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私に普通の恋愛を  作者: 月並 一葉
12/94

~第11章 交錯2~

「なぁ、桐谷。ここってどう思う?」



・・・・・・・・・・。


「桐谷?お~い?」



・・・・・・・・・・。



「・・・え?何?春樹。何か言った?」



「何か言った?じゃなくて・・・お前やっぱ、あれからちょっと元気ないんじゃない?さっきの実技も珍しくミスってただろ?まさか桐谷が、って教授も驚いてたぜ」



「へぇ・・・そうだっけ?」



年明け、学校が始まり、僕たちは放課後の研究室で明日の予習をしている。だが、一向に身が入らない。


夏緒里さんとは、もう会わない方が彼女の為だと、今まで連絡すら取っていない。



自分で選んだ道。



でも、どうしても、彼女のことが忘れられなかった。


「ねぇ、春樹」



「ん?何?大丈夫か?」




「僕って、ほんと・・・何のために生きてるんだろ・・・」










「秋紀、今日って予定ある?」



「え?ないけど、どうした?」



「うん、秋紀と一緒にぱぁっと美味しいものが食べたくなって」



「いいねぇ!何食べよっか?」



「秋紀、私ね。あのイタリアンに行きたいな」



「え?・・・」




年明けのある日のお昼休み。私は、秋紀にそんな提案をした。


私にとって、彼と過ごした時間は、短くてもとても良い思い出であり、悲しむことなんてもう、何もなかった。



「あのイタリアンて・・・学園都市の・・・だよね?」


秋紀は、少し心配そうな面持ちで問いかける。



「そう。あそこ美味しいし、おしゃれだし、秋紀と行って楽しかったから」


私は、ニコニコしながら答える。



「あ、そうだね・・・美味しいもんね」



「うん、それに・・・あそこ、桐谷くんとの良い思い出しかないから」



私は、再び笑ってそう、話す。


「夏緒里、完全に吹っ切れたのね。わかった、行こう!その代わりぃ・・・途中で泣かないでよぉ?」


秋紀は、そう言っておどけてみせる。



「泣かないよぉ!もう思う存分泣きましたから」


私は、そんな秋紀におどけて返した。




ほんと、沢山泣いた。


彼が、元気でやってるかも気にはなる。





ただ、今の私は、秋紀との夕食を楽しみたい。ただそれだけだった。




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