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第29話 バスティオン

煉獄牢・第二層。

 そこは通路というより、炉の内部だった。


 床下を流れる溶融管が赤く脈動し、蒸気が定期的に噴き上がる。

 壁には火符が刻まれ、侵入者の体温と心拍を感知する仕組みになっている。


「ここは足を止めるな」

 焔環の斥候が低く告げた。

「一度捕捉されれば、上層から機構兵が雪崩れ込む」


 その言葉が終わるより早く――

 重い衝撃音が通路を揺らした。


 ズン、と。


 前方の扉が歪み、内側から押し開かれる。

 現れたのは、第一層の守備兵とは比べものにならない重装型。


 炎衛機構兵バスティオン

 四肢は分厚い耐熱装甲、背部に二基の炉心。

 動くたびに床が焼け、蒸気が悲鳴を上げる。


「来るぞ!」


 レンが前に出る。

 剣を低く構え、熱流を読む。


 バスティオンの右腕が展開され、炎圧刃が放たれた。


 ――真正面から受ければ、骨まで焼ける。


 だが、刃が振り下ろされる瞬間、

 イオの風が“斜め”に入り込んだ。


「流れ、ずらす!」


 炎圧が逸れ、床を抉る。

 その一瞬の隙。


 レンが踏み込んだ。


「はああッ!」


 剣が炉心の継ぎ目を打つ。

 火花が散るが、装甲は耐えた。


「硬っ……!」


「想定内だ」

 焔環の戦闘員が叫ぶ。


 左右から二人が滑り込み、

 火符を打ち込む――逆熱符。


 炉心の熱が一瞬、内側に籠もった。


「今!」


 イオが両手を広げる。

 狭い通路に、渦を巻く上昇風が発生した。


 炎は上へ引き剥がされ、炉心が露出する。


 レンは迷わない。


 剣を逆手に持ち替え、突き立てた。


 ――ズン。


 炉心が砕け、バスティオンは膝をついた。


 だが、倒れない。


 代わりに、背部炉心が暴走を始める。


「退け!!」

 誰かが叫んだ。


 イオがレンの襟を掴み、横へ跳ぶ。


 次の瞬間、

 爆炎が通路を飲み込んだ。


 熱風が背中を焼き、視界が白く飛ぶ。


 ……それでも。


 煙が引いたとき、

 彼らはまだ立っていた。


「全員、生存確認!」

「損耗軽微!」


 焔環の声に、安堵が走る。


 だが――


 イオが、ゆっくり顔を上げた。


「……おかしい」


「何がだ?」


「この配置。反応速度。

 誰かが、内部から誘導してる」


 レンも感じていた。

 敵の動きが、あまりに“的確”すぎる。


 そのとき。


 通路の奥、監視用の火鏡が一瞬だけ明滅した。


 映ったのは――

 炎に縁取られた、人影。


 その視線が、確かにこちらを見た。


「……エンス」

 イオが、名を漏らす。


 次の瞬間、警報が一段階上がった。


「第三層、封鎖開始」

「対象、最深部へ誘導」


 焔環の指揮役が歯噛みする。

「……罠だ。だが、引き返せない」


 レンは剣を握り直した。


「行こう。

 その先に、ヴァルドがいるなら」


 熱と蒸気の中、

 一行はさらに深く、煉獄牢へと踏み込んでいった。


 ――炎の王国の核心へ。

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