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私に普通の恋愛を  作者: 月並 一葉
29/94

~第28章 ホワイトデー前編~

私の自宅から電車で10分。


学園都市駅と自宅のある駅との間にあるこの駅は、高級ブランドショップや、一流ホテルなどが並ぶセレブリティな所。


そう、一般庶民の私なんかは全く用がない駅である。


しかし、今日3月14日、なんと私はその場所で待ち合わせをしていた。


この場所を何の躊躇もなく指定した相手。それは勿論、桐谷家のご子息、桐谷冬真である。



うぅ・・・桐谷くんはよくここに来るんだろうか・・・私こんな格好で大丈夫かな・・・。


私が、そんなことばかり考えながら改札を出ると、やはり彼は今日も先に到着していた。


と、いうかそれよりも驚く事があり、私は少しドキドキしながら彼に挨拶をする。



「桐谷くん、遅れてごめんね・・・というか・・・その服装・・・」



「こんばんわ、夏緒里さん。この服・・・どこか変ですか?」



彼は、いつものように、にっこりと微笑みながらそう問いかけた。



「いや・・・違うの・・・。桐谷くん・・・かっこよすぎて・・・」



普段から、私なんかには勿体無い程美しい彼だが、今日はホテルディナーということで、シャツにネクタイ、そして仕立ての良さそうなスーツに身を包んでいる。


それ故に、美しさに加え、格好良さまで際立っているのだ。


そして案の定、周りの視線はみな桐谷くんに釘付けだ。相変わらず、彼はそのことに全く気づいていないが。



「・・・良かった。僕、嬉しいです。夏緒里さんに格好いいって言ってもらえたの、初めてだから・・・」


そう言って、少し照れくさそうに微笑む彼に、私はまた初っぱなからドキドキが止まらない。



「かっこよすぎて、本当に王子様みたいだよ。ドキドキするし・・・私なんか隣に並べないよ」



私は、素直にそう伝えた。



すると彼は、軽くお辞儀をし、すっと私に手を差し出すと、こう言った。


「私には勿体無きお言葉。さあ、美しき姫君、まいりましょうか」



「・・・はい」



私は、ただ一言そう答え、彼の掌に右手を重ねた。


彼は、私の手をとるとそのまま歩き出す。



「桐谷くん・・・」



「はい」



「ドキドキと恥ずかしさで死んじゃいそう・・・」



「えっ!大変だ。少し休みますか?」



「いい。今立ち止まったらそれこそ注目の的だもん」



そんな会話をしながら、私たちはディナーへと向かうのであった。


でも桐谷くん・・・やっぱりお医者さんにむいてる気がする。








「わぁ・・・綺麗・・・」


着いた先は、世界的にも有名な、かの一流ホテル。


その38階のレストランに私は居た。


壁一面を覆うピカピカに磨かれた大きな窓からは、街の灯りが一望できる。



「桐谷くん、こんな素敵な所に連れてきてくれてありがとう」



私は、あまりの感動に早速お礼を言う。



「良かった。気に入っていただけて。ケーキが食べたい、とおっしゃっていたので、このホテルにしたんです」



彼は、そう言ってにっこりと微笑んだ。



「え?それだけでこんなすごいホテルに?」


私は、彼の言葉に驚きを隠せない。



「ええ。こちらのケーキは本当に美味しいんですよ」


彼は、私の驚きとは裏腹に、幸せそうにニコニコと笑う。



「そうなんだね。楽しみ」


彼の考えにはいつも驚かされるが、幸せそうな彼を見ていると、なんだか私も幸せな気分になった。






食前酒に始まった夢のような豪華な食事が終わると、彼は近くに立っていたウェイターに声をかけ、こう言った。



「デザートをお願いします」



「はい。かしこまりました」



そうして出てきたのは、美しい装飾が施されたピンク色の箱。


その箱の蓋を、運んできてくれた店員さんはゆっくりと開けた。



「わぁ・・・」



その光景に思わず見とれる私。


その箱の中には、色とりどりの小さなケーキが、まるで宝石箱の中の宝石のように美しく散りばめられていた。



「気に入って、いただけましたか?」



彼の少し不安そうな声に、私は我に返った。



「うん!こんな綺麗なケーキみたことがないよ」


私が半ば興奮気味にそう答えると、彼は安堵したようにこう言った。



「実はこれ・・・僕の案なんです。あなたを喜ばせたくて、パティシエの方にお願いして作っていただきました。テーマは宝石箱。箱は苺のチョコレートでできているので全て食べられるんですよ」



「・・・え・・・?これ桐谷くんが考えたの!?ますますすごいよ!ケーキやさんになれちゃうかも!」


彼の話を聞いた私は、さらに興奮しながらそう言った。



「ふふ、喜んでもらえて良かった。でも、残念ながら僕は考えただけで、作ることはできません」


「じゃあ、桐谷くんが考えて私が作ろうかな」



私は、無謀にもそんな想像を話した。



「ふふ、そんな未来もいいですね。でも、僕の提案は無茶なことばかりですよ。覚悟してくださいね」



そう言ってにっこりと微笑む彼。


そんな彼の言葉に、私たちはなんだか可笑しくなって一緒に笑った。


素敵な彼とふたりで美味しいケーキを食べて、一緒に笑える。そんな私は、本当に幸せ者だと心からそう思うのであった。









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