1ヶ月半は無かったと言えるだろう。


 そして、大公から激動の言葉を2人が貰ったその翌日。

「国の事は私に任せておけ。団長はその男を頼んだぞ」

「はっ、行って参ります」

「本当にお世話になりました。ありがとうございました!」

「ああ、君も気を付けてな」

 今度は地球に戻る為の手助けと、他国の情勢を探る為に大公はクリスピンにこう命令を下した。

「この異世界人が地球に帰るまでの手助けを頼むぞ。犯人逮捕に大いに貢献してくれたのだ。それから他国の情勢も探って来ると良い」

 この一言が切っ掛けで、ロシェルのこれからの旅にクリスピンが同行する事になるのであった。

 色々と予想外の出来事が続いたが、まずはやっと容疑が晴れた事に安堵しているロシェルと大公から重要任務を請け負ったクリスピンの2人が公国の外へ飛び出していく。


 異世界人の物語は、サードステージへと続いて行く。


 2nd stage(ルリスウェン公国):ロシェル(ムエタイ)編 完


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ