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初クエストで①②

 怪物……いや、シュリーと【クラウン】のギルドホームへ行くと掃除道具をそろえて家の前で並んでいた。全員だ。現実の時間だと12時を過ぎているというのに、全員がきちんとそろっていた。


「うちの新人がやらかしてしまったみたいで本当にすみませんでした!!!」


 ゲンさんがシュリーに頭を下げていた。ちょ、60代のおじいちゃんになに頭下げさせてんだ!俺が悪いのに!


「師匠は悪くありません!俺がすべて悪いんです!俺のせいでこうなってしまったんです!」

「じゃが、わしがあそこから落とさなければこうならなかったんじゃ。ワシの責任じゃ」

「違いますよゲンさん!」


 そう言ったのは、アツヤだった。


「俺たちが着いて行けばこんなことにはならかったんだ!俺たちの責任でもあります!」


 ギルメンの人たちもなんで俺のために……!俺はみんなが初めて一つになれた気がして思わず涙があふれ出してしまった。


「みな……ざん……、本当に……ずみまぜん……でしだ……」

「本当に悪いと思ってるんじゃろ?」

「はい……」

「なら、行って来い。掃除。頑張るんじゃぞ」

「はい……って……え?」


 師匠の言葉に思わず聞き返してしまう。


「みんなで行くんじゃ……?」

「何言ってるんじゃ。やらかしちゃった奴が行くんじゃぞ。当たり前のことじゃ」

「え、でも、みんなで行くって雰囲気じゃ……」

「雰囲気じゃ雰囲気。シュリーにも言っとくんじゃ。師匠たちは関係ないから自分一人でやるって」

「え、えええええええ!!!そんな!!!」


 俺の流した涙を返せ!くそ、人間ってそんなもんなのかな……。俺は仕方なくシュリーに言うことにした。


「あのですね……。師匠たちは関係ないので俺一人で行きます!!!」

「……ちょっと待っとけ」

「は、ははあ!!!」


 シュリーが100mぐらい先でなんか暴れてるけど、俺は知らないふりをした。それから5分後……。


「「「やらせていただきます!!!」」」


 師匠と他のギルメンたちはかなりボロボロになってた。シュリーだけが傷一つ付いていない。


「当たり前だ。逃げるなど断固許さんわ!!!」

「「「はいぃ!!!もう二度とこんなことこしません!!!」」」


 これでやっと一つになれた気がした……。いろんな意味で……。

 シュリーのギルドホームに着いたのは、12時半ぐらいだった。


「ギルド【乙女戦神おとめせんじん】……」

「あぁ、シュリー率いる女プレイヤーだけのギルドだ」


 そう答えたのは、ドSのタカトだった。ドSのタカトでも顔が青ざめている。それより疑問に思ったのが……。


「あの……、シュリーって女なんです……か?」

「あぁ、俺もビックリしすぎて5分ぐらい声が出なかった」

「………」

「お前もか……」


 本当に声が出なくなったよ……。女とかありえねぇ……。


「しかも、リアルでは現役プロレスラーって噂もある」

「あ、それは事実だと思われます。だって技かけられたもん!!!痛かったもん!!!」

「しかも少数の集まりのくせにギルドランキング上位だ」


 まぁシュリー 一人でもランク一位にいけるんじゃないかと俺は思うが……。そんな話をしながら、俺たちは【乙女戦神】のギルドホームに入って行った。



 俺の目の前には今、リンがいる。そして、レムさんがいる。この状況に俺は開いた口がふさがらない状態だった。


「あ、うおくんじゃん」


 とレムさん。


「魚くんって呼ばないで!てか、なんで……リ……ボフエエエ!!」


 なぜかリンからの右ストレートが脇腹にクリティカルヒットした。ちょ、いきなりなに!?


「何で……リしか言ってないじゃんか……」

「いや、リアルネーム言われそうだったから。念のためね」

「念のためで殴るな!!」

「痛み感じないでしょ。とにかくリルカって呼んでよね」

「痛いよ!めちゃめちゃ痛み感じますけど!!」


 こいつは、なんでも暴力だ。ドMのノムから肩をポンポンと叩かれる。同情されてますね、はい。なぜかノムに同情されるのだけは嫌だ。


「改めてだが、なんでリルカとレムさんがここに?」

「いや、それはこっちのセリフよ。てか、あたしの所属してるギルドがココだし。シュリーとレムは、βテスター時代からの仲間だし。てか、当たり前じゃん?」

「ってことは、お前強いのか?」

「当たり前でしょ」


 そう話していると、横からゲンさんが入ってきた。


「お主、リルカちゃんと知り合いじゃったのか?」

「あ、妹です」


 その一言に全員が唖然としていた。


「なんでそんな驚くんですか?」

「あ、そういえばお兄ちゃんは死んだことになってたんだ」

「おい!人を勝手に殺すな!!」


 なぜ、俺が死んだことになってしまったのかは面倒なので聞かないことにした。


「おい、さっさと掃除せんかい」

「「「は、はいぃ!!!」」」


 ギルドメンバー全員が一斉に仕事に取り掛かった。その動きに無駄がない。もちろん俺も。だが、リンが俺を見ながらニヤニヤしているのが気がかりだ。


「ねぇ、この辺も掃除してくれるかなぁ?魚くん」

「魚くん言うな!」


 くっそぉ、こき使い始めたぞあの妹め。


「あ、そこ終わったら次こっちねぇ魚くん」

「……魚くん言うな」


 こんなやり取りが十回以上続いた。ギルドの掃除が終わったのは、午後2時過ぎだった。身体に疲れはないものの精神に疲れを感じる俺は一旦ログアウトして休むことにした。


「みなさん、今日はすみません……」

「いいんじゃいいんじゃ。それより、この後はどうするんじゃ?」

「俺は、一旦落ちて休みます」

「そうか、この後は来れるかの?」

「一応 暇なんで大丈夫ですけど……」

「おーそうかそうか。なら、8時にログインしてくれんかの?」

「分かりました!」


 こうして、地獄の幕は閉じたのだった。ログアウトしたら寝よう……。


最後まで読んでいただきありがとうございます!

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