~第8章‐第2節 煩い~夏緒里side
「で、夏緒里・・・どうしたの?その目・・・」
昨夜は、結局泣きながらそのまま寝てしまった私。今朝目が覚めると、瞼が恐ろしく腫れていた。そして、昼休み。
「秋紀・・・私、ふられたみたい・・・」
私は、重い瞼のせいで完全に開かない目で秋紀を見つめた。
「・・・ふられたって・・・夏緒里・・・昨日のこと説明してくれる?」
秋紀は、心配そうな顔で私を見つめ返した。
「昨夜は彼、なんだか様子がおかしくて・・・で、急にうちに来たいって言うから、うちでご飯食べたんだよね」
「えっ・・・!?なにそれすごい急展開じゃない!!それで!?」
私の話に、秋紀は少し興奮気味に続きを急かす。
「で、感想聞いたら、美味しいしあたたかいって。そしたらいきなり私の後ろからネックレスかけてきて、で・・・抱きしめ・・・られた・・・」
「え?で・・・なんて?」
今思い返すと、この先なんだかすごいことされたのに気づいた私は、語尾で声が小さくなった。
「で、抱きしめ・・・られた・・・」
ようやく聞こえる声で秋紀に伝えた私は、顔から火が出そうなくらい熱くなった。
「だき、だ、抱きしめられたぁ!!??」
そう叫ぶと、秋紀は勢いよく立ち上がった。
「あ、秋紀!!声大きいよ!!」
私は、必死になだめる。
「あ、ごめん。つい、興奮して・・・ていうか、それのどこが、ふられたになるわけ?」
秋紀は、慌てて椅子に腰掛けると、呆れた顔でそう言った。
「違うの。ここからが本題」
私は、そう言って続きを説明する。
「で、その後・・・僕がいなくても悲しまないでって。僕はあなたのこといつも思ってるからって。で、そのまま帰っていったの」
「で、それで悲しくて泣いた結果がその瞼ね。納得。しかし、僕がいなくてもって、どこいくんだろうね・・・」
秋紀は、私と同じ疑問をもつ。
「でも、いつも思ってるってわけだし、そのネックレスくれたわけだし、ふられたとは思えないけど」
そう言って、ふっと笑う秋紀。
「そうかなぁ・・・でもすごく悲しそうな顔してたんだよ・・・」
思い出した私は、泣きそうになる。
「そんな大丈夫だよ夏緒里!!きっとそれ、クリスマスプレゼントでしょ!クリスマスは、なんか用事あって会えないだけじゃない?22歳っていったら、もう卒業だとおもうし。何か試験やら論文やら色々やらなきゃいけないことがあるだけだよ」
秋紀は、そう言って私の背中を優しくさすってくれた。
「そっか・・・卒業かぁ。考えもしなかった・・・」
「でしょ?卒業祝いのことでも考えて、前向きにいこうよ!」
秋紀は、本当によく頭がまわる。落ち込んだら落ち込みっぱなしの私とは全然違う。もしかしたら、こんな自分のことしか考えてない私が嫌で、さよならされたのかも・・・。
私は、再び昨夜の彼の悲しそうな顔を思い出し、胸が詰まった。




