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第19話 氷は水より出でて水より寒し

氷影はゆっくりと歩みを進めた。

剣先から滴る水は地面に触れるたび凍りつき、冷気を帯びた霧が辺りを覆う。


「水を操る力……レン。貴様が“水環”を背負う者か、伝承は本当だったらしいな」

低く響く声に、レンは思わず息を呑む。


イオが前に出た。

「時間がない、レン。ここは私が足止めする」


氷影の剣が振るわれると同時に、無数の氷の刃が飛来する。

イオは両腕を広げ、暴風を叩きつけた。

風と氷がぶつかり合い、屋根瓦が吹き飛び、激しい衝撃音が夜空に響く。

「風からの潜入スパイと、天に選ばれし水環……思っていた以上だ」


剣が振るわれるたびに周囲の逃げ場がどんどんなくなっていくのを実感する


「走れ! 機関車は今しかない!」

イオの叫びに、レンは決意を固める。


だが氷影の冷気は容赦なく、屋根全体を凍らせていく。

レンの足元も瞬く間に氷に囚われた。


「逃がすものか」

氷影が一歩踏み込む。


その瞬間、イオが風を纏い、氷を砕いた。

「行け! 私を信じろ!」


レンは頷き、凍りついた屋根を蹴り破りながら走る。

氷影の追撃は迫るが、イオが風壁を生み出し、剣撃を弾き返した。


——轟音。

駅に停まる蒸気機関車が動き出そうとしていた。

蒸気が噴き上がり、巨大な鉄の車体が重々しく揺れる。


レンは最後の力で水を操り、氷影の視界に水霧を広げる。

「今だ……!」


イオも思いっきり地面を蹴って飛び出した

二人は列車の屋根に飛びつき、何とか持ちこたえた


機関車が轟きながら走り出す。

聖水院の追手が遠ざかり、氷影の冷たい眼光だけが闇の中に残る。


「必ず追うぞ……水環の子よ」

彼の声が、列車の汽笛にかき消されるように響いた。


レンとイオは互いに肩で息をしながら、動き出した車両の影に身を潜めた。

目指すは、炎の帝国アグニ——。

そこに、次なる「火の力」が待ち受けている。



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