表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私に普通の恋愛を  作者: 月並 一葉
53/94

~第51章 答えがわかっている質問~

屋上にひとり取り残された私は、しばらく彼の出ていった方を見つめたまま立ち尽くしていた。


部長のことで頭を埋め尽くされたまま、私はオフィスへ戻ったが、上司には彼がうまく話しておいてくれたらしく、誰からも咎められることはなかった。



部長に触れられたところが熱い。



彼が発する言葉も、あの笑顔も、思い出すだけで胸がドキドキと高鳴った。


この「好き」という気持ちは、きっと彼が桐谷くんに似ているからだ。私は彼に、大好きな桐谷くんを重ねているから、だから一之瀬部長のことを好きだと思うんだ。


そう自分に言い聞かせなければ、部長への気持ちに歯止めが利かなくなりそうで、どうしようもなかった。







週末、私は部長に言われたように、この件を桐谷くんへと尋ねようと思っているのだが、なかなか切り出せない。


聞いたところで、許しが出るわけがないことは、目に見えている。



「あの・・・夏緒里さん・・・」


「え!?あ!はい!」



桐谷くんと過ごす休日。

勉強で大変なはずなのに、私とこうしてまめに会ってくれる彼の為にも、今日は私の自宅で勉強しようということにした。


先程まで勉強していたはずの彼に、突然名前を呼ばれ、私は慌てて返事をした。



「夏緒里さん、何か僕に隠していることがあったりしますか?」



彼の鋭い質問に、私はさらに焦って、こう言った。


「いや、あの・・・最近、春樹くんの話出ないから、どうしたのかなぁと思って・・・」


って、これ絶対嘘だってバレるでしょ!

いや、でも意外とこのまま何事もなく話が終わったりして。


そんなことを考えながら、彼の反応を伺っていると、彼はやはり意外な反応を示した。



「春樹なら、学校で会いますし、特に変わりはないですが。夏緒里さんはなぜ、そんなに彼のことが気になるんですか?」


そう言い終わったかと思いきや、彼はふいに、その右手で私の顎を捉え、至近距離でこう囁いた。


「まさか、春樹のこと・・・好き、だなんて言いませんよね?」


その殺気だった空気に、私は、もちろんそんなんじゃない、と答えた。


すると、彼は私から離れ、にっこりと微笑んだ。


「ですよね。すみません、変なこと聞いて」



笑顔、満面の笑顔がこんなにも恐ろしい人は、きっと世界中探しても桐谷くんだけではないか。そう思ってしまうほどの殺気に満ちた笑顔だった。


この嫉妬深さなんだし、部長のことなんて言ったら確実に私に明日はないわ。部長はなぜ、あんなに自信をもって桐谷くんに聞けなんて言ったんだろう。確か仲良くなかったはずなのに。



「ところで、一之瀬さんは、その後あなたに何か言ってきませんでしたか?」


「っっっえっっっ!!??」



彼の口から一之瀬部長の話題が出たことに、私は思い切り動揺し、すっとんきょうな声を出す。



「あ、えっと・・・会議に来て、それで、あの、そう、コピーをね頼まれたかな」


私の説明に、相変わらずの綺麗な顔で、じっと見つめてくる彼。


「そうですか」


話が終わったと思い、ほっとした私に、彼はこう問いかけた。


「それで?」



「それでって、あの、それだけだけど・・・」



真っ直ぐに見つめる姿勢を崩さない彼に、私は全て悟られていると感じ、答えがわかっている質問について話すことにしたのであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ