↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
122/160

121話:あの方、どこかで……

「――ようやくブラング達の引き渡しが決まった」


 シンセ・フィブラ社内、いつものミレアのラボ。

 集まったミレアとレタリアに対し、グレインがそう切り出し、事のあらましを説明し始めた。


「本当ならもっと早く引き渡して連れて行ってもらう予定だったんだがな。本国側の調整に時間がかかって、少し遅れてしまったようだ」


「あ……そう言えば、捕らえておりましたわね……」


 レタリアはすっかり存在を頭から失念していたようで、ポンと手を叩いた。


「ようやくね……これでひとつ心配事が減るわ。いくら頑丈な施設に投獄中とはいえ、何が起きるか分からないものね」


 ミレアはホッとしたように小さく息を吐いた。


「ああ。それでな……その引き渡しにあたって、ウィステルム本国から護送を担当する一団がこちらへ訪れるんだが――なんと、到着するのは『明日』だ」


「えっ……!? 早すぎない!?」


 あまりに急なスケジュールに、ミレアが素で驚きの声を上げた。


「一応、重罪犯の護送だからな。道中の襲撃や内部通報を警戒して、こちらへの正式な連絡も意図的に直前まで遅らせたらしい。……まあ、形式上は本国からの『来賓』とも言える重要人物たちだ。場合によっては君たち二人にも立ち会ってもらうことになるかもしれん。準備だけはしておいてくれ」


 グレインの言葉に、面倒事に巻き込まれそうな予感のしたミレアは渋々といった様子で眉をひそめたが、レタリアは意気揚々と胸を張った。


「分かりましたわ! このわたくしに、どうぞお任せなさい!」



 ◆◆◆


 翌日


 セルディア管理局の専用ドックに、重厚な重装甲輸送船が一隻、そして護衛として随行してきた数機のマキナが静かに着陸の衝撃を吸収しながら降ろされた。


 エアロックが開き、輸送船のタラップから複数の軍関係者たちが降り立ってくる。同時に、着陸したマキナのコックピットハッチが解放され、パイロットたちが身軽に地面へと降り立った。


 その中から、輸送船から降りてきた男と、マキナから降りてきた女の二人が一歩前へと出る。


「お出迎え、ありがとうございます」


 二人が恭しく頭を下げた先には、彼らを迎えるセルディア管理局の幹部陣が居並んでいた。


「お待ちしておりました。はるばる本国からの長旅、誠にお疲れ様です」


 まずは出迎えた壮年の男性が、柔らかながらも威厳のある声で訪れた面々へ自己紹介を始める。


「私が当自治区の責任者を務めております、ルエリオ・コーダです」


「そして、私はセルディア自警団で団長を務めております、グレイン・フォートです」


 グレインも一歩前へ出て、深々と頭を下げて挨拶を交わした。


 それに対し、輸送船から降りてきた男がビシッと一礼を返す。


「私はウィステルム連合国家、ウィステルム連合国軍大尉、ヘイラス・ルグドと申します」


 年齢は40歳ほどだろうか。仕立ての良いウィステルム軍の軍服の上からでも分かるほどガタイが良く、鍛え上げられた体躯を持つ黒髪の男性だ。その眼光は鋭く、叩き上げの軍人らしい隙のなさを漂わせている。


 そしてもう一人、マキナから降りてきたパイロットスーツ姿の女性が、ヘルメットを小脇に抱えて一歩踏み出し名乗った。


「私はウィステルム連合国軍中尉、プリシラ・ハレヴィと申します。ルエリオさん、グレインさん、本日はどうぞ宜しくお願い致します」


 エメラルドグリーンの美しいセミロングストレートヘアーをなびかせ、彼女は穏やかで知性あふれる瞳で、二人に向かって丁寧にお辞儀をするのだった。



「では皆さん、まずは管理局をご案内いたします。移動ののち、別室にて引き渡しの正式な手続きを進めましょう」


 ルエリオの落ち着いた提案に、ヘイラス大尉とプリシラ中尉は静かに頷いた。


「助かります。本国の法廷へ連送する手はずも整えておりますので」


 軍人らしい重厚な声でヘイラスが応じ、一行はルエリオとグレインの誘導に従ってドックの連絡通路へと歩みを進めていく。


 ――その光景を、ドックの上層に位置する見学用キャットウォークから静かに見下ろす二つの影があった。

 レタリアとミレアである。


「……かなり厳重な護送態勢ね。大尉クラスが自ら乗り込んでくるなんて、本国もブラング達の件を相当重く見ているみたいだわ」


 腕を組み、冷ややかに一行を観察していたミレアが呟く。

 しかし、隣に立つレタリアからの返答はない。


「レタリア?」


 不審に思ったミレアが横顔を覗き込むと、レタリアは手すりに身を乗り出すようにして、一点を凝視していた。

 その視線が注がれていたのは、護衛の一団の先頭を歩く、エメラルドグリーンの髪をした女性パイロット――プリシラ・ハレヴィ中尉だった。


「どうしたの? そんなに凝視して」


「……あの方、どこかで……」


 レタリアは思案する様に呟いた。


「どこかで、お会いしたことがあったかしら……?」


「え? 彼女はウィステルム本国軍の中尉よ? セルディアに来るのも初めての筈……」


 首をかしげるミレアの言葉に、レタリアの脳裏で一瞬にして記憶のピースが組み合わさった。


「――あ! そうですわ! クラネアで出会ったあのお方ですわ……!」


 以前、レタリアが初めてセルディアを離れ、ステーション・クラネアへ視察(という名目の社会見学)へ向かった際、街で絡まれた時に助けてくれた親切な女性その人だったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。