第0色 始まりの異世界☆
初投稿になります。
ご意見、ご感想宜しくお願いします。
2016/09/05題名と内容を編集しました。
頬に触れる冷たい感覚で、朧気な意識から次第に目覚めていく。うつ伏せの息苦しさから逃れる様に少しだけ体を動かす。
全身に鋭い痛みが走る。
血液が行き渡るような感覚。体は痺れている......みたいだ。
頬に感じる冷たさは、温かみがまるでない。冬のアスファルトのように冷たい地面。微かに開けた瞼から覗く視界はボヤけていた。
(地面の上で寝ている?)
体を起こそうと手足に力を入れるが上手く力が入らない。痺れる手足は麻痺してなかなか動けない。無理矢理に力を入れて動かそうとすると、再び全身に鋭い痛みが走しった。
横向きになる様に、痛みを我慢し体をゆっくりと少しずつ捻る。意識もまた寝惚けている様な曖昧な中、土の水分で湿ってしまった服は不快感しか感じなかった。
何も出来ない体制のまま数分。少しずつ体の痺れもマシになっていく。
今の現状を探るべく寝惚け眼で周りを見渡していく。
(なんで......。俺は地べた何かで寝ていたんだ?)
周りを見渡すと、少し広い洞窟のような湿っぽい場所で所々草が生茂っている。ほの暗い岩むき出しの洞窟。そんな場所。
体を少し起こし俺が寝ていた場所にも草が生えていたらしく、手で触れてみる。洞窟特有のジメジメした感じで、少し地面にも水気を感じる。これが原因で濡れたみたいだ。
お気に入りのスニーカーに、まだ買って間もなない真新しい濃い色のデニム、トレッキングのパーカーの中に、白いTシャツ。色んな場所に、土が付いているが怪我は見当たらないし、体は痺れていたが怪我特有の痛みは感じなかった。
ゆっくり少しずつ体を動かし慣らしていく。
少しだけ頭痛がする。頭をどこかで打ったのかもしれないと思い、触ってみるがコブも打ち身も分からなかった。どうやら只の頭痛で、怪我はしていないみたいだ。
ゆっくりと洞窟の岩壁を背にし、アグラをかける状態になる。
周りを見渡すと、大きめのリュックが近くに落ちていた。
あれは、俺の持ち物だ。
(何故俺は、こんな所で寝ている?)
こんな場所にいる事さえ思いだせない。
(俺は、今朝......)
☆
姉が失踪して、もう半年の月日が流れていた。
警察は動いてるとは、いっても結果は出ていない。あらゆる手がかりが消失したかの様に存在しない。今の近代化した社会では、ありえないと思う。駅や商店街の防犯カメラにも、姉は写っていなかった。大学生だった姉は、早朝電車通学の為駅に向かう。その中で片田舎とは、いえコンビニやガソリンスタンド、商店街、その全てに姉は写っていなかった。携帯電話の最後の通信も自宅付近で途切れている、近隣での情報も皆無だった。
容姿端麗で人柄も良かった姉だが、人攫いであったり犯罪に巻き込まれる心配は正直あまり考えられない。祖母に習っていた武術では、勝てた事がないし、得意の柔術では、有段者の成人男性3人を軽くぶっ飛ばしていた。不意打ちでも反応反射反撃できる。正直女か?と疑った程だ。生半可な犯罪者だと返り討ちだろう。
色々思い返す所が多々ある問題ありだった姉なので、彼氏も居たと言う話は聞いた事がないから駆け落ちも当然ない。恋愛関係のゴタゴタでもないと直感で断言出来た。
生きている家族は、俺と姉と妹の3人しかいない。父と母は10年前に飛行機事故でなくなった。遺品すら見付かっていない。小さかった僕等は、疎遠状態にあった母方の祖母に引き取らた。母が結婚するにあたって疎遠になったらしいのだが、祖母にはとても大切に育てて貰った。
そんな祖母も二年前に他界した。
少し不便ではあるが、山奥に佇む一軒家で家族
3人で暮らして居た。姉は俺達を誰よりも大切に想ってくれていた。そんな姉が、家族を残して何処か行くはずがない。居なくなる筈がない......。
半年間毎日、そう考えていない日はなかったと思う。
そして失踪して丁度半年。夢か寝起きだったかは正直分からないが、突然ふと昔のイメージが頭に過よぎった。
(もしかしたら姉さんは裏山の神社に行ったのかもしれない......)
昔よく3人で遊んだ神社。朝早くから暗くなるまでずっと裏山の神社で遊んでいた。祖母は良く「1人では絶対に行ってはいけないよ。《神隠し》にあうからね」何度も、何度も言っていた事を突然に思い出した。
何故今まで気付かなかったのだろう。完全に失念していた。あの日姉さんは神社に行った。ただの感だけど、何故か確信が持てていた。
妹に書置きして最低限の登山の準備をし、裏山に入る。神社以外にも裏山全体も捜索するかもしれない。またなんとなくだが......準備に余念があってはいけない。そんな気が何となくしていた。
1時間ぐらいかけて裏山を登る。子供の頃の体力は凄まじい......高校生の余り有る体力でも息が切れてしまう。子供の頃の記憶を探り探り登っていく。
そして肩で息をしながら、やっとの思いで辿りついた神社。山道や階段などもない。裏庭にある獣道を登りきると其処にはポツンと神社があった。何の為に誰の為にある神社なので有ろうか?階段も賽銭箱すらもない。一般的な一軒家程の大きさのお社と鳥居があるだけ。だけど不思議とぽっかりとこの空間だけ草木が生えていない。子供の時は何も感じなかったが、手入れが行き届きすぎている。
不自然に思いながら、ゆっくりと木戸に手をかけて、開こうとすると--
(痛っ!!)
木戸から弾かれるような感覚と、電気の様な痛みが走った。
(木造建築に静電気とかありえないだろ?なんだ今のは...)
恐る恐るもう1度木戸に手を掛けようとすると--
(開いてる...)
完全に閉まっていたはずの木戸が、手を触れる前から、少し隙間が開いていた。
子供の頃から遊び場として何度も訪れたこの場所。来る度に何度も扉を開こうと手を触れても、ビクともしなかった扉が今は完全に開かれていた。
隙間からは真っ暗で何もみえない。
恐る恐る扉の持ち手に手を伸ばす。
(さて、何があるのか?出てくるのか)
普段から好奇心旺盛な性格だが、姉を搜索していた不安な心を置き去りにして、子供の様な好奇心に満たされていた。
そして開ききった扉の中には--
(祭壇?)
仄暗い広い空間に薄らと見えるのは、2畳ぐらいの大きさで木製の質素な祭壇があるだけだった。
(仏像?ではないよな......何だこれ?)
祭壇には、やたらと大きい黒色の木刀?と金属らしき物で出来た円形の鏡?に何も置かれていない台座があるだけだった。
(なんなんだ?この異様に長い木刀は......)
祖母は由緒正しい武家の家系らしく、蔵には、実際に仕様されていた武器が数多くあった。古武術の師範だった祖母の影響で、幼少期から高校に入るまでは教わっていた。実際に多くの武器を武家の嗜みと言うことで扱わさせてもらったが、この木刀は普通の刀より圧倒的に長い。全長2mぐらいありそうな大太刀。大太刀だけど実家にある物もこんなにも長くはなかった。
この木刀は不思議と切刃も実際の刀のように鋭く、反りもある。柄の頭には黒い手貫緒があり、鍔は無いが、実刀の様な作りだった。
(何か特別な物なのだろうか?)
無意識に祭壇に手が伸びていた。
普段は絶対に祭壇に飾られた物など触る筈もないのに、その時は好奇心なのか何なのか......。
気が付くと祭壇の木刀に手を触れてしまっていた。
また突然、扉を開いた時より更に強い電気の様な痛みが走り--
僕の意識はそこで途絶えていた。
--そして、突然この場所に倒れていた。
(何がどうなって、あの場所から、ここに来たんだ?)
現状の確認の為に、まだ痺れが残る右腕を無理に上げる。
腕時計には、16:48となっていた。
(意識を失って......それからこの場所に移動させられた?)
だいたいの時間だが神社に着いたのが12時ぐらい、少なくみても4時間程経っている。
この洞窟に、見覚えはないし、こんな場所があるとは祖母や姉にも聞いた事はない。
そう考えると全身に感じた事のない恐怖心が宿った。
(ビビってるだけじゃダメだ。まずここから出ないと...)
誰かに襲われた?スタンガンの様な物で気絶さされたかもしれない。トラップ......。
頭の中では色んな妄想に駆られるが、何もしないで待っていたら絶対に良くはならないだろう。
まだ少し痺れる体を岩壁で支えて立ち上がる。痺れた体には負担しかないが、手を伸ばし荷物を引き寄せる。リュックは痺れた体では更に重たく重量を感じさせた。
荷物を退けると下敷きになっていた木刀が目に入る。
(この木刀のせいで、俺は......)
木刀に触れた瞬間から記憶がない。何か仕掛けがされていたのか?気絶する程の電流に襲われた事だけは体は覚えていた。
(もしかしたら姉さんも......)
嫌なイメージだけ頭に鮮明に映し出される。感じた事のない恐怖心が負の連鎖をおこしていた。「こんなもの......」っと木刀をそのままにして歩き出す。
でも--
(やっぱり気になる)
振り返り見る地面に置き去りにした異様に長い木刀にはただならない違和感があった。
(やっぱり持っていくか...祭壇に飾ってあったし、放っておくと罰が当たりそうだ)
心の中にある違和感に正直になり頭の中で答えを出す。「仕方ないか」と呟きながら、膝を折り木刀に指の先を少しだけ付ける。
(電撃はこない.........な)
少しビビリながら触れていた指先をしっかりと付け、痛みのトラウマを乗り越え確認する。
そして、右手で持ち上げると--
「重っ!!!」
(木で出来てますよねっ!?いくら長いって言っても限度あるでしょ?)
あまりの重さに一瞬にして素に戻る。どう考えても邪魔にしかならない一品。普段なら絶対に手も触れないし、見向きもしないだろう。
でもこれ以上の罰が当たるのは正直ゴメンだ。
(神様ごめんなさい)
どう考えても、これは杖にしかなりません。
心の中で居てるか分からない神様に謝罪さして、壁に添えていた片手を木刀の柄に添えた。
出口に向かう為に、無駄に重い杖をつきながらゆっくり歩いていく。広い洞窟の出入口は1つだけで、他には何もない。岩の割れ目や光源すら見当たらない自然の景色は、まるで鍾乳洞の様な洞窟の内部を思わせた。
(何でこんなに明るいんだ?)
洞窟の周り、その空洞を一面に薄らと見える程の光は存在していた。でも何処にもその光源は見当たらない。
(ありえないよな......)
普通ならありえないが、今はその方が有難い。何故だか理解出来ない事がだけど、この恐ろしい違和感は無視して歩ませてもらう。
出口の先は、学校の廊下程の広さの洞窟が続いていた。ゆっくり慎重に犯人に鉢合う可能性を意識しながら進んで行く。その一本の道を進み、また新しい広めの空洞に入った。
今度の空洞は先ほどの場所より少し大き目だ。でも今回は出入口は2つある。
その前に--
(人だな......)
デカイ。少し遠くからみても分かる。横に大きな体系はかなりの肥満体型。
(あいつが俺を拉致った犯人か...)
俺を攫った犯人。何か隠れる物があれば様子を見てもいいかもしれないが、今は犯人のでかい背中にゆっくりと近付く...。
犯人は背中を見せ無防備な姿だ。何かに集中しているのか?しゃがんだ姿勢で振り向く素振りすらなかった。
(こいつは、何をしているんだ?)
夢中ならそれでいい。ゆっくりとどちらかの出口に行けばいい。足音を極力出さない様にして、呼吸も浅くして気配も消していく。
重心を左足に残したまま、右足をかかとから爪先にかけて段階的にゆっくりと触れさせていく。
昔お婆ちゃんに教わった忍び足。悪さ以外に使う機会が皆無だったけど、昔の感覚を思い出して交互に慎重に繰り返し近付いていく。
10m程近付いたこの場所からでも分かる。相手は多分俺より強い。真正面だと必ず負ける。まだ30mは離れているし、目も合わしていないのに、肌に触れる気配、感覚は物語っていた。
不気味な相手......でも犯罪者には容赦しない。不意打ちで必ず無力化する。
段々と近付いていき、少しずつだが容姿が確認出来るた。2人分はありそうな背中、上半身は裸だ。下半身は分からないけど--
(こいつ変態か??)
赤黒い肌に、体重は150キロを楽に超えそうだ。それに行儀悪く何かを食べている。咀嚼する音は子供が夢中で食べるそれだった。
進んだ道は一本道だった。犯人は間違いなくこいつだ。俺に電撃をくらわせて気絶させた。
だったら--
背後から襲う。必ず一撃で決める......。
杖に使っていた、冗談みたいに重たい木刀を上段に構えて近付ていく。初めは無駄でしかない一品だったが、何も凶器を持ってない僕が格上の相手に何もないのは正直無謀だ。でもこれで殴れば本気で普通に死にそうだ。
普通は......でもこいつの気配は普通じゃない。殺らないと殺られる...。絶対に容赦しない。
1m、2mと徐々に間合いを詰めていく。
首を叩く。絶対に首を叩く。死ぬかもしれないが首を叩く。首を...?
異臭がして、顔をしかめる。
血なまぐさい様な腐った物の様な臭い。聞こえる咀嚼音と異臭が、興味をそそらせる。
アイツの体臭なのか?食っているものなのか?
少し方向を変えてアイツが食べている物を見る為に危険を犯していく。
そして--
アイツの体の隙間から食べていた「モノ」が目に入った。
地面は......散乱していた。
一面は、赤く染まり--
こいつが食べていたのは人だと分かった。
少し編集させて下さい。
内容はあまり変えないつもりです。
もっと濃く分かり易いモノに書き換えていきます。
宜しくお願いいたします。
編集したものは、題名を変えて☆を付けております。