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92話:この程度で、わたくしを倒せると思わない事ですわっ!

 紫紺のアーデンと重装機イェラ、二つのマキナが暗黒の宇宙で激突する。

 突撃するアーデンに対し、イェラはその巨大な重装甲からは想像もつかない凄まじい加速を見せ、真正面から迎え撃った。


 接敵する刹那。アーデンは一閃、フォトンセイバーをイェラ目掛けて突き出した。しかし、イェラは微動だにせず、その刺突を左肩のショルダーアーマーで受ける。強力な対フォトンコーティングが施されたイェラの装甲は、光刃に焼かれ、激しい火花を散らしながらも、辛うじてその切っ先を外側へと逸らすことに成功した。


 そして、その一瞬の隙を逃さず、イェラはもう片腕のフォトンセイバーを起動、死角からアーデンへと振るう。


「そんな攻撃、あたりませんわっ!」


 その予備動作を完全に完全に見切っていたレタリアは、強引な機動でその一閃を完璧に回避。一度距離を取ろうとバックブーストを吹かそうとするが――


「っまた! しつこいですわね!」


 レタリアの魔力が、回避した先に迫る脅威を察知した。その位置を狙い澄ましたかのように、鈍い銀光が飛来する。ツーインが放ったブーメランだ。彼は戦闘開始時からもう一つのブーメランを、このタイミングまでデブリの影に伏せていたのだ。


 レタリアは機体を無理やりひねり、文字通りすんでのところで回避する。イェラのフォトンセイバー、そして伏兵のブーメラン。二重の死地を無傷で切り抜けたのだ。


『……これで尚被弾しないとは……。恐るべき戦闘勘だ』


 通信回線から聞こえるツーインの声には、明確な驚嘆の色が見えた。


「この程度で、わたくしを倒せると思わない事ですわっ!」


 レタリアは叫びながら、再度アーデンを狙って戻ってきたブーメランをフォトンセイバーで完璧に迎撃し、両断・爆散させた。


 そのままアーデンのメインスラスターを最大出力まで上げ、イェラの強固な正面装甲を避けて後方へと回り込むように、紫紺の軌跡を描く。


 イェラもそれに追従するように機首を回すが、イェラの速度はその重装甲からは見合わない高い機動性を誇っていたとはいえ、特機計画によって生まれ変わった新生アーデンの圧倒的な瞬発力の前には、それでも尚、遥かに劣るものだった。


「これで……決めますわ!」


 イェラの懐へと完全にもぐりこんだアーデンが、勝利を確信してフォトンセイバーを袈裟斬りに振るおうとする。光刃がイェラの無防備な腹部を切り裂く、そう思われた瞬間。


『……見事だ、レタリア殿。これほどの実力とは』


 ツーインの声が、不気味なほど静かに響いた。

 直後、イェラのフォトンセイバーの光が、ふっと納まる。


「これは……ッ!」


 次の瞬間、レタリアの魔力が、彼女の全神経に凄まじい警鐘を鳴らした。

 予知されたのは、回避不可能な、死の間合い。


 レタリアの魔力予知が捉えた刹那、イェラの全身から、数え切れないほどの無誘導弾丸が一斉に掃射された。

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