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男が最弱な異世界。それでも最強を手に入れる。  作者: CHIKAY
Lv.0 tone ~始まりの異世界~
2/62

第1色 出会い☆

わかりにく部分を訂正しています。



 こいつが食べていたのは人間だった。


「おっ......おぇ...ゴホっ」


 突然、吐き気が込み上げる。

 膝を折り、胃の中の全てを吐き出した。

 頭の中が真っ白になる。

 たった今、目にしたモノが脳に焼き付いて何度もフラッシュバックする。


 この音も、臭いも、全てが狂っていた。


 全身から力が抜ける。入れようとしても全く入らない。

 胃が空になっても、吐き気は収まらない。

 一緒に吐き出してしまった空気を求めて、陸に釣り上げられた魚の様に必死に口を動かしていた。

 全身から溢れ出す冷や汗。体感した事がない寒気が全身を支配していた。

 吐き気は収まらない。息も出来ない。抗えない感覚に、あるがままに委ねてしまう。


 そして--


 妙な静けさが心臓を締め付けた。

  耳に入っていた、咀嚼(そしゃく)音が止んでいる。視界を上げると、化物がこっちを見ていた。


 目は血のように赤く、口は大きく横に裂けていた。人では、ありえない大きな 牙がある。

 新しい獲物を、見つけた絶対的な強者の目。

 薄らと笑っているように見えた。

 食われる。直感的にそう思えた。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 意識より先に声をあげていた。

 膝には力が入らない。体を捻り、手を使い、何振り構わず逃げ出す。


 やばい、やばい、やばい、やばい。


 化物から目を反らし、背中を見せ、足を引きずりながら逃げる。

 もう一度たりとも見たくない。

 怖い、怖い、怖い、怖い


 ドン


 突然、体に強い衝撃が入る。

 何かに足を踏み外し、前のめりに転ぶ。


 (な、何が起こったんだ...?)


 自分に、ぶつかった何かを本能的に探ってしまう。

 よく見た事があるもの。コレは良く知ってるいる。

 足下には、さっき奴が食べていた。

 人の腕だった。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ」


 突然の連続で、一瞬思考は真っ白になる。

 足腰は立たない、手に力を入れ後ろに下がるが--

 逃げ出すには、遅すぎた。

 ゆっくりと化物が歩いてくる。

 右手には長く槍の様な石の塊を手にしていた。

 化物の恐怖から後ろを向いて逃げだしたいが、もう目を逸らす事は出来ない。

 奥歯が震え、声になっていない声と、涙が出てくる。


 (やばい、死にたくない、怖い、怖い、怖い)


 死にたくない。

 直感的に分かる。絶対に勝てない。殺される。

 しかも、喰われる...。

 俺はまだ死にたくない...死ねない。

 姉さんを見付けていない...。

 震える足を思いっ切り殴る。


(俺はまだ死ねない、嫌だ、動け、動け)


 一歩、一歩、結末が決まっている様に、ゆっくりと歩いている。

 痺れもあるのか言う事聞かない、自分の体じゃないみたいだ。


(クソ、クソ、クソ)


 目の前で歩みを止める。

 見下ろす視線

 振り上げる石の塊を凝視したまま。


 絶望と共に--

 俺の視界は--白色に染まった。





『バカァ野郎ーーーーーっ!!』


 白くなった視界から、突然の大きな声で、意識が切り替わる。耳を塞ぎたくなるような、大声が聞こえた。

 視界には、白い空間が広がり周り一面何もない白いだけの空間。


『おい、馬鹿野郎!!』


 声のする方に体を向ける。

 俺の背後には、大きな瞳の特徴的な、少し青みのかかった紫色のロングヘアで、瞳にそって切られた前髪が特徴的な、スレンダーな美少女?幼女?が立っていた。


『おいコラっ!聞いてんのか?無視すんな!!』


「す、すいません!」


『なんで!?お前は動かないんだ?死ぬでしょ!!普通っ!?あんな神格一歩手前の様なバケモノなんか今のあんたには絶対に勝てないのよ!!ねぇわかるっ!!?』


「えっ?えっ?すいません」


 剣幕に、押され考えがまとまらず、答えが出てこない。

 化物はココには、いない。さっきまでいた洞窟でもない。食べられた人も--


 さっき起こった事が全て夢なのか、今が夢なのか?

 あれだけあった、恐怖心が徐々に薄れていく。

 目の前には、あどけない美少女。

 死への絶対的な恐怖が、嘘だったかの様に、ゆっくりと落ち着きを取り戻していた。


『あ、や、ま、んなっ!!先ずは、あんたがこのピンチを乗り越えない事には私も死ぬのっ!!わかってんのっ!?こんな暗くて、狭い場所はもう嫌よ......絶対に嫌っ!!』


「...私も??」


『そうよ、アンタが持っている神剣あるでしょ?あれ私っ!!』


「えっ?真剣?神剣?......えっ?もしかして、あの木刀が?」


『バカっ!木刀言うなっ!!そうよ、あれが私っ!一応私も神様なのよ!!付喪神(つくもがみ)って知ってる?』


「えっと?長年大切にしている物に神様が宿るっいうものですね?」


『そうそれっ!!一応私は、木で出来てるけど、中身が少し特殊なのよ!!長い年月を経て、神に至ったわけよ!!』


「は、はぁー」


 何を言っているんだ?

 しかも自分で木で出来てるって言ってます。


『そ、れ、でっ!派遣されて来たのが、アンタの家の裏山だったわけ!!あの場所が凄く特殊な地場でね。異空間に繋がる穴が沢山あるの。その地場を抑える為に私達三神は、上司に派遣されて来たんだけど......ある日あんたのお姉さんがお社に張ってある私達の結界を打ち破って入ってくるからビックリしてさぁ「僕の姉を知ってるんですか!??」』


 思わぬ所で姉の話がでて、話を遮る。


『び、ビックリしたぁ...知ってるわよ!』


「ど、何処に居てるんですか!!?」


『多分この世界の何処かに居てるとは、思うけど......』


「多分?」


『そうよ、多分!!この世界には来てるでしょうけどね。連れが一緒に行動を共にしてると思うけど...』


「探しに行きます!!」


『待ちなさい!!いや、いやここは、神術で広げた亜空間だから!!一時的に、あんたの精神体に直で話してんの!!』


「そ、そうなんですか?」


『そうっ!!あとアンタ?このままだと確実に、殺られるわよ!』


「あっ」


 殺人現場。さっきまでの事は夢ではない。

 そして今も--

 化け物の姿を思い出し、恐怖が蘇ってくる。


『さっきも言ったけど、あんたは勝てない。

 背後から一撃入れても絶対に一撃では落ちないわ。下手したら傷一つ、つかないわね。神格化一歩手前の規格外のバケモノなんだからね』


「そうですか......。神格化って何なんですか?」


『それは後で話すけど......。簡単に言うと、神格化って言うのは八百万神(やおよろず)になる事よ。

 人が業を重ねて神に至る。努力すれば人は神に近付ける。この法則が神格化。人だから神格者ね。でもアイツは悪業を重ねる化け物。モンスターだから《祟神》になるけどね。

 それの至りかけ、正真正銘の化け物なのよ。

 って言うかアンタなんでそんなにツイてないのよっ!!普通こんな場所に《ヨビコミ》されないわよ』


「呼込みですか?」


『たぶんここは、まぁまぁ難易度の高いダンジョンだと思うのよね!

 それが、アンタみたいなヒヨッコを《ヨビコミ》するなんておかしいのよ』


「ヒヨッコって...」


『ふ、つ、うは、神格化した《神格者》や《成りかけ》たやつしか挑まない難易度のハズよ!ダンジョンは、エサを求る為に、バケモノを造り、人を襲うと言われているわ』


「何でそんな危険な所に、挑むんですか?」


『それは、《神に至る為》によ、絶神様が、与えた試練を乗り越える。

 私達や八百万神の世界の義務なの...ってそんなのは、どうでもいぃーっ!!』


「は、はいっ!」


『マズは、色々聞きたい事もあるでしょうけど、此処を脱出してからね!!

 アンタ体が痺れてるのよね?』


「はい!全身が、痺れてまともに歩けない状態です。アイツから逃げ切れるかどうか...」


『...そうか。典型的な《魔力》酔いね!《ヨビコミ》されたのが、切っ掛けで、力に目覚めたのね。先ずは1つ目の《恩恵》は、決まりね』


「恩恵?ですか?」


『そうっ!《恩恵》は色々あるけど、私みたいに神化したモノが加護して、与える力の事よ!

 私の力では、3つが限度ね(しかも私は、至りたてだから大した事ないやつだけど)』


「すいません、有難うございます。

 それで、どんな恩恵なんですか?」


『そうね。一つ目は、身体の回復力を高める恩恵よ。

 自己治癒力の強化、そして直ぐ動けるように即回復付き!!』


「すいません、助かります!動けたら何とかなると思います...」


『何とかって大した自信ね。

 アンタはタダの人間なのよ、油断すると確実に死ぬわよ』


「はい、知っています。

 目は、良い方なので、動ければ、本当に何とかですが、避けれると思います。

 恐怖心もありますが、何とか、何とか走れると思います」


『ふーん。成程ね。無謀の様で考えは、あるようね。わかったわ。その自信買ったわっ!!

 アンタの目を強化してあげるっ!!

 それでもっと生存確率があがるわねっ!!

 ...後は、運ね』


「運ですかっ!!?」


『そう!運よっ!壊滅的に悪いアンタの運を+に少しでも持っていかないと、このままペシャンコにされて、即死亡よっ!!』


 そこまで言い切られると、何かヘコむな...。

 ついつい笑いが、込み上げてしまう。


『アンタ何笑ってるのよっ!!

 私のプランは、完璧なのよっ!!

 コレで死んだら承知しないからっ!!祟ってやる!!』


「それは駄目でしょ!?頑張りますよ」


 先ずは、生きていないと何も意味がないから...。

 震えて何ていられない。まだまだ死にたくなんてない。必ず乗り越える...。


『アンタ名前は!!?』


 そう言えば自己紹介してなかったな...。


「すいません!!近藤雪って言います」


『ふーん、女の子みたいな名前ね?

 顔も女の子みたいだし、雪の様に肌も白いしね?だから?』


「違いますよ。正真正銘、男です。

 良く言われますけどね......。

 雪の降る日に...つけられたらしいです」


『ま、いっかっ!私は、トーカよ!宜しくね♪

 んじゃー契約しよっか!!こっちに来てっ♡』


 (今から殴られるのだろうか...?)


 セクシーな声を出してるつもりなのか?

 昔見た、カンフー映画で......手を招く様に動かす仕草......挑発??

 言動とまったく結び着かない。


 でも、一応。手が余裕で届く範囲にまで移動する。


『手を貸してー』


 俺の手を、トーカさんが手に取ると...。


 ガブッ「痛っ!!!」


「な、な、何するんですか!!?」


『何って契約よー!手の甲を見てみなさい!』


 右手の甲には、薄らと血が浮かぶ歯型と、血の様な赤色の家紋の様な柄が浮かんでいた。


『これで契約終了よー!!んで次は、恩恵ねっ!!ユキっ!しゃがみなさい!!』


 言われるがまま膝を折り、しゃがみこむと、

 頭を抑えつけられて、顎を上向きに無理やりあげさせられ。


 キスされた。


「う、う、うぅ」


 抵抗にならない声をあげ、肩をタップする。

 頭を抑えつけた力が強すぎる為...逃げれない。


『...黙れ...殺すぞ』


 拒否は、許されませんでした。

 1分ほど(体感では、もっと長い)戦慄のディープなキスから開放されて、力を抜き項垂れる。


『ぷはぁー!!...良し!!これでユキとの神器契約プラス恩恵を与えれたわよ!!

 ...って何よアンタこんな美女にキスされて文句あんのっ!!?役得でしょっ??』


「ファース『黙れ』はいっ!有難うございます!!」


 ドスの効いた少女から発する言葉に、初めての経験の余韻は相殺された...。

 切り替えて、右手にある違和感があるを撫でながら、疑問に思う事を投げかける。


「あの...大太刀のように長いボクト......神剣を使っても折れませんか??」


『私っ!!?絶対に!折れないわ。

 ...1度だけ欠けた事は、あったけど...もう2度とそれはない、どんな業物にも負けないわ。

 木で出来た名刀と思いなさい!

 私とユキの《契約神紋》が右手に刻まれているわ。

 神紋の意味は《栄光》よ!

 この私を神器として使うのだから、死ぬのは、絶対許さないからねっ!!』


 最高の笑顔で、かけてくれる期待に応えて、微笑み返す。


「最大限に足掻いてみせます。こんな所で死ぬ訳には、いかないので...。

 先程の醜態は、挽回します。」


『良し!いい顔ね!!では、さっきの場面に戻すわよ?』


「...はい!お願いします。」


『一緒に栄光を掴みましょう』


 手を握り、微笑むトーカ。

 栄光か......俺は一握りの栄光だけでいいけど。

 力を貸してくれるなら、必ず乗り越えてやる。

 怖いけど......本当に怖いけど、必ず--

 

 白い空間から徐々に視界が切り替わった。

ここまで読んで下さり有難う御座います。

ご意見、ご感想、誤字脱字など、何でも大歓迎です。

これからも宜しくお願い致します。

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