53.掴めて来たリズム
そんな意思だけで身体を動かしてまだ立ち上がって来るロシェルに気がつき、黒髪の女は再び自分の武器の短剣で斬りかかる。
「……はぁっ!」
短剣を再び振り回してロシェルに向かう黒髪の女だが、壁にぶつかった事でロシェルはどんな奴が相手なのかを今一度判断する事が出来、黒髪の女に冷静に立ち向かう。
短剣の攻撃をかわし、そこから短剣を持っている手を掴んで後ろに捻り上げてそのまま黒髪の女の背中に膝蹴りを4発打ち付ける。
「うぐ、あが、ああ、おが!」
今度は黒髪の女の身体の前側を自分の方へと向け、今の膝蹴りで怯んだその黒髪の女の腹に思いっ切りボディブローを入れてぶっ飛ばす。
「あがあ!」
「くっ……」
今度は金髪の男がロングスピアを構えて向かって来る。
しかし茶髪の男と黒髪の女を退けて勢いに乗り始めたロシェルは、この金髪の男の槍の攻撃もブロックしたりかわしたりして対処。
「このお!」
更にそこに黒髪の女がまた斬りかかって来たが、短剣を持っている彼女の右手をロシェルは左手でブロックして、代わりにボディブローを3発黒髪の女に叩き込んで怯ませて退場させ、再び金髪の男とバトル。
金髪の男の槍術にロシェルは頑張って対抗していたが、余り時間を掛ける訳にはいかないのでハイキックで金髪の男のロングスピアを弾き、それによって金髪の男がバランスを崩した所でロシェルは跳び上がって宙返りをしつつ、右足の裏を金髪の男の側頭部にぶち当てる事に成功。
これによって金髪の男は地面へと倒れ込んだが、それはもう手加減無しのバトルがスタートした事を意味する合図でもあった……。
金髪の男が倒れ込んだのを見て、回復した茶髪の男がロングソードを振り回しながら向かって来るがロシェルはこれを冷静に見切って撃退。
次に黒髪の女も回復して向かって来たのでそれに対処して行くが、金髪の男も回復して来て2対1に。
「くっ、はっ!」
更に2対1ならではの戦法と言う事で、金髪の男と黒髪の女がそれぞれロシェルの左腕と右腕をロックして動きを封じる。
「なっ!?」
そこに回復した茶髪の男が全力でドロップキックをぶちかまし、ロシェルは盛大に後ろに転がった。
「おがはぁっ!?」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
胸を蹴られたロシェルはすごく苦しそうだが、3人の方も疲弊している。
「なかなかやるな。だが人数差は俺達が有利だ!」
「一気にこのままカタをつけようぜ!」
「まだやりますか?」
黒髪の女にそう問われたロシェルはゆっくりと立ち上がり、3人に向かって今茶髪の男にやられたばかりのドロップキックで突っ込む。
だがそのロシェルのドロップキックに合わせて3人もドロップキックを繰り出す。
真ん中からドロップキックを繰り出した茶髪の男だけがロシェルのドロップキックを食らって倒れ込み、金髪の男と黒髪の女はロシェルにキックを食らわせる事で再びロシェルを地面に転がす事に成功。
「はっ!」
金髪の男がロシェルに向かうが、ロシェルは倒れ込んだままの姿勢から金髪の男のキックを上手く自分の足で受け止めつつ逆に腹目掛けてキック。
そこから素早く立ち上がって次に黒髪の女の短剣を上手く手でいなし、更に黒髪の女に掴み掛かって彼の身体を盾代わりに使い、横から向かって来る金髪の男のロングスピアと茶髪の男のロングソード、それとキックでの攻撃をガードする。
流石に金髪の男も茶髪の男も仲間を傷付ける訳には行かないので、ロングソードで攻撃を出せない分キック技を繰り出すが、これをその黒髪の女を盾にして上手くガードして攻撃と防御を同時にする。
更にガードしつつ茶髪の男にも後ろ回し蹴りをしっかりとお見舞い。
「あが、うぐう!」
黒髪の女は茶髪の男のキックを背中に2発連続で食らい、衝撃で黒髪の女の身体から力が抜ける。
それを利用して金髪の男の方に黒髪の女を突き飛ばしたロシェルだったが、視界の隅に茶髪の男が下段回し蹴りを繰り出そうとするのが見えたので咄嗟にロシェルはジャンプし、きりもみ回転のキックをさっきのお返しとばかりにそのまま黒髪の女の胸に突っ込ませ、金髪の男ごと地面に倒す事に成功。
「ぐふぁ!」
「おああ!」
それを見た茶髪の男は回し蹴りをかわされた事もあって素早くロシェルにロングソードを振り被るが、それをしっかりロシェルは見切って腕で茶髪の男の腕を弾いてガード。
そしてそのガードした腕を素早く茶髪の男の右腕の下を通して首に回し、自分の右腕で思いっ切り茶髪の男の首をロシェルから見て奥に押し込んだ。
「ぐがっ!?」
弓なりに反った身体の茶髪の男に、今度はそこから左後ろ回し蹴りをロシェルが繰り出して茶髪の男の顔面にクリーンヒットさせる。
「うごお!」
3人と戦うリズムが掴めて来たロシェルは、ここから一気にラストスパートをかけるべく覚悟を決める。
(終わらせなきゃな。何時までもダラダラ付き合っていられねーんだよ!!)
人数で有利な相手側3人を片付けるには、もう長い時間はかけていられない!!




