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第12話 第二層の暮らし

体力回復をするため3人はリリィが風の都からの使者として来た時の宿に泊まることにした。

ルキナ・テラスの朝は、音が少ない。


水が奏でる音はある。

噴水の水柱がリズムを刻み、空中水路から流れ落ちる水が、石畳を柔らかく叩いていた。

しかし人々の足音も、会話も、笑い声さえも、不自然なほど静かに抑えられていた。


それは美徳とされていたからだ。

「静穏は知性の証」と、この層の住人は信じていた。


イオは机に広げた古地図を指でなぞりながら、低い声で口を開いた。

「レン、リリィ。あんたたちに話しておくべきことがある」


彼女の指が円を描き、やがて四つの点を打った。

「この世界には四つの大国がある。

空の王国アーカシャ

風のヴァーユ

火の帝国アグニ

大地の連邦プルッティヴィ

……でもその中心に立つのは、水の都アクアゼニス。唯一“清水”を生み出せる都市よ」


レンが目を見開き、声を潜める。

「今までほかの国があるだなんてこと一回も考えたことなかったぜ。リリィはあんま驚いてないな」


リリィ「うん、私の力でいろいろ盗み聞きとかしてたから……イオさん、続きは?」


イオは小さく頷く。

「ええ。だからこそ、水の都は清水を輸出して利益を独占してる。各国は逆らえない。清水なしじゃ生きられないから。

表向きは交易、実際は隷属よ。どの国もアクアゼニスに膝を折ってる」


レンは黙って拳を握りしめる。


そのとき、イオは少し苦い笑みを浮かべて言った。

「実を言うと、私はただの旅人じゃない。私はヴァーユ――風の国から派遣された潜入調査官。

水の都がどうやって清水を独占してるのかを探る任務を負ってここに来た」


レンが驚きに声を上げる。

「じゃあ、最初から俺たちを利用するつもりだったのか?」


イオは即座に首を振る。

「違う! あんたたちに出会って、考えが変わった。

水の心臓を復活させれば、誰もが清水を手に入れられる……それはヴァーユにとっても、この世界にとっても希望よ」


リリィはレンの方を振り向いた。

「……それなら、きっと。やるべきことは一つだよね」


レンは深く息を吐き、頷いた。

「水の心臓を……必ず取り戻す」


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