表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私に普通の恋愛を  作者: 月並 一葉
82/94

~第80章 両思いになった夜~

改めて両思いであることがわかり、落ち着きを取り戻した私たち。今まで色々ありすぎて少し疲れたのか、私は急にベッドの柔らかさが恋しくなり、その上に腰を下ろした。すると、彼もまた私の隣に腰を下ろす。



「夏緒里さん、疲れたでしょう?少し横になりましょうか」



私の考えていることが伝わったのか、顔にまで疲れの色が出ているのか、彼は柔らかく微笑むと私をゆっくりとベッドへ寝かせた。彼は、私の隣に腰かけたまま優しく頭を撫でてくれる。その心地よさに、私の瞼は次第に重くなっていった。しかし、このまま眠ってしまったら、彼は帰ってしまうだろう。目覚めたら彼がいないかもしれない。そう思うと、私は突然言いようもない寂しさに駆られ、彼のシャツの裾をそっと掴んだ。



「夏緒里さん・・・?」



少し驚いた様子で、彼は私の名を呼ぶ。



「・・・桐谷くん・・・もう、帰らないと・・・ご両親が心配してるよ・・・」



もっとそばに居てほしい。

私は、言いたかった自分の気持ちとは全く反対のことを言葉にした。



「・・・夏緒里さん・・・あなたは本当に素直ですね」



「え・・・?」



「言葉と行動が伴っていませんよ、ふふ。そばに居てほしいから、シャツ、離してくれないんですよね?」



彼は優しく微笑むと、シャツを掴んでいる私の手に、ふわりと自身の手を重ねた。



「ごめんなさい・・・もう、お家に帰さないといけないのに・・・私・・・」



私の気持ちをわかってくれるその優しさに、私は胸が熱くなり、思わず泣きそうになる。


そんな私の額に、彼は軽くキスをすると、そっと私の頬に触れた。



「大丈夫。あなたが眠ってしまっても、僕はずっとあなたのそばに居ますよ」



「え?・・・」



「まあ・・・このまま泊めていただけるのなら、ですが」



そう言って彼は、少し緊張した面持ちを見せる。



「もちろん、私は嬉しい。でも、桐谷くんは、平気?ご両親に怒られたりしない?」



私は、彼をここに泊めたあの雨の夜、春樹くんと電話した時のことを思い出し、厳しい彼の家族は許してくれるのか心配になった。



「それなら、心配ありません」



「え?もしかして、また春樹くんに?」



「いえ。いつまでも春樹に頼ってばかりもいられませんので。今日は、自宅を出る前に、両親には伝えてきました」



「伝えた、って・・・な、なんて・・・?」



何の躊躇もなく、淡々と説明する彼。

一体、何と説明してきたのか、私はとても不安になる。



「今日は、夏緒里さんに大事な話があります。帰宅しなくても心配しないでください、と」



「・・・え!?そ、それ、反対されたんじゃ・・・」



大事な一人息子が、私なんかの所に泊まるかもしれない。

それを聞いた彼のご両親が、反対する姿が目に浮かんだ。


すると、彼は、これまたあっさりと私の質問に答える。



「いえ、特には。ただ・・・彼女が嫌がるようなことだけはするな、とは言われましたが」



そう言って、にっこりと微笑む彼。



「い、嫌がること・・・?」



その笑顔に、私は嫌な予感がしたが、嫌がることが何なのか、彼に恐る恐る問いかけた。



「夏緒里さん・・・本当にわかりませんか?」



「う、うん・・・」



私が頷くと、彼はあの小悪魔的な笑顔を浮かべ、寝ている私の体の上に覆い被さった。そして、真っ直ぐに私を見据えると、甘く色気のある声で、私にこう教える。



「あなたを抱く、ということですよ」



「・・・抱・・・く・・・」



何も包み隠さない彼のその言葉に、私は自分の鼓動の音が頭に鳴り響いた。


と、突然、彼は真剣な表情になり、私に深く口付ける。



「き、桐谷く・・・」



私は、その表情から、彼は本気なのだ、と意を決し目をつぶった。


と、次の瞬間、私の体の上からその重さが消える。


私は恐る恐る目を開けると、彼は私の横に寝そべり、こちらを見つめていた。



「・・・桐谷くん・・・?」



「夏緒里さん・・・」



彼は、寂しそうに私を見つめる。



「やっぱり、嫌、ですか?」



「え・・・?」



「ほら、こんなに震えてる・・・」



そう言うと、彼は私の肩を優しく抱き寄せた。



「すみません・・・あなたからのプロポーズが嬉しくて、我慢が利かなくなってしまいました・・・。まだ、気持ちの整理もつかないでしょうに・・・本当にすみません」



彼は、切なそうな声で謝る。



「桐谷くん・・・ごめんね。嫌、じゃないの。嬉しい。でも、今日は・・・なんだか疲れてしまって・・・」



私は、素直に気持ちを吐露した。

彼は、そっと私から離れると、壁の方を見る。



「・・・もう、日付、変わりそうですもんね。明日も早いでしょうし、もう寝ましょうか」



「うん・・・ごめんね」



私がもう一度謝ると、彼は、ふっ、と微笑み私の頭を撫でてくれる。



「もう何も考えなくていいですよ。おやすみ、夏緒里さん・・・」



そうして、私の頬に軽くキスをすると、柔らかく微笑んだ。


私は、その優しい笑顔と彼の温もりに包まれ、ひとりで眠る時には感じることができない安心感の中、眠りに入っていった。


外を走る車の音も次第にまばらになり、蒼白い月の光が静かに注ぐ夜だった。



「ごめんね・・・夏緒里さん・・・」



彼が、そう囁いた気がした。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ